契約書に必ず盛り込むべきこと
契約書は個々の契約を文章にしたものです。
契約は履行しなければならない重要なものであるため、内容が自社にとって不利にならないようにしなければなりません。
そして、後々のことを考えると、誰が読んでも意味が一つであるようにしなければなりません。
解釈の違いによって複数の意味にとれるような契約書になってしまうと、何かあった場合に責任の所在があいまいになったりするためです。
契約書には必要なことが必要な場所に書かれていなければならないということです。
【例題】
スマートフォンのアプリ開発を基盤事業とするZ社で、新たに法務担当者となったS君とT君は、まずは契約書に関する知識を身に着けるため、現在Z社が結んでいる契約について契約書を確認する作業を行っています。
そして、契約書の書き方について見てみると、どの契約書もその書き方が統一されているようでした。
細かな部分の違いはありますが、形式はどの契約書も同じです。
しかし、どれを見ても古臭い法律を見ているようでしっくりときません。
二人はもう少しわかりやすい書き方があるように思いました。
すると、そんな話を聞いていたM社長が二人に言いました。
M社長:
「契約書というのはまさに法律の条文のようなものなんだ。表記方法は確かにわかりにくい部分は多々あって、理解に苦しむこともある。
でも、これはあくまでも会社と会社が結ぶ公式契約を文章で表現したものだ。会社としての信用ということを考えると安易に現代的にはできないよね。ビジネスにはこれまでの前例というものもあるし、歴史もある。そういった歴史には敬意を払う必要があるということだよ。
変えるべきところは変えるというのがわが社のスタンスだけど、契約はわが社だけの話ではないからね。」
二人は、契約書の書き方には一定の形式と最低限必ず盛り込むべきことがあることを学びました。
【解説】
契約書には最低限盛り込むべきことがあります。
詳細なルールについては後述しますので、まずは大まかな書き方について理解しましょう。
契約書の構成と必ず盛り込むべきこと
契約書の構成と必ず盛り込むべきことは、以下のようになっています。
タイトル
まずタイトルです。
タイトルは単に「契約書」などでも効力はありますが、後日の確認などを考えると、契約に関連したタイトルをつけるのが妥当です。
「ソフトウェア開発委託契約書」「秘密保持契約書」など、その契約に関するタイトルをつけます。
前文
前文では、まず「誰と誰が契約をするのか」を明確にします。
契約者以外の第三者が入り込まないようにするためです。
契約は当事者が行うことが大前提であるため、第三者が知らないうちに入っているという契約は当然ながら無効になります。
そしてその際は、一方を「甲」、一方を「乙」と表記するのが普通です。
契約内容
契約内容は、「条」、「項」、「号」で表記します。
「条」には()でその小タイトルをつけます。
「項」は条文が複数になる場合に使い、「号」は箇条書きを行う場合に使います。
「項」や「号」の表記方法は様々ですが、それとわかる表記にします。
例えば以下のようになります。
第1条(〇〇)
1 甲は、乙に対して、〜。
2 甲は、〜。
一 〇〇の事実
二 〇〇の事実
ここでは「項」を英数字で、「号」を漢数字で表記しています。
そして第1項については数字を省略する場合もあります。
省略した場合は以下のようになります。
第1条(〇〇) 甲は、乙に対して、〜。
2 甲は、〜。
一 〇〇の事実
二 〇〇の事実
後文
後文には、作成枚数や保管者を明記します。
何部作成され、どこに保管されているかがはっきりしなければ、後になって混乱を招く可能性があるためです。
通常は契約する当事者分の枚数の契約書が作成され、当事者それぞれが保管します。
作成日
作成日には、「契約書の作成日」を記入します。
作成日は、原則として「当事者が記名捺印した日 = 契約日」になります。
契約者名
最後に契約者名を記載します。
契約者名には、役職と名前を記入し、捺印します。
契約は会社として行うものなので、原則としては代表権のある取締役、あるいは支店であれば一切の権限を持った支店長の名前で行う必要があります。
まとめ
・契約書は、「必要なこと」が「必要な場所」に書かれていなければならない。
・契約書にはタイトル、前文、契約内容、後文、作成日、契約者名を必ず盛り込む。
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