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暴力団対策法とは

今回は暴力団対策法について説明していきます。

 

この文章を読むことで、「暴力団対策法、暴力団排除条例の概要」「暴力団に対する会社の取り組み」について学ぶことができます。

 

暴力団対策の概要

 

暴力団対策法とは、正式名称は「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」といい、暴力団員の暴力的要求行為について必要な規制を行い、市民生活の安全を確保して国民の自由と権利の保護を目的としている法律です。

 

かつて総会屋などが全盛だった頃に比べると、暴力団の会社に対する影響力は減っていると考えられますが、今でも暴力団の被害にあっている会社は少なからず存在すると言われています。

 

そして、近年の暴力団は、例えば振り込め詐欺や架空の金融投資の勧誘など、その資金源を一般の生活者の中から見つけ出そうとする動きも目立つようになっています。

 

また、暴力団対策法とともに、暴力団排除の目的で制定されているのが暴力団排除条例です。

 

暴力団排除条例は、暴力団と交際しないことで市民生活から暴力団の影響力をなくすことを目的とした条例です。

 

暴力団対策法とは1

【例題】
スマートフォンのアプリ開発を基盤事業とするZ社のM社長は、このところ連日のように放送される暴力団に関するニュースを見て、ため息をつきました。

 

Z社はこれまでのところ、暴力団から接触を受けたことはありません。また、M社長自身も日常生活で何らかの被害を受けた記憶もありません。

 

しかし時折、知り合いの社長と話をしていると、暴力団組織と思われるところから連絡があったなどということも聞きます。

 

M社長は会社を経営している以上、暴力団組織に対してどのように対応していかなければならないかについて、しっかりした指針が必要だと感じました。

 

幸いにも、Z社の法務を担当しているA君、S君、T君は大変よくやってくれています。

 

しかし、現時点で彼らはすでに多忙を極めています。

 

「さらに人員を増やす必要があるかもしれない。」

 

M社長はそう思いました。

 

【解説】
上述したとおり、いわゆるバブル時代には、ある意味様々な会社が暴力団の資金源になっていたと言われています。

 

総会屋やみかじめ料の徴収といった形で、会社はある意味そうせざるを得ない形で協力してきたとも言えます。

 

現在ではこのような形で暴力団に協力せざるを得ないという会社は減っているとされ、それが暴力団対策法と暴力団排除条例によるところだと言われています。

 

よって、ここではその概要を理解し、会社が暴力団に対してどのような対処をするべきなのか、考えていきましょう。

 

暴力団対策法とは

 

暴力団対策法は、1991年に制定されています。

 

1991年はバブル景気が終焉した年です。

 

このことから、バブル景気の間は暴力団が会社に様々な影響を及ぼしており、その対策のために作られた法律だということがわかります。

 

暴力団対策法で定められている主な内容は、以下の通りです。

 

暴力団の指定

 

暴力団対策法では、「集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれが大きい暴力団」を「指定暴力団」としています。

 

具体的には、暴力団の威力を暴力団員に利用させた上で集団的にまたは常習的に暴力的不法行為などを行うことを助長するおそれがある、あるいは暴力団の中で犯罪経歴保有者の人数の比率が一定以上であるという暴力団です。

 

公安委員会は、指定暴力団が暴力団対策法に違反した場合、中止命令や再発防止命令を出すことができます。

 

公安委員会とは、警察を管理している機関です。

 

公安委員会には国家公安委員会と都道府県公安委員会とがあり、それぞれ警察庁と都道府県警察を管理しています。

 

そして、この命令は行政命令であるため違反すると刑罰の対象となり、この時点で警察が対象者を逮捕することができるようになります。

 

また、中でもさらに危険な指定暴力団は、「特定危険指定暴力団」に指定されます。

 

特定危険指定暴力団が指定された区域(警戒区域)内で禁止行為を行った場合は、中止命令や再発防止命令を出すことなく、刑罰の対象となります。

 

暴力的要求行為

 

暴力的要求行為とは、指定暴力団がその威力を示して不当な要求を行う行為のことです。

 

暴力団対策法では、暴力的要求行為として以下の27項目を挙げています。

 

1.口止め料を要求する行為

 

2.寄付金や賛助金等を要求する行為

 

3.下請参入等を要求する行為

 

4.みかじめ料を要求する行為

 

5.用心棒料等を要求する行為

 

6.利息制限法に違反する高金利の債権を取り立てる行為

 

7.不当な方法で債権を取り立てる行為

 

8.借金の免除や借金返済の猶予を要求する行為

 

9.不当な貸付け及び手形の割引を要求する行為

 

10.不当な金融商品取引を要求する行為

 

11.不当な株式の買取り等を要求する行為

 

12.不当に預金・貯金の受入れを要求する行為

 

13.不当な地上げをする行為

 

14.土地・家屋の明渡し料等を不当に要求する行為

 

15.宅建業者に対し、不当に宅地等の売買・交換等を要求する行為

 

16.宅建業者以外の者に対し、宅地等の売買・交換等を要求する行為

 

17.建設業者に対して、不当に建設工事を行うことを要求する行為

 

18.不当に集会施設等を利用させることを要求する行為

 

19.交通事故等の示談に介入し、金品等を要求する行為

 

20.因縁を付けての金品等を要求する行為

 

21.許認可等をすることを要求する行為

 

22.許認可等をしないことを要求する行為

 

23.公共事務事業の入札に参加させることを要求する行為

 

24.公共事務事業の入札に参加させないことを要求する行為

 

25.人に対し、公共事務事業の入札に参加しないこと等を要求する行為

 

