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株主総会の仕組みと運営(開催手続き、議決権、計算書類、事務処理)

株主総会の仕組みと運営(開催手続き、議決権、計算書類、事務処理)

株主総会は会社の株主が会社の方向性を決定するために集まって行われる、会社の根幹とも言える機関(会議)です。

 

株式会社は、株主総会があってこそ成り立ちます。株主総会は会社への出資者である株主が議決権を持ち、将来的な会社の方向性を決めていくことになるためです。

 

また、株主総会は株主との対話の場でもあります。経営者は会社を支えている株主の意向をくみ取り、それを経営に活かさなければならないのです。

 

よって様々な部署が連携し、会社として株主にしっかり対応できるように準備する必要があります。

 

ここでは、会社の根幹である株主総会について、その概要やどのように運営されていくかについてを学んでいきましょう。

 

株主総会の概要

 

株主総会とは、文字通り株主の総会です。

 

よって、議決権のある株式を保有する株主には、全員に出席する権利が与えられます。

 

議決権は保有する株式数に応じて与えられ、例えば株式を1単位保有する人には議決権は1票与えられ、100単位保有している人には100票が与えられることになります。

 

そして、株主総会は定時株主総会臨時株主総会に分類することができます。

 

定時株主総会

 

定時株主総会は、決められた時期に開催が必要なもので、原則として毎年必ず開催されるものです。

 

開催時期は期末から3か月以内と決められています。例えば3月末が期末の会社の場合は、4月から6月末までに開催する必要があります。

 

ニュースを見ていると、株主総会のニュースは6月末に報道されることが多くなっています。

 

これは3月を決算月とし、期限ぎりぎりの6月末に定時株主総会を行う会社が多いためです。

 

臨時株主総会

 

臨時株主総会は、会社にとって重要な意思決定を行う際に臨時で開催されるものです。

 

臨時株主総会は必要に応じていつでも開催することができます。

 

こちらも議決権のある株式を保有する株主には、全員に出席する権利が与えられます。

 

しかし、一般的な会社では臨時株主総会が行われることは少なくなっていますので、原則としてはあくまでも定時株主総会で様々なことが決定されることになります。

 

株主総会での決議方法

 

また、株主総会での決議方法には、以下の3つの種類があります。

 

普通決議

 

普通決議とは、議決権を持つ株主の過半数が出席し、その過半数の賛成を必要とする決議です。

 

普通決議の対象となるのは、一般的な議案、例えば取締役の選任や配当の決定などです。

 

特別決議

 

特別決議とは、議決権を持つ株主の過半数が出席し、その2/3の賛成を必要とする決議です。

 

特別決議の対象となるのは、特別な議案、例えば定款の変更などです。

 

特殊決議

 

特殊決議は、特殊と名のつくように非常に特殊な会議です。

 

特殊会議には定足数はなく、ある一定の賛成数だけが必要とされます。

 

しかし、議案が特殊なだけに必要な賛成数には厳しい基準が設けられています。

 

例えば株式に譲渡制限を設ける場合などは、 議決権を持つ株主の半数以上、かつ議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。

 

ややわかりにくいですが、特殊決議は他の決議に比べて全株主に影響を与える議案の決議であると理解しておきましょう。

 

株主総会の役割

 

株主総会の役割は、取締役会がある場合とない場合ではその位置づけがやや異なります。

 

株式会社の原則は「取締役会がある(経営と所有が分離している)」ということが前提となります。

 

よって、取締役会がある場合は、株主総会では経営面についてではなく、会社の所有者として決定すべきことがその議題になります。

 

一方で取締役会がない場合(家族経営の小規模な会社など)は、経営陣が株式を所有していることが多く、その場合は株主総会が経営面を含めたほぼすべてのことを決める機関となります。

 

そして、特に株式を上場している大規模な上場企業の株主は、日本全国のみならず世界に散在するケースも多くあります。

 

このため、株主総会を行う際は開催場所について株主の事情を考慮することが法令によって定められています。

 

会社の経営をスムーズに行うためには、法務的な見地からこのような制約や仕組みを理解しておく必要があります。

 

株主総会をどう運営していくかということが、法務担当者の大切な仕事の一つとなるのです。

株主総会の仕組みと運営(開催手続き、議決権、計算書類、事務処理)1

【例題】
スマートフォンのアプリ開発を基盤事業とするZ社は、現在取締役はM社長を含む3人です。

 

そして、その3人でZ社の全株式を所有しています。

 

株式の所有割合はM社長が60%、残り2人の取締役が各20%ずつです。

 

よってZ社では、必然的に取締役3人が会社のすべての決定権を握っている(株主である)こととなり、外部の意見がその意思決定に反映されることはありません。

 

この体制は3人に意思決定権が集中していることから、経営を迅速に行えるという利点があります。

 

