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実用新案権の仕組みを理解する

実用新案権の仕組みを理解する

今回は実用新案権の仕組みについて説明していきます。

 

この文章を読むことで、「実用新案権の要件と審査」「実用新案権で気をつけること」について学ぶことができます。

 

実用新案権とは

 

実用新案権は、特許権と比べると比較的簡単な小発明を保護する権利です。

 

実用新案法には、「物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする」とあります。

 

実用新案権は、特許権のような「発明」ではなく、「考案」を保護することで産業の発達に寄与するために定められた権利です。

 

なお、実用新案法では、考案の定義を「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるとしています。

 

発明と考案の違いは、進歩性があるかどうか、あるいは高度であるかどうかということになりますが、その違いに関する明確な定義はありません。

 

考案の中でも、「保護する価値のある物品の形状、構造又は組合せ」が持つ権利が実用新案権です。

 

【例題】
スマートフォンのアプリ開発を基盤事業とするZ社の法務担当者であるS君とT君は、特許と知的財産権について話をしていました。

 

S君:
「知的財産権ってさ、とりあえずは特許権と商標権、著作権くらいの基礎知識があればいいのかなあ。」

 

T君:
「そうだなあ。確かにその3つはよく聞くし、まずは知らなければいけない権利かもしれないね。」

 

S君:
「それにしても実用新案権ってのがよくわからないんだよね。特許と似てるっていうけど、いまいちイメージがわかないんだ。」

 

T君:
「確かにね。実用新案権は手っ取り早く取れそうなイメージはあるけど、実用新案権をめぐるニュースってのもあまり聞かないね。」

 

すると、そこにUさんがやってきて言いました。

 

Uさん:
「確かに実用新案権は特許に比べるとマイナーなイメージのある権利ですね。おそらく専門家以外で具体的に理解している人はほとんどいないでしょう。実際実用新案権の出願件数は伸び悩んでいて、国も何とか制度を活用してほしいと考えているようです。

 

ただ、例えば特許を取るまでの技術がない中小企業などにとっては、実用新案権が大きな武器となることもあり得ます。そのために権利の存続期間は、かつては6年だったのが10年に延期されたりとテコ入れがされています。

 

少なくとも実用新案権の概要を理解しておくことは無駄ではありません。今度時間があるときにみんなで勉強会でもできるといいですね。」

 

S君とT君は今度ぜひやりましょうと答えました。

 

【解説】
例題のS君が言っていたように、実用新案権はそのイメージがわきにくいという人が多い権利です。

 

そして、Uさんが言っていたように出願件数も多いとは言えず、「出願しにくい」権利とも言えます。

 

しかし、実用新案権には特許まではいかない考案、あるいは小発明を保護する目的があります。

 

実用新案権の要件と審査

 

上述したとおり、実用新案権は物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護を目的としています。

 

つまり、「物品の形態に関するものがその要件になる」ということです。

 

よって、方法などの考案については実用新案権にはなりません。

 

 

そして、実用新案権を出願すると方式要件の審査基礎的要件の審査が行われます。

 

方式要件の審査は特許とほぼ同様で、書類の形式面で不備がないかどうかが審査されます。

 

基礎的要件の審査は、出願が物品の形状、構造又は組合せに関する考案であるかということが審査されます。

 

もし方式要件、基礎的要件に問題がなく、公序良俗に反していなければ登録がなされます。

 

 

ここで気をつけなければいけないことは、実用新案権の場合は特許のような「実体審査はない」ということです。

 

実用新案権では、例えば新規性に関する審査は行われません。

 

よって、仮にこれまでに同様の実用新案が登録されていても、その確認が行われずに登録されてしまうことになるのです。

 

このため、実用新案権は無審査主義と呼ばれることもあります。

 

この点が実用新案権は取得しにくいとされる理由の一つとなっています。

 

出願した実用新案に、「本当の意味で権利があるかどうか」がわからないのです。

 

実用新案技術評価書

 

上述したように、実用新案権は登録されていても、実は他社あるいは他人の実用新案権を侵害している可能性があります。逆に、他社あるいは他人によって侵害されている可能性もあります。

