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安全衛生管理とは

安全衛生管理とは

今回は安全衛生管理について説明していきます。

 

この文章を読むことで、「安全衛生管理の概要」「それぞれの担当者の役割と必要資格」について学ぶことができます。

 

安全衛生管理の概要

 

労働者が会社に労働力を提供するということは、勤務時間中は会社に拘束されることを意味します。

 

よって、会社の労働環境によっては、労働者の心身の健康に大きな影響を与える恐れがあります。

 

このため、労働契約法では「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定めています。

 

そして、労働安全衛生法により、労働者の安全や健康の確保、快適な職場環境の形成などについてが具体的に規定されています。

 

労働環境の悪化はメンタルにも影響を与えると考えられることから、会社は物理的環境とメンタルヘルスの両面を考えて安全に配慮しなければなりません。

 

ここでは、法令によって会社はどのように安全衛星管理を行うべきとされているのかを理解していきましょう。

 

【例題】
スマートフォンのアプリ開発を基盤事業とするZ社の法務担当者であるA君は、現在法務担当部署の立ち上げと並行して社内制度の見直しを行っています。

 

そして、その過程で開発部門の数名の社員の残業時間が非常に長いことに気づきました。その中にはA君の友人のB君も含まれていました。

 

A君はB君が昔から残業時間が多かったことを思い出し、声をかけてみました。

 

A君:
「最近残業が多いみたいだね。大丈夫?」

 

B君:
「まあこの仕事で残業が多いのは仕方がないけど、確かに特に最近は忙しいなあ。時々眠れなくなったり頭痛がしたりするんだ。まあ大丈夫だとは思うけどね。」

 

A君:
「先月は残業が100時間を超えたみたいだけど、産業医と話したりした?」

 

B君:
「産業医?話してないよ。特に何も言われてないしね。」

 

A君はいろいろと考えながら、B君に無理しないようにと言い、自席に戻りました。

 

本来であれば長時間残業などで社員の健康が懸念される場合、会社は産業医と連携して社員の健康状態を管理する必要があります。

 

しかし、その徹底はされていないようでした。

 

A君は長時間の残業という根本的な問題も含め、ますます社内制度をしっかりしたものとする必要性を感じました。

 

【解説】
会社は労働衛生管理法によって、以下の担当者を選任することを義務付けています。

 

1.総括安全衛生管理者

 

2.安全管理者

 

3.衛生管理者

 

4.産業医

 

5.安全衛生推進者

 

6.衛生推進者

 

上記の担当者は、業種や規模によって必要不必要は異なります。

 

詳細は割愛しますが、大まかには総括安全衛生管理者と安全管理者はある一定の業種かつ一定の規模の事業場で選任しなければならず、衛生管理者と産業医は50人以上の事業場では必ず選任しなければなりません。

 

安全衛生推進者と衛生推進者については、10人以上50人未満の事業場で選任しなければならず、安全衛生推進者はある一定の業種で、衛生推進者はそれ以外の業種で必要です。

 

なお、ここで注意しなければならないのが、必要な単位が会社ではなく事業場であるということです。

 

事業場とは、「業務を行っている1か所」という意味です。

 

例えば、製造業を営むA社があったとします。

 

A社は東京都心部に管理機能を持つ社員が300名の本社があり、東京の郊外に社員が300人の支社aという工場を、大阪に社員が100人の支社bという工場を持っています。

 

つまり、A社は3か所に分散しているということです。

 

この場合、A社というくくりで考えると、A社の中に本社、支社a、支社bがすべて入ります。

 

しかし、事業場というくくりで考えると、本社と支社a、支社bは別の事業場ということになります。

 

そして、会社単位でいうとA社は製造業という業種になりますが、事業場単位でいうと本社がその他事業、支社aと支社bが製造業ということになります。

 

このような状況の中で、本社と支社a、支社bそれぞれがその業種と規模により担当者を選任しなければならないということなのです。

 

まとめると、A社に必要な担当者は以下のようになります。

 

安全衛生管理とは1

 

A社の場合は、本社と支社aでは社員数は同じでも業種が異なるため、必要な担当者が異なることがわかります。

 

