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秘密保持契約書の概要とつくり方

今回は秘密保持契約書の概要とつくり方について説明していきます。

 

この文章を読むことで、「秘密保持契約書とは」「秘密保持契約書の作成方法」について学ぶことができます。

 

秘密保持契約書とは

 

秘密保持契約書とは、契約を結ぶ会社間で知りえた秘密を外部に漏らさないために締結する契約書です。

 

一般的な契約書でも、それが長期間に渡る、あるいは様々な情報交換が必要になる場合は、「相手方から開示された情報を第三者に開示してはならない」という内容の守秘義務条項を設ける場合があります。

 

そして、そのような守秘義務条項だけでも秘密保持を約束することはできます。

 

しかし、契約の範囲が非常に広い、あるいは会社間で交換される情報の内容がより重要なものになる場合は、改めて秘密保持契約を結ぶほうが安全であると考えられるケースが多くなります。

 

情報の内容が重要なものになればなるほど、双方がその秘密保持についてしっかりと認識し、両社の知りえる情報が高度なものであることをより理解する必要があるためです。

 

また、一般的に秘密保持契約は両社の別の何らかの契約に対して、その秘密を保持するという内容となることが多くなっています。

 

既に交わしている、もしくはこれから交わす、一つあるいは複数の契約について、その契約に基づいて授受される秘密情報の秘密保持契約を結ぶというものです。

 

秘密保持契約書のつくり方

 

秘密保持契約書のフォーマット

 

【解説】
※第5条については、業務委託契約書の解説を参照してください。

 

※第9条については、継続的売買取引基本契約書の解説を参照してください。

 

※第11〜12条については、動産売買契約書の解説を参照してください。

 

タイトル

 

タイトルについては他の契約書同様、特にルールがあるわけではありません。

 

よって、ただ「契約書」などとしても問題はありません。

 

しかし、「契約書」の場合は何を契約しているのかの判断がつかず、後日混乱を招く恐れもあります。

 

今回は契約内容が秘密保持という比較的わかりやすい内容ですので、そのまま「秘密保持契約書」、あるいは「機密保持契約書」などが妥当でしょう。

 

なお、「秘密」と「機密」は基本的には同じ内容を意味していますが、「機密」は政治上の国家機密などのように使用することが多くなっていますので、会社間の場合は「秘密」とするのが普通です。

 

前文

 

前文では「誰と誰が契約するのか」を明確にします。

 

今回は「株式会社〇〇(以下「甲」)」と、「株式会社〇〇(以下「乙」)」としています。

 

そして、この秘密保持契約が「〇〇に関する業務」についてのものということを明確にしています。

 

しかしながら、契約が多数ある場合や資本関係にある会社などの場合は、全業務についての秘密保持契約になるということも考えられます。

 

よって、そのような場合は業務に限定することは避けましょう。

 

また、秘密保持契約という言葉はその後も複数回にわたって表記されると考えられるので、「本契約」とし、この後は「本契約」という呼び方で統一しています。

 

契約内容

 

第1条

 

第1条では、秘密の内容を定義しています。

 

秘密情報にはどのような情報が当たるかということです。

 

基本的に秘密情報とは、相手方の以下のような情報になります。

 

・営業情報

 

・技術情報

 

・財産情報

 

・その他有益な情報

 

・第三者に知られたくない秘密とされるべき情報

 

・個人情報

 

要するに、「会社内部では問題はないがコンプライアンス上あるいは競争上などの理由で他社に知られるとまずい情報」です。

 

相手方の「その他有益な情報」、「第三者に知られたくない秘密とされるべき情報」などは、何がそれに該当するのかを外部の人間が判断することは、難しいと言えます。

 

そこで、必要と思われる情報内容については、可能な限り列挙しておきましょう。

 

また、開示側と受領側の双方がそれぞれ秘密情報について、例えば以下のような認識を持つと、意識がより共有しやすくなります。

 

≪開示側≫

 

・秘密情報には必ず「社外秘」などと表示し、秘密情報であることが一目でわかるようにする。

 

・開示する時点で秘密情報であることを証拠の残る書面などで相手側に認識させる。

 

≪受領側≫

 

・相手方の情報で秘密情報かどうかの判断がつかない場合は、すべて秘密情報であるという認識を持つ。

 

・受領時点で情報が秘密情報に当たるかどうかの確認を行う。

 

また、ここでは個人情報の定義も明確にしています。

 

個人情報とは、「氏名、生年月日、その他の記述等によってその個人を識別することができるもの」のことを言います。

 

氏名や生年月日、住所や年齢などがすべて含まれた情報は明らかにその個人を特定できることとなるので、それは個人情報となります。

 

逆に言えば、氏名をA、年齢を20代、住所を東京都港区、などとすれば、その情報はある個人を特定することができないため、個人情報にはなりません。

 

データでの情報保存が当たり前となっている現在は、個人情報の漏洩問題は尽きることがありません。

 

万が一のために個人情報の定義を理解するとともに、個人情報も秘密情報として規定しておきましょう。

 

第2条

 