 

これを回避するための手段が、実用新案技術評価書です。

 

実用新案技術評価書は、「特許庁に申請して評価してもらうことで、その実用新案が実質的に有効であることを確認することができる」というものです。

 

例えば、他社が自社の実用新案権を侵害していると考えた場合、特許庁に実用新案技術評価書の発行を申請します。

 

そして、実用新案技術評価書で自社の実用新案権が正当であると認められた場合は、その評価書を他社に送って警告することで、権利の差止めや損害賠償の請求を行うことができるようになります。

 

実用新案権の場合は、この「評価書の送付」が警告を行う条件になっています。評価書がない限りは警告ができないということです。

 

なお、実用新案技術評価書は誰でも発行を申請することができます。

 

実用新案権の意味

 

実用新案権は、無審査主義や、権利の有効性を確認する際には必ず実用新案技術評価書が必要になるなど、必ずしも使いやすいわけではありません。

 

このためにその出願が低調となっているということができます。

 

そして、実用新案権は「意味のない権利」であるという考え方もあります。

 

しかし、実用新案権が設定されている意味として、以下の2点を挙げることができます。

 

1.中小企業の知的財産を保護するため

 

まず1つ目にあげられるのは、中小企業の知的財産を保護するという意味です。

 

例えば食品加工の機械などは、食品に合わせてその形状を考慮することにより作業効率が劇的に変化するということがあります。

 

そのような機械は、いわゆる「ニッチ」な市場を得意とする中小企業が開発することが多くなっています。

 

しかし、一方でそのような技術は「高度」と認められないことが多く、特許を取得することができないケースが大半です。

 

もし、そのような小発明に何の権利も与えられなければ、すぐに大企業が圧倒的な製造能力を持って参入し、安価な製品を作り上げてしまいます。

 

そうすると、中小企業はその技術と市場を大企業に奪われ、生きる道がなくなってしまいます。

 

よって、そのような中小企業を守るために、実用新案権は設定されているということができます。

 

2.迅速に権利を与えるため

 

特許を取得できるほどの発明であれば、その発明は比較的長期に渡って有効になると考えられます。

 

しかし、小発明は流行の波などによって短期間で廃れることも珍しくはありません。

 

例えば、おにぎりの画期的な包装方法を考えた会社が、その形状について実用新案権を出願したとします。

 

そして、その包装は簡単でかつ消費者が開けやすいために、コンビニなどで急速に採用されるであろうと考えられるとします。

 

しかし、この際に実用新案権の取得に時間がかかるようだと、もしかしたら次に新たなおにぎりの包装が考案されるかもしれません。

 

実用新案権取得までにかかる時間が長ければ、すぐに次の考案に取って代わられてその考案は日の目を浴びずに終わってしまうかもしれません。

 

特に近年はあらゆる分野において、競争は激しくなっています。

 

「できる限り時間をかけずに権利を与え、そのような考案を守るべき」という考えから、実用新案権があり、かつ無審査主義になっているのです。

 

実用新案権で気をつけること

 

最後に、実用新案権で気をつけるべきことを解説していきます。それは以下の2点となります。

 

1.実用新案権の有効性は自分で確かめる

 

上述したように、実用新案権は無審査で登録されます。

 

そのため、権利に有効性があるかどうかは、実用新案技術評価書がなければ確認できません。

 

そして、実用新案技術評価書はあくまでも申請があって初めて発行されるものです。

 

特許とは異なり、自力でその有効性を確認しなければならないと考えましょう。

 

2.常に他者の動向に自分で目を配る

 

実用新案権は特許とは違い、後発の技術でもスピードが優先されて登録されてしまいます。

 

このため、「自社の実用新案権が侵害されていないか否かの判断も自力で行わなければならない」ということになります。

 

常に他者の動向に目を配り、侵害されていないかどうかを確認することが必要です。

 

 

実用新案権は特許とは異なり、どちらかというと自律を求められた権利ということができます。

 

そこをしっかりと理解しておきましょう。

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