しかし、近年では会社のコーポレートガバナンスの在り方も指摘されるようになっており、かつM社長は個人的に将来の上場を考えているため、今後のZ社の株式の取り扱いについて取締役の2人にさりげなく相談をしてみることにしました。

 

M社長:
「我が社は株主が我々取締役3人という状況です。現時点での会社の規模を考えると、意思決定が迅速に行える現在の体制は我が社の強みでもあり、うまくいっていると思います。

 

しかし、最近の急速な成長を考えると、今後は株主を増やし、我々は経営に注力すべきかとも思うのですが、どうでしょうか?」

 

取締役P:
「社長は増資あるいは外部への株式の譲渡を考えているということでしょうか?」

 

M社長:
「現時点でということではなく、あくまでも今後会社が大きくなった場合ということですが、資本を増強する必要性が出てくると考えています。」

 

取締役O:
「なるほど。資本を増強して外部から我々の経営に対するチェック機能の強化も図るということですね。確かに近年の時流に沿った考え方と言えますね。」

 

M社長:
「はい、そうです。」

 

取締役P:
「しかし社長、そうすると手法にもよりますが、株式が大量に外部に取得されることによって経営の自由度が下がるリスクや大株主に取締役を送られるリスク、さらには会社を買収されるリスクも増えることになると思いますが、それらを加味した上でそのように考えているということでしょうか?」

 

M社長は取締役Pさんに指摘され、何も言えなくなってしまいました。

 

確かに経営は外部株主の意向を反映しなければならなくなることは理解していましたが、株式を外部に公開することで買収される側になる可能性があることまでは考えていなかったのです。

 

M社長は苦し紛れに「あくまでも現段階での意見を聞きたかっただけです。」と言って、何とかその場を収めました。M社長はあわよくば上場の話などもしようと考えていましたが、この状況ではとてもできるものではありませんでした。

 

Z社は会社設立から今日まで、M社長だけではなく取締役のOさん、Pさんも力を合わせ、3人で苦しい時期を乗り切って経営を軌道に乗せ成長させてきました。M社長は二人には様々な犠牲を払ってもらっていることもあり、今後もぜひ一緒にやっていきたいと考えています。

 

しかし、現時点では株主を増やす、まして上場などということを言い出してしまったら、少なくともPさんとは対立してしまうかもしれません。

 

会社の方向性はこれまでの経緯を考えて何事も慎重に考える必要がある、とM社長は思いました

 

【解説】
会社は株主が所有者です。

 

よって例題のように、株主がその権利を利用し、会社の経営に対して株主総会での決議によって一定の影響力を持つことができます。

 

また、近年では株式を取引所に上場している上場企業は、特に株主との関係に力を入れる傾向にあり、株主総会の存在感も高まりつつあります。

 

 

では、株主総会とは一体どのようどのように開催されているのでしょうか。

 

株主総会開催の流れ

 

株主総会は、以下のような流れで行われます。

 

議事内容の決定
 ↓
株主の招集
 ↓
株主総会の開催
 ↓
株主総会後の処理

 

株主総会の開催にあたっては、必要な書類(計算書類)などについても様々な制約があります。

 

よって、開催の際にはそのような決まり事に留意することが必要です。

 

一つ一つ理解していきましょう。

 

議事内容の決定

 

株主総会の議事内容は、主に以下のようなものになります。

 

取締役会がある場合

 

取締役会がある場合、株主総会では取締役の選任、剰余金の配当、定款の変更、計算書類の承認などを決定します。

 

詳細な経営方針は取締役会で決定されるため、株主総会では経営を任せる取締役を選任したり、会社の憲法や法律とも言える定款を決定したりします。

 

そして、株主総会で決められた定款に基づいて経営を行うのが取締役会であるという位置づけです。

 

なお、例題のZ社は「株主=取締役」であるため、両者の思惑が一致し、意思決定がより迅速に行えるということになっています。

 

取締役会がない場合

 

取締役会がない場合、株主総会では代表取締役の選任、取締役による競業や利益相反取引の承認、その他株式会社に関する一切の事項などを決定します。

 

経営方針を決める取締役会がないため、会社の経営面に関する決議も株主総会で行われることとなります。

 

なお、原則として貸借対照表などの計算書類を最終的に承認するのは取締役がある場合、ない場合ともに株主総会です。

 

よって株主総会開催の際は事前に議事内容だけではなく、計算書類を準備することも必要となります。(計算書類については後述します。)

 

株主の招集

 

株主の招集は、以下のように行われます。

 

取締役会がある場合

 

株主の招集は、原則として1週間前(場合により2週間前)までに行わなければなりません。

 

招集方法は書面や電子メールなどの電磁的方法が認められていますが、株主が書面を希望する場合は、書面で通知しなければなりません。

 

また、召集の際は株主総会の目的となる事項(議事内容)や計算書類、事業報告などを添付する必要があります。

 