また、支社aと支社bは同じ業種ですが、社員数が異なるためにやはり必要な担当者は異なっています。

 

それぞれの担当者の役割と必要資格

 

ではここで、1〜6のそれぞれの役割と、担当者に選任されるための必要資格について理解していきましょう。

 

1.総括安全衛生管理者

 

総括安全衛星管理者は安全管理者や衛生管理者を統括し、指揮するとともに、主に以下のことを行います。

 

・労働者の危険や健康障害の防止

 

・労働者の安全や衛生のための教育

 

・労働者の健康のための措置

 

・労働災害の原因調査並びに再発防止

 

総括安全衛生管理者に選任されるために必要な資格は以下の通りです。

 

・事業場内で、その事業の実施を実質的統括管理する権限及び責任を有する者(工場長など)

 

2.安全管理者

 

安全管理者は主に以下のことを行います。

 

・設備などに危険がある場合の防止の措置

 

・安全装置などの定期的点検

 

・作業の安全に関する教育及び訓練

 

・発生した災害の調査並びに対策の検討

 

・消防・避難の訓練

 

安全管理者に選任されるために必要な資格は以下の通りです。

 

・理系の課程を修めて大学、高等専門学校を卒業し、2年以上産業安全の実務に従事し安全管理者選任時研修を終了した者

 

・理系の学科を修めて高等学校を卒業し、4年以上産業安全の実務に従事し安全管理者選任時研修を終了した者

 

・労働安全コンサルタントの資格を有する者

 

・その他厚生労働大臣が定める者 

 

3.衛生管理者

 

衛生管理者は主に以下のことを行います。

 

・健康に異常のある労働者の発見と対処

 

・作業環境に関する衛生調査

 

・作業条件や施設などの衛生上の改善

 

・労働衛生保護具、救急用具等の整備

 

衛生管理者に選任されるために必要な資格は以下の通りです。

 

・第一種衛生管理者免許所有者、第二種衛生管理者免許所有者、衛生工学衛生管理者免許所有者、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなど
(業種によって異なります。)

 

4.産業医

 

産業医は主に以下のことを行います。

 

・労働者の健康を保持するための措置

 

・作業環境の維持管理

 

・衛生教育

 

・労働者の健康障害の原因調査並びに再発防止

 

・面接指導

 

・作業場の巡視

 

産業医に選任されるために必要な資格は以下の通りです。

 

・次のいずれかに当てはまる医師

 

・日本医師会の産業医学基礎研修、産業医科大学などでの産業医学基本講座の修了者

 

・労働衛生コンサルタント(保健衛生)

 

・労働衛生に関する科目の大学教授、準教授または常勤講師、あるいはその経験者

 

5.安全衛生推進者 6.衛生推進者

 

安全衛生推進者と衛生推進者は主に以下のことを行います。

 

・労働者の危険や健康障害の防止措置

 

・労働者の安全・衛生のための教育

 

・健康の保持増進のための措置

 

・労働災害の原因調査並びに再発防止対策

 

なお、衛生推進者は、このうちの衛生面を担当します。

 

安全衛生推進者と衛生推進者に選任されるために必要な資格は以下の通りです。

 

【次のいずれかに当てはまるもの】

 

・大学または高専卒業後、1年以上安全衛生の実務に従事している者

 

・高等学校または中等教育学校卒業後に3年以上安全衛生の実務に従事している者

 

・5年以上安全衛生の実務に従事している者

 

・安全衛生推進者養成講習・衛生推進者養成講習を修了した者 

 

・安全管理者・衛生管理者・労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタントの資格を有する者

 

なお、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医は所轄の労働基準監督署へ届け出る必要がありますが、安全衛生推進者と衛生推進者には届け出の義務はありません。

 

まとめ

 

・会社は労働契約法および労働安全衛生法により、労働者の安全や健康を確保する義務がある。

 

・労働衛生管理法では、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医、安全衛生推進者、衛生推進者を業種や規模によって事業場ごとに選任しなければならない。

 

・それぞれの担当者は役割や資格が決まっており、かつ労働基準監督署への届け出が必要な場合もある。

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