雇用契約書の概要とつくり方
今回は雇用契約書の概要とつくり方について説明していきます。
この文章を読むことで、「雇用契約書とは」「雇用契約書の作成方法」について学ぶことができます。
雇用契約書とは
労働基準法では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と定めています。
つまり、会社が労働契約を結ぶ(労働者を雇用する)際は、労働条件をはっきりと示す必要があるということです。
その際、労働条件を明示したことを証明する契約書が雇用契約書です。
実際には、労働基準法上はあくまでも「労働条件を明示する」ことが義務です。
よって、労働条件が明示されていれば、雇用契約書は作成しなくても問題はありません。
実際に雇用契約書を作成せず、労働条件を通知するだけの会社も存在します。
しかし、雇用後の労働者とのトラブルを避けるためには、ただ通知するのではなく、会社と労働者双方が記名捺印する契約をしたほうが無難ですし、労働者の会社に対する信頼感や安心感にもつながります。
よって、労働者を雇用する際は、雇用契約書を作成するべきであると考えましょう。
雇用契約書は、会社が作成して労働者がその内容に納得した場合に記名捺印することで契約が成立します。
労働者が労働条件に納得したという証明になるということです。
なお、ここでは雇用契約書の内容はおおまかなものにとどめ、詳細は労働条件通知書で通知するという形にしています。
労働者は雇用契約書の契約内容と労働条件通知書双方の内容に納得した場合、初めて雇用契約書に記名捺印するということになります。
雇用契約書のつくり方
【解説】
タイトル
タイトルについては特にルールがあるわけではありません。
雇用に関する契約の場合は、それ自体で雇用についての契約書だと判断できるため、雇用契約書とするのが一般的ですが、基本的にはどのようなタイトルでもかまわないでしょう。
後日になって雇用に関するものと判断できれば、それで問題はありません。
しかし、その都度タイトルが違えばやはり混乱のもととなります。
同じタイトルで統一したほうがよいでしょう。
前文
前文では「誰と誰が契約するのか」を明確にします。
雇用契約の場合は雇用をする会社と雇用される労働者です。
また、雇用契約という言葉はその後も複数回にわたって表記されると考えられるので、「本契約」とし、この後は「本契約」という呼び方で統一しています。
契約内容
※第5条については、動産売買契約書の解説を参照してください。
第1条
まず第1条で、雇用を定義しています。
雇用の基本的な関係についての定義です。
会社が労働者を雇用し、賃金を支払うことと労働者の誠実な勤務を確認しています。
基本的なことですが、会社によっては大変重要なことです。
労働者が「誠実」に勤務しなければならないということを明記しましょう。
第2条
第2条では、法令の遵守を定義しています。
労働者が法令、諸規則を順守することは、会社で働く上での大原則です。
この大原則が守られないと、1人の労働者の行動によって会社自体の信用が低下することもあります。ぜひ記載しておきましょう。
その上で、「職務上知り得た機密に属する事項」に関して漏えいを禁止しています。
情報漏えいについても、1度情報が漏えいしてしまうと、会社が取り返しのつかない多大な損害を受ける可能性があります。
こちらも明確に禁止しておきましょう。
第3条
第3条では、労働条件を定義しています。
労働条件は労働条件通知書で労働者に通知します。
≪労働条件通知書の内容≫
上述したとおり、労働条件は会社から労働者にはっきりと明示する必要があります。
また、以下については書面で交付しなければならないとされています。
・就業の場所、従事すべき業務
・労働契約期間
・始業終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
・賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
・退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
よって、上記の内容が含まれた労働条件通知書を労働者に明示しましょう。
労働条件通知書は文章の羅列だと非常に見づらく、感覚的にわかりにくいので、表形式にするのが一般的です。
労働者にとってわかりやすい労働条件通知書にしましょう。
なお、「その他」とは、雇用契約書や労働条件通知書に記載することができない詳細な規定などです。
例えば解雇事由などです。
会社にもよりますが、一般的に解雇事由は非常に項目が多く、労働通知書には書ききれないケースが大半です。
そのような書ききれない条件については、その他として就業規則の定めによることを記載しておきましょう。
なお、就業規則が存在しない会社の場合は、雇用契約書が就業規則の代わりとなりますので、例えば懲戒事由などを明確に記載する必要があります。
その場合は漏れのないように1つ1つ確認しながら記載していきましょう。
後文
後文では、契約書の部数と保管場所を明確にし、作成日を記入してそれぞれが記名捺印を行います。
これで契約書は有効となります。
必要で入っていない条文や不要な条文がないかを再度確認しましょう。
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