取締役会がない場合

 

株主の招集は1週間前までに行わなければなりませんが、定款に明記することによって短縮することが可能です。

 

招集方法は書面や電子メールなどの電磁的方法に加え、口頭での通知も認められています。

 

また、召集の際に株主総会の目的となる事項(議事内容)や計算書類、事業報告などを添付する必要はありません。

 

取締役会がある場合に比べると、その制約はかなり緩和されていることがわかります。

 

株主総会の開催

 

株主総会が開催されると、議長が中心となって進めます。

 

株主総会ではまず取締役による株主への経営報告があり、その報告に対して質疑応答を行います。

 

株主からの質問に対しては、取締役が責任をもって回答しなければなりません。

 

よって、株主総会を円滑に進めるためには、開催前にあらかじめ質問を想定しておき、その回答を準備しておく必要があります。

 

そして、その回答が法務的に問題がないかどうかを事前にチェックし、問題がある場合は修正して本番に望むといった対策を行っておきます。

 

そうすることで、株主総会を問題なく乗り切ることができるようになります。

 

株主総会後の処理

 

株主総会後の処理として必要なことは、まず議事録の作成です。

 

議事録には開催日時や開催場所、出席者や株主総会の議事内容と議決結果などを記載しなければなりません。

 

また、例えば株主総会によって新しい取締役が選任された場合などは、登記変更の作業が必要となります。(登記の説明に関しては後述します。)

 

なお、承認された計算書類は、決算公告という形で開示しなければなりません。

 

開示の方法には官報、日刊新聞紙、電子公告の3種類があります。

 

株主総会の仕組みと運営(開催手続き、議決権、計算書類、事務処理)1

 

議決権に関する制約

 

株主総会では、議決権は原則として1株につき1つ与えられます。

 

しかし、上述したように単位株(100株や1,000株といった複数を1単位としている株式)を採用している場合は、1単位につき1つの議決権が与えられます。

 

そして、議決権を複数持っている株主で実質的に1人で議決権を所有している場合は、意思は1つとみなされて議決権はすべて統一する必要があります(賛成ならすべての議決権で賛成の投票を行います)。

 

ただ、例えば投資信託のように実質的な所有者が複数の場合は、議決権の不統一が認められるとされています。(実質的な所有者の意見が異なる場合は賛成と反対に分けて投票を行うことができるということです。)

 

なお、株主が1,000人以上存在する会社については、株式総会に参加できない株主が存在する可能性が高いため、原則として書面による投票ができるよう定めなければいけません。

 

議決権が認められない株式

 

次に、株式の中には、以下のような議決権が認められない株式もあります。

 

1.議決権制限株式

 

議決権制限株式とは、議決権の一部あるいは全部を制限された株式のことです。

 

議決権が制限されると所有者としての会社への影響力がなくなってしまうため、それだけを考えると株式を持つ意味がないということになります。

 

しかし実際は、議決権を放棄する代わりに例えば配当などを優先的にもらいたいなどと考える株主もいます。

 

そのような株主には配当を優先的に与える株式(優先株)を与え、その代わりに議決権に関しては制限をつけることで経営への関与を最小限にすることができます。

 

例えば例題の取締役Pさんの懸念は、議決権制限株式を外部の株主に割り当てることによって回避される可能性があるということになります。

 

2.自己株式

 

自己株式とは、いわゆる「自社株買い」などを行って自社で保有している株式のことです。

 

自己株式を保有する理由には様々なものがありますが、一般的には株式の価格維持が目的となります。

 

例えば、株価が低迷しているときに自社株買いを行うと、会社は自社の株式を本来の価値よりも低いと判断していると市場にメッセージを送ることができ、結果的に株価は上昇する可能性があります。

 

しかし、このような自己株式は自社保有であるため、株主総会での議決権はありません。

 

株主総会に必要な書類(計算書類)

 

株主総会に必要な書類は、計算書類と呼ばれます。

 

計算書類とは主に貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表のことを言います。

 

計算書類はまず、取締役会の承認を必要とし、その上で株主総会の承認を受ける必要があります。

 

なお、会計監査人が設置されている会社で、会計監査人が無限定適正意見(計算書類がすべてにおいて適正であるという意見)を表明している場合は、株主総会の承認は不要となり、報告事項となります。

 

まとめ

 

・株主総会は、株式会社の根幹となる機関である。

 

・株主総会には、定時株主総会、臨時株主総会の2種類がある。

 

・株主総会の決議方法には、普通決議、特別決議、特殊決議の3種類がある。

 

・取締役会がある場合とない場合では、株主総会の役割は異なる。

 

・株主総会を開催する際は、議事内容の決定、株主の招集、株主総会の開催、株主総会後の処理という流れに沿って、定められた必要な手順を踏む必要がある。

 

・株主総会には、議決権や必要な書類(計算書類)などについても制約がある。

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