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契約書でトラブルが起こりやすい箇所

今回は契約書でトラブルが起こりやすい箇所について説明していきます。

 

この文章を読むことで、

 

契約書のトラブル

 

契約は、会社同士が結ぶ「今後の約束」です。

 

会社は当然それを理解した上で、今後自社が有利になるような約束(契約)を結ぼうと考えます。

 

よって、結果的に契約が結ばれるということは、双方が細心の注意を払いお互いが今後有利になると判断したことを意味しています。

 

しかし、どんな契約書でも今後のすべての可能性を網羅することは難しいことです。

 

よって、トラブルを防ぐために現時点では網羅できない可能性についても、言及する必要があります。

 

【例題】
スマートフォンのアプリ開発を基盤事業とするZ社の法務担当者であるA君は、新たに立ち上げられた法務部門ではS君とT君の教育係となりました。

 

現在、A君は主に社内規則の仕事を行い、S君とT君は契約書関係の仕事をしています。

 

A君も法務担当となった頃にM社長の指示によって契約書の確認などは行ってきましたが、まだ二人を教育できるほど契約書について知識と経験があるわけではありません。

 

そんなとき、A君とS君、T君はM社長に呼ばれました。

 

M社長:
「今は主にS君とT君に契約書業務を学んでもらっているところだが、A君も含めて契約書のトラブルがどういったことで生まれるかを知っておいてほしいと思う。」

 

M社長はZ社がアプリを提供している取引会社から損害賠償請求された話を3人に聞かせました。

 

その会社からの発注は目まぐるしいほどの仕様変更があり、それによってZ社が納期を守れず、損害賠償を起こされたのでした。

 

しかし、契約書には、仕様変更が発生した際の納期遅れは「それ相応と見込まれる程度」であれば許容されることが書かれていました。

 

この「それ相応と見込まれる程度」という表現が問題となったわけです。

 

結果的にM社長は対応を弁護士に依頼し、取引先が過度な仕様変更を認めたために損害賠償請求は撤回されたのですが、M社長は弁護士に仕様変更と納期遅れの関係性を明示していなかったのが今回のトラブルの元であったと指摘されました。

 

M社長は3人に言いました。

 

「契約書に書かれる内容は、できる限りはっきりとした、誰が見ても同じことを理解するという内容でなければならない。今話をした訴訟問題は「それ相応と見込まれる程度」という表現にしてしまったことが問題だった。

 

しかし納期遅れの期間を明確にしておくことは正直言って難しい。現場に聞けばある程度はわかるかもしれないが、それでも仕様変更は相手が行うことだから、なかなか明確にはならないんだ。根本的には確定した仕様を変更してはならないという契約をするというのがよいのかもしれない。

 

でもそれでは相手先から融通の利かない会社だと思われてしまう。契約自体してもらえないかもしれない。そこをどのように改善していくか、これがアプリを提供する我々の課題であるということなんだ。」

 

S君とT君は難しい顔をして頷いていました。

 

A君も彼らを教育する立場上、契約についても改めて学んでいこうと思いました。

 

【解説】
Z社のM社長が3人に話したように、契約書はその後損害賠償などのトラブルを引き起こす可能性があります。

 

「それ相応と見込まれる程度」という表現が問題になったように、契約当初は問題ないと思われた表現も、後日になって大きな問題となる可能性があるということです。

 

よって契約書でトラブルになりやすい点は、しっかり理解しておく必要があります。

 

トラブルが起こりやすい箇所1:あいまいな表現に基づくあいまいな合意

 

まず、例題にあるようなあいまいな表現に基づくあいまいな合意は、最もトラブルが起こりやすい箇所です。

 

もし、相手先が目的物に対して何らかの変更を求めてくる可能性があるのであれば、考えられる変更に対処できるような契約が望ましいと言えます。

 

そして、その変更を予想するのが難しい場合は、例えば「仕様変更が発生した場合は、お互いの合意の下で別途納期について再設定する。」などという文言を付け加えることが望ましいと言えるでしょう。

 

そうすると、もし仕様変更があった段階で現場が納期について交渉することができますし、仮に相手先が納期交渉に応じない場合は相手先の契約違反を指摘することができます。

 

トラブルが起こりやすい箇所2:責任分担

 

次に、責任分担についてもトラブルが起きやすいと言えます。

 

例題で考えてみると、まず仕様変更がある場合、その責任をどうするかということです。

 

本来であれば一旦確定した仕様が変更されるということは、変更する側が何らかの責任を負うことになります。

 

しかしその責任をはっきりさせてしまうとM社長が言うように、契約自体がうまくいかなくなる可能性もあります。

 

よってある程度両社が対応しやすい形にして、仕様変更が発生する可能性があることを想定した上で、その場合の対応策を盛り込むことが大切になります。

 

また、次に責任分担でトラブルになりやすいことは、その期日です。

 

例えば目的物が納品された場合、それが受け入れ側のミスで納品扱いになっていなかった、あるいは検査で合格しなかった、検査期間が長く、認められるまでに時間がかかったなどです。

 

これらは、ことが起きてからではその責任の所在をはっきりさせることは難しいと言えます。

 

よって事前に、納品の際の納品書や受領書を必ず取り交わすこと、検査の方法と合格基準を明確にしておくこと、検査を行う期間を明示すること、不合格の場合の再納品の期日などについて、記載しておく必要があります。

 

トラブルが起こりやすい箇所3:誤字脱字

 

誤字脱字は契約書だけに限ったことではありませんが、特に契約書での誤字脱字で起こるトラブルは絶対に避けたいことです。

 

例えば目的物が複数ある場合、本来目的物Aについて記載するはずがBについて記載されている、あるいは別紙Cを参照するはずが契約書では別紙Dと記載されていたなどです。

 

誤字脱字は契約内容とは別の問題ですので、双方が注意をすることにより、かなりの部分は解決できます。

 

しかし相手先から誤字脱字を指摘されるのは、自社の社内管理体制の甘さを暴露することとなり、今後の契約に支障を与える恐れもあります。

 

盲点となりやすい部分ですので、くれぐれも注意しましょう。

 

トラブルが起こりやすい箇所4:テンプレートの使用

 

最後に、誤字脱字と似ていますが、テンプレートを使ったことによる修正忘れもトラブルを招く要因となります。

 

テンプレートを使ってある程度その契約に合わせたとしても、確認が甘ければ突然関係ない条項が出てきたり、本来入るべきはずの数値が入っていないなどのことがあり得ます。

 

業務の効率化のためにテンプレートを使用すること自体は問題ありません。

 

しかし、くれぐれも変更すべき個所のチェックを怠らないようにしましょう。

 

まとめ

 

・契約は、会社同士が結ぶ「今後の約束」である。

 

・今後のことは誰にもわからないため、トラブルが発生する可能性は常にある。

 

・トラブルが起きやすいこととして、あいまいな表現に基づくあいまいな合意、責任分担、誤字脱字、テンプレートの使用などを挙げることができる。

 

・あいまいな表現に基づくあいまいな合意については、それをすべて明確にすることが難しい場合は、含みを持たせて別途協議して合意するなどとすると、契約時点での合意を得やすい。

 

・責任分担のトラブルについては納品後に起こることが多いため、検査の方法や基準、期間や再納品の期日などを明記して双方がそれを順守することが必要である。

 

・誤字脱字やテンプレートの使用から起きるトラブルは、確認するだけで避けられるものであるため、どのような契約書であっても必ず不備がないかのチェックを行うことが必要である。

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