26.公共事務事業の契約の相手方とすること等を要求する行為

 

27.公共事務事業の契約の相手に対する指導等を要求する行為

 

これらの行為を行った場合、中止命令や再発防止命令が出されます。

 

また、「何人も」指定暴力団員に対して、これらの行為を行うように要求することも禁止されています。

 

つまり、誰であれ、どんな形であれ、暴力団を利用して暴力的要求行為をさせてはならないということです。

 

暴力団排除条例とは

 

暴力団排除条例とは、上述したように市民生活から暴力団の影響力をなくそうとして各地方自治体で制定している条例です。

 

各自治体の状況によって内容は若干異なりますが、基本的な目的は同じです。

 

例えば、東京都の場合、「暴力団排除活動に関し、基本理念を定め、都及び都民等の責務を明らかにするとともに、暴力団排除活動を推進するための措置、暴力団排除活動に支障を及ぼすおそれのある行為に対する規制等を定め、もって都民の安全で平穏な生活を確保し、及び事業活動の健全な発展に寄与することを目的とする」とされています。

 

また、神奈川県の場合は、「暴力団排除について、基本理念を定め、並びに県、事業者及び事業者団体の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに、暴力団排除に関する基本的な施策、少年(20歳未満の者をいう。)の保護及び健全な育成を図るための措置、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資する行為についての必要な規制その他暴力団排除を推進するために必要な事項を定めることにより、暴力団排除に関する施策の総合的な推進を図り、もって安全で安心して暮らすことができる社会の実現に資することを目的とする」とされています。

 

上記2つの条例を見てわかるとおり、この条例では「都及び都民等の責務」「県、事業者及び事業者団体の責務並びに県民の役割」が定められています。

 

つまり、暴力団対策法が暴力団の取り締まりに関する法律であるのに対し、暴力団排除条例は地方自治体や事業者、市民の責務について定められた条例ということになります。

 

そして、東京都の暴力団排除条例では、以下のことが市民の努力義務とされています。

 

・青少年に対する措置

 

青少年が暴力団に加入したり暴力団員による犯罪被害を受けないように指導・助言等を行う。

 

・祭礼等における措置

 

祭礼、花火大会、興行などを行う際は、行事の運営に暴力団関係者を関与させないよう努める。

 

・事業者の契約時における措置

 

契約する際は、相手が暴力団関係者でないことを確認する。また、契約書に相手が暴力団関係者と判明した場合は無条件で契約を解除できるという特約を定める。

 

・不動産譲渡等における措置

 

不動産を譲渡する場合は、契約書に暴力団事務所として使用しないことおよび事務所として使用していることが判明した場合は無条件で契約を解除等することが出来るという特約を定める。

 

どのような場合であっても、市民は暴力団と関わりを持たないように努力することが求められるということです。

 

暴力団に対する会社の取り組み

 

では、会社は暴力団に対してどのような姿勢で臨めばよいでしょうか。

 

まず必要なことは、「必ず組織として対応する」ということです。

 

具体的には、まず会社として暴力団に対する行動基準を設け、社内の連携体制を整えるということです。

 

会社にそのような行動基準や連携体制がなければ、例え担当者が仮に相手が暴力団かもしれないと思ったとしても、誰にも報告せず、巧妙に契約を結ばされたりする恐れがあります。

 

また、暴力団は会社の暴力団に対する姿勢を敏感に察知します。

 

まずは社内で暴力団に対する対応方針を明確にし、社員に周知して「何かあれば必ず連携する」という体制を整えましょう。

 

次に、「警察などの行政とも積極的に連携すること」が必要です。

 

警察には暴力団に関する情報が集まっています。社内ではわからないことでも、問い合わせればわかることもあります。

 

積極的に外部との連携を図りましょう。

 

なお、各都道府県には暴力追放運動推進センターという公安委員会から指定された組織が設置されています。

 

暴力追放運動推進センターは、「暴力団を利用しない」「暴力団を恐れない」「暴力団に金を出さない」「暴力団と交際しない」の「3ない運動プラス1」を柱として、暴力相談活動や不当要求防止責任者講習の開催なども行っています。

 

このような組織とも連携して、様々な情報を駆使していくことが、暴力団の被害を生まない有効な対策となります。

 

被害にあった場合

 

会社としてどんなに対策を取っていても、暴力団の被害にあってしまうことはありえないことではありません。

 

そのような場合は、発覚した時点ですぐに警察などに届けるようにしましょう。

 

警察や暴力追放運動推進センターでは、被害にあってしまったときの対応などについても必要な対応をする体制が整っています。

 

最もやってはいけないことは、「恐怖を感じて泣き寝入りをしてしまうこと」です。

 

泣き寝入りは暴力団の思うつぼで、ますます被害が大きくなる可能性が高くなります。必ず各関係機関に届け出ましょう。

 

まとめ

 

・暴力団から市民を守る法律や条例として、暴力団対策法と暴力団排除条例がある。

 

・暴力団対策法では、指定暴力団に対して公安委員会が中止命令や再発防止命令を出すことができる。

 

・暴力団対策法では、指定暴力団の暴力的要求行為として、口止め料を要求する行為や寄付金や賛助金等を要求する行為、下請参入等を要求する行為、みかじめ料を要求する行為などの27項目を挙げている。

 

・暴力団排除条例では、暴力団には関わらないという、事業者や市民の責務を定めている。

 

・会社は、暴力団に対する行動基準を設け、社内の連携体制を整えることや警察など行政と積極的に連携する必要がある。

 

・暴力団の被害にあった場合は発覚した時点ですぐに警察などに届け、泣き寝入りはしない。

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