NPV(Net Present Value:正味現在価値)
【NPVとは】
NPV(Net Present Value)とは、日本語では正味現在価値と訳され、事業についての「正味」の現在価値のことを言います。
正味とは、事業にかかるすべてのキャッシュフローの現在価値のことです。
ここで事業を行う場合のキャッシュフローを順番に考えてみましょう。
通常の場合、まずは初期投資を行うことでキャッシュフローはマイナスとなり、その後売上が立ち、出ていくキャッシュフローを入ってくるキャッシュフローが上回ることで初期投資やその他の費用などは回収されていきます。
そしてある一定の時期(例えば5年など)以降のキャッシュフローを個別に計算していくことは困難になることが多いため、それ以降のキャッシュフローは残存価値(ターミナルバリュー)として計算します。
残存価値(ターミナルバリュー)とは、極端にいうと「その事業がいくらで売れるか」ということです。
残存価値は、事業の継続性などによって必ずしもプラスになるとは限らず、0、あるいはマイナスになることもあり得ます。
そしてこれらの事業にかかるすべてのキャッシュフローを現在価値に割り引いたものがNPV、正味現在価値です。
このように、NPVは現在から未来のキャッシュフローのすべて(出ていくキャッシュフローと入ってくるキャッシュフロー)を現在価値に割り引いているという意味で、「正味」と呼ばれているわけです。
なお、現在価値に割り引くための割引率は、現在価値を学習したときに学んだ通り、資本コスト(WACC)となります。
そしてNPVは、DCF(discounted cash flow)法とも呼ばれます。
DCF法はディスカウントキャッシュフロー、つまりキャッシュフローを現在価値に割り引いたものという意味です。
このDCF法にはNPVの他にもAPV、EVAやIRR、PIなどという手法があります。
(これらについては後述します。)
NPVは経済的価値計算を行う上でキャッシュフローや現在価値、資本コストなどを総動員して算出する、最も重要かつ基礎となる考え方と言えます。
まずはその概念を知っておきましょう。
【NPVを計算するには】
NPVを計算する際に必要となる数値は上述した通り、以下の3つです。
1.キャッシュフロー(フリーキャッシュフロー)
2.資本コスト
3.残存価値(ターミナルバリュ−)
そしてこの数値に現在価値という概念を加えることで、NPVは算出できることとなります。
1.キャッシュフロー(フリーキャッシュフロー)
まず必要となるのは、年度ごとのキャッシュフローすべてです。
そしてこの場合のキャッシュフローは、「フリーキャッシュフロー」と呼ばれます。
フリーキャッシュフローとは、事業などの意思決定を行った場合に、各年度のキャッシュによる収入が支出をどの程度上回るかということを表す概念です。
NPVを計算する際は、フリーキャッシュフローは以下のように計算します。
フリーキャッシュフロー = 「NOPAT(税引後営業利益)+減価償却費+運転資本増減(増加はマイナス、減少はプラス)」−「投資費用」
NOPAT(Net Operating Profit After Tax)とは考え方はいくつかありますが、一般には税引後営業利益と訳されます。
そしてこのNOPATを軸に、現金支出のない減価償却費を加え、運転資本の増減を加減算します。
以上が入ってくるキャッシュフローです。
出ていくキャッシュフローは投資費用です。
これでその年度に入ってくるキャッシュフローと出ていくキャッシュフローの「差」を計算できます。
2.資本コスト
資本コストは、WACC(加重平均資本コスト)です。
3.残存価値(ターミナルバリュ−)
残存価値は、事業の期間が短い場合などは便宜的に0に設定することが多く、半永久的に続く場合は永続価値の考え方を使ったり、一般的な相場を使用することが多くなっています。
フリーキャッシュフローと残存価値を資本コストで現在価値に割り引くことで、NPVが計算できるということです。
≪NPVの計算式≫
NPVを計算する際の計算式は以下です。
NPV = (現在のFCF)+((1年後のFCF)÷(1+r))+((2年後のFCF)÷(1+r)2)+・・・・+((n年後のFCF)÷(1+n)2)
FCF:フリーキャッシュフロー
r:資本コスト
n:事業経過年数
NPVを計算する際に必要なのは、何と言ってもまずはフリーキャッシュフローと資本コストです。
ここではNPVの計算方法を理解し、実際に計算ができるよう準備をしておきましょう。
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