第2条では、適用除外を定義しています。

 

秘密情報の適用が除外される項目を挙げています。

 

すでに公知である事実などは秘密にする必要はありませんので、除外しておきましょう。

 

第3条

 

第3条では、秘密保持を定義しています。

 

内容は基本的なことですが、秘密保持契約の最も重要な部分です。

 

秘密情報の内容や存在を開示することだけではなく、秘密情報の不正利用も禁止しておきましょう。

 

第4条

 

第4条では、秘密情報の保管を定義しています。

 

ここでは相手方の秘密情報について記載しています。

 

一般的には不必要な複製や目的外の使用を禁止して、いつでも相手方に保管状況を報告できる状況にする、といった条文になります。

 

管理が行き届いていない場合は情報の漏洩はもちろん、情報がどこにあるかさえ分からなくなるというケースもあります。

 

お互いに無用なトラブルを防ぐため、保管に関する条項はしっかり入れておきましょう。

 

第6条

 

第6条では、秘密情報等の返還を定義しています。

 

契約の履行が完了した場合や契約が解除された場合などに秘密情報をどうするかについては、返還以外にも両社が廃棄するなどの方法があります。

 

ここでは相手方に情報が残る可能性を少しでも減らすために変換することとしていますが、廃棄として廃棄したことを証明する書面を相手方に提示するなどの方法でも問題はありません。

 

そして返還、あるいは廃棄した後にそれらが復元されたりすると意味がありませんので、復元行為も禁止しておきましょう。

 

第7条

 

第7条では、事故時の責任を定義しています。

 

秘密情報については事故が起きないに越したことはありませんが、やはり事故が起きたときの対応を条項として入れておかなければなりません。

 

まず、万が一相手方の情報が漏洩するような事故が起きてしまった場合は、その責任は当然ながらその漏洩を発生させた情報の受領者にあります。

 

そして、漏洩が発覚した場合、一番最初に必要な対処は相手方への報告です。

 

漏洩についての調査や原因調査も必要です。

 

しかし、情報は相手方から預かっているものなので、まずは相手方に報告することが必要なのです。

 

相手方でも即座に状況に合わせた関係者への連絡や社内での対応などが必要となるためです。

 

しかし、事故が起きたときは往々にして自社での対応を最優先してしまい、結果的に事態がより大きくなるということが起こります。

 

例えば以下のようなケースです。

 

・事故発生が発覚する。
 ↓
・発覚段階では詳細が不明であり、会社全体がパニック状態に陥るために、「状況がある程度判明してから連絡しよう」「確実なことがわかるまでは自社のみで調査をしよう」などと考える。
 ↓
・被害状況や原因がある程度判明した時点で相手先に報告する。
 ↓
・相手先の初動対応も遅れ、適切な対処ができなくなる。
 ↓
・調査を進める過程でさらに新たな被害も発覚し、事故対応で急に忙しくなってしまっている相手先との連携もうまくいかなくなって、事態がさらに悪化する。
 ↓
・関係者に発表すべき情報のアップデートがうまくいかなくなり、「情報を小出しにしている」というイメージが生まれる。
 ↓
・相手先の社会的な信用力も低下する。
 ↓
・相手先との関係が悪化するだけではなく、自社の信用力も低下する。

 

個人情報を含む秘密情報の流出については、ニュースなどを見ていれば後手に回る対応がいかに会社に打撃を与えるかがわかると思います。

 

初期対応の遅れは、想定していなかった大きな問題につながる可能性があります。

 

自社の情報が相手方によって漏洩する可能性も考慮して、必ず相手方に連絡し、指示がある場合はその指示に従うことを義務付けておきましょう。

 

第8条

 

第8条では、損害賠償を定義しています。

 

相手方の情報が漏洩してしまった場合、情報の種類によっては多額の損害が発生する恐れがあります。

 

これは契約を結ぶ双方の会社に同時に言えることです。

 

よって、お互いがお互いを守るためにも、その損害に対しての賠償責任を明確にしておきましょう。

 

損害賠償責任を明確にすることは、双方が情報を預かることの重要性をより認識しやすくなるというメリットもあります。

 

相手の秘密を預かるということは、非常に責任の重いことなのだという意識を高めるためにも、ぜひ設定しましょう。

 

第10条

 

第10条では、有効期間を定義しています。

 

有効期間は原則として他の契約書と同じです。

 

異なるのは、秘密情報の事故が起きた時の対応や損害賠償については契約終了、あるいは解除後も条項を継続させる必要があるということです。

 

秘密保持契約の場合は、契約終了、あるいは解除されたからといって、その責任から解放されるわけではありません。

 

契約が切れたから管理しなくてよい、あるいは事故対応をしなくていいというわけではないのです。

 

契約終了、あるいは解除後にも秘密保持については継続する必要があるということをしっかりと明記しておきましょう。

 

後文

 

後文では、契約書の部数保管場所を明確にし、作成日を記入してそれぞれが記名捺印を行います。

 

これで契約書は有効となります。

 

必要で入っていない条文や不要な条文がないかを再度確認しましょう。

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