契約書作成の基本
今回は契約書作成の基本について説明していきます。
この文章を読むことで、「一から契約書を作成する場合に留意すべき点」について学ぶことができます。
契約書の作成
契約書には自社が作成する場合と他社が作成する場合の2つのパターンがあります。
他社が作成した場合はそれを審査することが法務担当者の仕事です。
では、自社で一から契約書を作成する必要がある場合は、どのような点に留意すべきでしょうか。
【例題】
スマートフォンのアプリ開発を基盤事業とするZ社のM社長は、法務担当者であるA君、S君、T君を呼んでこう言いました。
M社長:
「わが社の法務の仕事の規模がかなり大きくなってきたのは君たちも周知のとおりだ。しかし、A君が社内規則をまとめてくれるようになり、S君とT君が契約書のチェックなどをやってくれるようになったことによって、だいぶ今後の展望が開けてきたように思う。ありがとう。
いろいろ考えたんだが、せっかくここまで順調に進んでいるので、今回はこれまでの契約書を一部刷新したいと思っている。最近受注が増えたことで、わが社から業務委託を依頼することが多くなっている。そこでA君を中心として3人で業務委託契約書を新しくしてもらいたい。」
M社長はこれまでZ社が使ってきた業務委託契約書の変更内容について、おおまかに3人に指示をしました。
M社長:
「原則として業務委託の場合は、わが社が契約書を作成してそれを相手先と結ぶことになる。よって、まずはひな形を作ってもらいたいんだ。その上で細部を詰めていこうと思う。」
S君とT君は初めて自分たちで業務契約書を作ることになり、少々緊張の面持ちでした。
A君は自分が中心となって、3人で協力して契約書を作っていこうと思いました。
【解説】
契約書を自社で一から作成する場合は、様々なことに留意する必要があります。
原則として契約書は契約のたびに一から作るというようなものではありません。
同じ種類の契約は、テンプレートとして同じ契約書を使い、その上で細かな点を修正していくのが普通です。
よって、新たに契約書を作るということは、今後様々な契約で自社が有利となり、かつ可能な限り修正が少なくてすむような契約書とする必要があります。
契約書作成の原則
新たに契約書を作成する場合、知っておくべき原則があります。
細かなルールについてはすでに学習していますので、大まかな原則について整理をしておきましょう。
原則1:合意可能及び法的に有効な契約書とする
まず、契約は合意が前提です。
契約書の1文にでも到底相手が合意できないというような内容が含まれていると、その契約書を使った契約は基本的に一切成立しません。
よって、あくまでも「合意可能な契約書」にする必要があります。
そして、法的に有効とは、その契約内容に合理性があるということです。
例えば損害賠償について、その賠償額を実際に生じた損害の100倍の金額とした場合、仮に両社で合意したとしても、賠償額が大きすぎるため法的に認められない可能性があります。
契約書は可能な限り合理的で現実的なものでなければなりません。
原則2:契約によって発生する権利の所在を明確化する
例えば業務委託であれば、委託した業務には著作権などの権利が発生します。
そのような権利がどちらのものとなるかについて、はっきりとさせておく必要があります。
原則3:秘密保持を厳格にする
近年特に話題となっている情報漏洩などで、情報が契約の相手先から漏えいしたということが多くなっています。
基本的には互いの業務を進める上で相手先が開示した情報を第三者に開示することは認めない、あるいは開示の際は必ず相手先に連絡し、別途協議するなどの内容にするのがよいでしょう。
上記の原則を踏まえたうえで、契約書を作成していきましょう。
まとめ
・自社で契約書を作成する際は、自社が有利となり、かつ可能な限り修正が少なくてすむような契約書にする必要がある。
・契約書は合意可能及び法的に有効となっており、契約によって発生する権利の所在が明確になっており、秘密保持が厳格になっている必要がある。
関連ページ
- 労働条件通知書のフォーマット
- 不動産賃貸借契約書の概要とつくり方
- ソフトウェア開発委託契約書のフォーマット
- 戦略法務とは
- 実用新案権の仕組みを理解する
- 弁護士を活用しよう
- 電子商取引と電子契約
- 契約書の重要条項とそのルール
- 債権管理と債権回収
- 代理店契約書の概要とつくり方
- 代理店契約書のフォーマット
- 暴力団対策法とは
- トラブル防止の心構え
- 倒産制度の仕組み(民事再生、破産、解散、清算)
- 契約書作成の基本
- ビジネス文章の書き方
- ビジネス法務(企業法務)とは
- ビジネス法務(企業法務)担当者の心構え
- 事業再編・M&Aの仕組み(合併、事業譲渡、会社分割)
- 民事訴訟というゲームのやり方
- 債権回収・訴訟・執行・保全をめぐる法務の全体像
- 継続的売買取引基本契約書の概要とつくり方
- 継続的売買取引基本契約書のフォーマット
- 契約書審査業務の手順
- 契約書でトラブルが起こりやすい箇所
- 企業不祥事と法令違反
- 不正への対処法
- 取締役の義務と責任
- 懲戒処分・解雇・退職勧告とそれらをめぐるトラブル
- 紛争処理法務とは
- 雇用契約書の概要とつくり方
- 雇用契約書のフォーマット
- 雇用関係をめぐる法務の全体像
- 株主代表訴訟と解任、違法行為差止め
- 契約書の重要条項とそのルール
- 株主総会の仕組みと運営(開催手続き、議決権、計算書類、事務処理)
- 契約書に必ず盛り込むべきこと
- 不正や事故をめぐる法務の全体像
- 知的財産権とは
- 消費者保護に関する法律
- 法定労働時間と変形労働時間
- 会社組織をめぐる法務の全体像
- 契約・商取引をめぐる法務の全体像
- 法務における交渉のやり方
- 法務部門の仕事内容と業務プロセス
- 職場のメンタルヘルス対策
- 合併契約書の概要とつくり方
- 合併契約書のフォーマット
- 金銭消費貸借契約書の概要とつくり方
- 金銭消費貸借契約書のフォーマット
- 秘密保持契約書の概要とつくり方
- 秘密保持契約書のフォーマット
- 公正証書の活用
- 業務委託契約書の概要とつくり方
- 業務委託契約書のフォーマット
- 業務委託契約書の概要とつくり方
- 残業をめぐるトラブル
- 特許権の仕組みを理解する
- 人事異動(配置転換・転勤・出向・転籍)
- 割増賃金とは
- 予防法務とは
- 個人情報保護とデータ流出
- 製造物責任法(PL法)とリコール
- 不動産賃貸借契約書のフォーマット
- 登記の仕組みと手続き
- 品質クレーム紛争の解決
- 労働組合への対応
- 契約書の役割と重要性
- 安全衛生管理とは
- 動産売買契約書の概要とつくり方
- 動産売買契約書のフォーマット
- 職場でのセクハラ・パワハラと企業の責任
- 株主代表訴訟と解任、違法行為差止め
- ソフトウェア開発委託契約書の概要とつくり方