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「儲け」とは

【儲けとは】
会社を経営していくうえで、最も欠かせないことは、「利益をあげる」ということです。

 

そして利益をあげるということは、つまりは「会社が儲かる」ということです。

 

事業を行い、様々な諸費用を支払って最後に残る金額が「利益 = 儲け」です。

 

そして儲けを出すためには、売上を伸ばす、費用を抑えるなどの様々な方法があります。

 

しかし、この「儲ける方法」には実は決まったセオリーはありません。

 

例えば同じ方向性を持っているはずの同じ会社の中ですら、儲け方を議論すると意見が衝突することもよくあります。

 

どのように儲けるかについては、同じ会社ではあってもその部署などによって、考え方に違いがあるためです。

 

そこで、ここでは儲けはどのように判断できるかということを、ファイナンスの視点から多面的に考えてみましょう。

 

 

【収益性で考える儲け】
儲けを増やすということは、一般には「利益を大きくする」ということです。

 

しかしただ利益が大きいといっても、その利益には「利益率が高い」、「利益額が大きい」、「ROI(投資収益率)が大きい」など、様々な考え方があります。

 

そしてこれらはどれが一番良いとは一概に言うことができず、色々な要素を総合的に考える必要があります。

 

それが「収益性を考える」ということです。

 

ここでいくつか例を挙げてみましょう。

 

自動車部品製造会社であるS社では、近年の市場変化に対応するために新製品の開発を考えています。

 

現時点で新製品は製品A、製品B、製品Cのいずれかに絞られ、会社規模の問題などから、このうちの1製品だけが実際に製造できることになっています。

 

まず、製品A〜Cの収益予想を見てみます。
(以下は完全に製品製造に関する収益にスポットを当てています。)

 

儲けとは

 

これを見ると、売上高、営業利益や当期純利益、初期投資などが異なっていることがわかります。

 

ではこの製品AからCではどれが最も収益性が高いと言えるでしょうか?

 

まず、最もポピュラーな「売上高当期純利益率」で考えてみましょう。

 

売上高当期純利益率の計算式は「当期純利益÷売上高」です。

 

≪売上高当期純利益率≫
製品A 39%
製品B 32.5%
製品C 21.67%

 

売上高当期純利益率を考えた場合は、利益率の高い製品Aが最も収益性が高いと考えることができます。

 

次に、「当期純利益額」で考えてみましょう。

 

≪当期純利益額≫
製品A 19.5
製品B 32.5
製品C 65

 

当期純利益の額を考えた場合は、売上高の大きい製品Cが最も収益性が高いと考えることができます。

 

最後に、「初期投資に対する当期純利益の割合(ROI:投資収益率)」で考えてみましょう。

 

なお、投資収益率とは事業を行う際、事前に行った投資に対して、どの程度の収益をあげられているかを見る指標で、ここでは「当期純利益÷初期投資」で計算しています。

 

≪ROI≫
製品A 19.5%
製品B 32.5%
製品C 21.67%

 

ROIを考えた場合は、収益率の高い製品Bが最も収益性が高いと考えることができます。

 

ここで、それぞれの指標ごとに収益性の高い製品をまとめてみましょう。

 

・売上高当期純利益率→製品A
・当期純利益額→製品C
・ROI→製品B

 

上記は単純化した例ですが、このように「どの指標を見るか」によって収益性の高い製品が異なってくることがわかります。

 

 

【会計上の収益性の落とし穴】
上記の中で言うと、売上高当期純利益率や当期純利益額は損益計算書から判断できます。

 

しかしROIは、会計上の数値だけを見ても判断できない場合があります。

 

貸借対照表には資産の増加に伴う投資額が記載されますが、例えばその投資が自己資本で行われたか、負債で行われたかによってリターンは異なる結果になります。

 

そしてそのリターンの予測を貸借対照表からすぐにできるかというと、ほぼ不可能です。

 

ファイナンスの観点から、自己資本コスト(株主資本にかかってくる配当などのコスト)や負債コスト(負債にかかってくる支払利息などのコスト)などを計算しなければならないのです。

 

また、会計には会計基準というものがあり、会社がどのような会計基準を採用しているかによって、会計上の利益は異なったものとなります。

 

その最も代表的な例は、減価償却費です。

 

減価償却費の計算を定額法で行っているか、定率法で行っているかによって、その年の利益は大きく変わってきます。

 

また、実際にどのくらい会社が儲かったかを計算するには、「キャッシュフロー」を考えることも大切になってきます。

 

キャッシュフローとは、「実際の現金の流れ」という意味です。

 

減価償却費も会計上は費用として計上されますが、キャッシュフローには影響を与えません。

 

キャッシュフローはファイナンスで学ぶ最も重要な概念の一つです。

 

「儲け」という概念は、会計上の利益だけではなくファイナンスの見地からも考える必要があるということを理解し、その上でファイナンスを学んでいきましょう。

 

なお、会計に関する詳しい説明は、当サイトの「アカウンティング(会計)」の項で解説していますので、そちらを参照してみてください。

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