代理店契約書の概要とつくり方
今回は代理店契約書の概要とつくり方について説明していきます。
この文章を読むことで、「代理店契約書とは」「代理店契約書の作成方法」について学ぶことができます。
代理店契約書とは
代理店契約書は、ある会社が製造した製品を別の会社が代理で販売するための契約書です。
まず、「代理店契約」とは何かを理解しましょう。
例えば北海道に拠点を持ち、北海道だけでスポーツ器具の製造販売を行っている会社があるとします。
そのメーカーは北海道では有名であり、スポーツ器具は安定した売上をあげているために、近年全国的にも自社ブランドは通用すると考えるようになりました。
そして、最も需要が多いと思われる、東京への進出を検討し始めました。
しかし、そのメーカーは現時点で東京に拠点はありません。
よって、独自に東京へ進出し販売を始めたとしても、販売ノウハウがまったくないため本当に成功するかどうかはわかりません。
また、成功可能性を高めるために事前調査を行うにも、多額の費用が掛かり、なかなか踏み出すことができません。
そのような場合に全国進出の足掛かりの一つとして利用される販売形態が、代理店契約です。
メーカーが代理店になってくれる東京の販売会社と契約して、その会社に顧客への販売をしてもらうのです。
製造会社は製品がよく売れる顧客層を熟知しており、販売会社はそのような顧客層とつながりを持っています。
よって、北海道でスポーツ器具を製造するメーカーと、東京で販売ノウハウを持つ販売会社が「東京での販売」について協力することで、別々の場所でお互いの強みを発揮することができるようになるのです。
これが代理店契約です。
なお、代理店と似たような契約に、特約店契約というものもあります。
似たような概念ですが、代理店と特約店には製造会社と販売会社、顧客との関係性に違いがあります。
一般的に考えられている代理店と特約店の違いは、以下のようになっています。
≪代理店≫
・代理店はメーカーに代わって販売を代行する。
・販売会社は販売を代行するだけで、顧客と取引を行うのはあくまでもメーカーである。
・代理店はその販売に応じてそのマージン(手数料)を受け取る。
≪特約店≫
・特約店はまずメーカーと契約し、メーカーから商品を買い取る。
・特約店は買い取った商品を顧客に販売する。
・顧客と取引を行うのは販売会社である。
代理店はあくまでも代理で販売を行うため、顧客との関係はメーカーにあるのに対し、特約店は商品を買い取ってから販売するため、顧客との関係は特約店にあるということです。
そして、代理店は自社が商品を購入しない分、収入は手数料だけに留まりますが、特約店は商品を買い取るので「売上額−(仕入額+販売費用)」がそのまま自社の収入となります。
しかしながら、実は代理店と特約店には明確で一義的な定義はないとされています。
よって、業界や会社などによってその意味合いが異なる場合もありますが、ここではあくまでも一般的に考えられている違いを挙げています。
(代理店や特約店契約には、メーカーと販売会社の間で様々な制約がもうけられることもありますが、詳しい説明は省略します。)
代理店契約書つくり方
【解説】
※第5条については、業務委託契約書の解説を参照してください。
※第6条、第9条については、継続的売買取引基本契約書の解説を参照してください。
※第7〜8条、第10〜11条については、動産売買契約書の解説を参照してください。
タイトル
タイトルについては他の契約書同様、特にルールがあるわけではありません。
よって、ただ「契約書」などとしても問題はありません。
しかし、「契約書」などの場合は何を契約しているのかの判断がつかず、後日混乱を招く恐れもあります。
ここでは「代理店契約書」としていますが、より詳細にする場合は「〇〇代理店契約書」などとして、〇〇の部分に委託する製品の名称やブランドなどを入れてもよいでしょう。
社内でのルールを決め、相手方と打ち合わせて最も両社が納得できるタイトルにしましょう。
前文
前文では「誰と誰が契約するのか」を明確にします。
今回は「株式会社〇〇(以下「甲」)」と「株式会社〇〇(以下「乙」)」としていますが、例えばメーカーと販売会社などの場合は、「メーカー〇〇(以下「甲」)」と「販売会社〇〇(以下「乙」)」などとしても、より契約者が具体化されよいでしょう。
また、代理店契約という言葉はその後も複数回にわたって表記されると考えられるので「本契約」とし、この後は「本契約」という呼び方で統一しています。
契約内容
第1条
第1条では、目的を定義しています。
製造を行っている会社と販売会社の関係を明確にし、具体的に何を販売するのかを明確にしています。
今回は対象物を一つと考えていますが、販売する対象物が複数である場合は別紙などで規定してもよいでしょう。
第2条
第2条では、契約を定義しています。
ここで契約内容について、代理店であるか特約店であるかを規定しています。
「乙が第三者と締結した契約は、甲と第三者の間に生じる」とすることで、この契約が代理店契約であることが明確になっています。
そして、契約は製造会社と第三者の間に生じることで、販売会社はあくまでも販売を代理で行い、顧客との関係性は成立しないこととなっています。
契約内容が曖昧だと、後日思わぬトラブルを招く可能性があります。
基本的な内容ではありますが、しっかりと明記しておきましょう。
第3条
第3条では、義務を定義しています。
まず、販売会社は代理店として販売した場合、その情報(契約内容、契約者、販売手数料)を製造会社に連絡する必要があります。
契約は製造会社と顧客との間で成立していますので、これは当然であると言えるでしょう。
そして、例えば契約以前に何らかの問題が発生した場合は、販売会社が解決するとしています。
顧客と販売会社に起こる問題については、製造会社がすべてを把握できていないケースが多く、対処できないことが多いと考えられるためです。
製造会社としては、販売力のある販売会社に手数料を支払って任せている以上、このような文言はぜひ入れておきたいところです。
また、個人情報の取り扱いについても、情報漏洩などがないように法令順守の取り決めを行いましょう。
販売会社と第三者とにおいて、その製品以外の関係性を考慮すると、個人情報を直ちに破棄させることは、販売会社の今後の活動に影響を与えると考えられるため、難しい場合が多くなります。
よって、契約書で販売会社に対して法令順守を促し、万が一漏洩した場合などに備えておくのがよいでしょう。
第4条
第4条では、販売手数料を定義しています。
ここでは別紙で規定していますが、計算が複雑ではない場合や大きなボリュームにならない場合は契約書に記載しても問題はありません。
販売手数料の決め方については販売額、あるいは販売個数から計算するのが一般的ですが、両社が納得できる形で決定するのがよいでしょう。
そして、販売手数料の計算は煩雑になりがちですので、決め方が決定してからも実際の手数料の記載に誤りがないかをよく確認しましょう。
また、製造会社が販売手数料をどのような時期にどのような方法で支払うかについても忘れずに記載しておきましょう。
後文
後文では、契約書の部数と保管場所を明確にし、作成日を記入してそれぞれが記名捺印を行います。
これで契約書は有効となります。
必要で入っていない条文や不要な条文がないかを再度確認しましょう。
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