資金調達方法(負債と自己資本) その2
【資金提供者が確保できるかどうか、検討する】
どのような方法で資金を調達するにしても、資金の提供者がいなければ、資金調達はできません。
よって次に必要なことは、資金提供者が確保できるかどうかを検討するということです。
例えば将来に備えて自己資本を増強したいと考えた場合、株主となってくれる投資家や会社がいなければ調達はできません。
資金を「提供する側」からすると、これまで学んできたようにそれは「リスクを取る」ということになるので、そのリスクに見合うリターンを要求することになります。
よってこの場合は、会社の事業プランを理解してもらい、賛同して出資してくれる人を探す必要があります。
負債によって調達する場合も同様です。
資金を貸してくれる金融機関があるかどうかを考える必要があります。
そして貸し手に対して例えば経営者自らが保証人となったりすることが必要となるケースもあります。
当り前ではありますが、資金調達はあくまでも資金の出し手がいなければできないということです。
なお、小規模な会社の場合は、例えば親族から資金を提供してもらうなどの手段もあり、特に創業期の会社で大規模な資金が必要ではない場合はそのようなケースも多くなっています。
あらゆる視点で資金提供者の確保を検討する必要があります。
【資金調達方法を決定する】
次に、資金の調達方法についてある程度具体的な知識を身につけましょう。
資金の調達方法は、大きく分けて2つあります。
1.負債による調達
2.自己資本による調達
大まかには、1の負債(借り入れ)による調達は間接金融、2の自己資本による調達は直接金融と呼ばれています。
そして一般的な会社の資金調達の大半は、1の間接金融で行われています。
間接金融とは、金融機関などを通して間接的に資金を調達することです。
そして直接金融とは、文字通り「直接」投資家などから資金を調達することです。
直接金融は、会社にある程度の信用や成長力などが必要なため、特に中小企業の資金調達は間接金融で行われるのが大半です。
1.負債による調達
では負債による資金調達手段について学びましょう。
負債は、以下の3つの調達手段があります。
a.金融機関からの借り入れ
b.社債の発行
c.コマーシャルペーパー
それぞれ詳しくみていきましょう。
a.金融機関からの借り入れ
まずは金融機関からの借り入れです。
借り入れにも様々な手段があり、例えば民間の銀行から借り入れる、政府系の金融機関から借り入れるなどの方法があります。
また、制度融資などと呼ばれる、地方自治体が行っている融資制度などもあり、その種類は多様です。
そして例えば、上場企業や大企業などは比較的民間の金融機関からの融資(プロパー融資)を受けやすいと言えますが、小規模な会社や創業間もない会社などは民間の金融機関から融資を受けることが難しい場合も多く、政府系金融機関から融資を受けたり、制度融資を使ったりするケースが多くなっています。
借り入れは調達先が見つかれば比較的手間をかけることなく行えるため、もっともメジャーな調達方法です。
b.社債の発行
社債とは、会社が金融機関などを使わずに、投資家などから直接資金を借りるために発行される債券です。
借り入れが間接金融だったのに対し、社債は負債の調達でも直接金融による調達方法です。
よって社債が発行できるのは、ある程度信用力があり、投資家に認知されている会社に限られる傾向にあります。
また、社債の利率は格付けなどによって変わり、格付けが高い会社は安全性がある程度高いと考えられるために低くなり、格付けが低い会社は安全性が低いと考えられるために高くなります。
c.コマーシャルペーパー
コマーシャルペーパーはCPとも呼ばれ、社債に似たものですが、主に短期の資金調達を行うために発行されます。
コマーシャルペーパーもその利率は社債同様、格付けなどによって決まります。
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