IR(インベスター・リレーションズ)とは
【IR(インベスター・リレーションズ)とは】
特に資金調達を行う際に大切になるのが、IR(インベスター・リレーションズ)です。
IRとは、主に投資家向けの広報活動のことを言います。
例えば決算などの情報を広く開示することです。
そして、IR活動が盛んに行われるのは、主に上場企業です。
上場企業は市場で株式や社債などを購入してもらう必要があるため、広く情報開示を行う必要があるということです。
上場していない会社の場合も、当然債権者や株主などの関係者には情報を開示する必要がありますが、広く一般に情報を伝えるということは行われていないケースが多いようです。
そしてIR活動は、大前提として「投資家などに広く公平に」行わなければなりません。
例えば決算の情報を開示前にある一部の投資家だけに行ってしまうと、その投資家だけがその情報をもとに株式売買などを行ってしまう可能性があるためです。
ではここで、IR活動には具体的にはどのようなものがあるのかを考えていきましょう。
【IR活動の種類】
≪対面式で行うもの≫
対面式のIR活動は、主に業績予想を行うアナリストや機関投資家などに対して行われ、日常的には見えにくい会社の姿勢などを口頭で説明することで、会社の理解を深めてもらうことが主な目的となっています。
対面式で行われるIR活動には、以下のようなものがあります。
1.決算説明会
決算を発表した後に行う説明会です。
決算のハイライトや今後の方向性などが会社から説明され、会社によっては説明会資料をホームページなどで公表したり、説明会そのものを動画で中継したりすることもあります。
2.スモールミーティング
スモールミーティングとは、決算説明会のような比較的大きな規模とは異なり、少人数のアナリストなどに会社説明などを行うものです。
説明会は会社からの説明が中心となりますが、スモールミーティングは少人数であるため、経営陣や場合によっては現場の担当者などに直接質問をすることができます。
このような対面式のIR活動は、主にアナリストや機関投資家などに行われることが多く、アナリストはこのようなIR活動を通じて会社の株式に関する独自の判断を行い、投資家などに伝えています。
≪電子的に行うもの≫
近年多くなっているのが、ホームページなどで行う電子的なIR活動です。
電子的なIR活動はすべての投資家に同じ情報を即座に提供できるため、例えば新製品情報をプレスリリースのような形で告知することによって幅広く会社を理解してもらうことができるなど、様々な利点があります。
また、上場企業については、情報の「適時開示」が義務付けられています。
適時開示とは、決算情報などの株価に影響を与えると考えられる情報で、上場企業はそのような情報は速やかに証券取引所に開示します。
そして証券取引所は、その情報を即座に電子的に公開しています。
【IR活動の注意点】
IR活動は様々な投資家に適正な情報提供をするという意味で非常に大切なものです。
しかしIR活動を行う際は、特に以下のことに注意する必要があります。
それは、すべての投資家に対して公平に情報提供を行うということです。
一部の投資家に未公開情報を伝えてしまうことは、インサイダー取引を招く可能性があるためです。
インサイダー取引とは、主に会社関係者や株価に影響があると思われる未公開情報を知ったものが、情報公開前に株式取引を行うことです。
このような行為は法律で禁止されているため、IR活動で開示する情報にはくれぐれも留意する必要があります。
IR活動を行う際はまずは公平であることを前提として、資金調達や会社の公正な評価を行ってもらうために必要なものであると認識し、すべての情報についてわかりやすく伝え、会社の理解を深めてもらうことを心がけるべきであると言えるでしょう。
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