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株主に報いるには

【株主に報いるには】
前回は利益を株主に還元することは、ファイナンスの見地から見ると企業価値を増加させることにはならないということを学びました。

 

では会社が株主である投資家に報いるには、どのような経営を行えばよいのでしょうか。

 

 

【株主に報いる経営とは】
会社が株主に報いるための経営手段は、「主たるビジネス」と「主たるビジネス以外」の2つに分けて考えることができます。

 

 

≪主たるビジネス≫
まず、主たるビジネスで株主に報いる方法は、1つしかありません。

 

それは、「より多くのキャッシュフローを稼ぐこと」です。

 

既存事業、あるいは新事業で確実にキャッシュフローをプラスにしていくということです。

 

非常に単純で当たり前と思われることですが、これは逆に言うと、事業で株主に報いるための簡単な方法はないということになります。

 

例えば既存事業であればその事業の採算性を見直し、採算性の悪い事業から撤退したりテコ入れを行うことなどが考えられます。

 

また新事業であれば、まずこれまで学習してきたようにNPVなどの根拠を持って参入することが必要です。

 

そして計画よりも好調に推移し、かつ追加投資を行うことでさらにNPVが増加すると考えられるなどの場合は、時期を逃さずに追加投資を行って事業規模を拡大するなどの対処を行うことが必要です。

 

しかし、この際に気をつけなければいけないことは、「NPVだけには頼らない」ということです。

 

よくあるケースは、現在の事業の市場規模が安定しており、獲得するキャッシュフローも安定してきているときに、「経験のない事業に無謀な投資を行う」というものです。

 

経験のない事業について導かれたNPVは、経験がない分だけ既存事業について計算したNPVよりもその信憑性が低い場合が大半です。

 

安定したキャッシュフローを効率よく運用することは会社の責務とも言えますが、特に経験のない事業については様々なアクシデントが発生するということを常に認識しなければなりません。

 

そして既存事業が順調な場合は、どうしてもその安心感から気づかぬうちに経営が雑になってくることが多くなります。

 

新事業も「うまくいくだろう」と考えてしまったり、NPVの計算が甘くなってしまうことがあるのです。

 

よって、計画はシビアに立て、かつ計画通りにいかない場合は撤退時期を決めておく、あるいはあらかじめその場合のシナリオを考えておくなどのリスク管理も大切になってきます。

 

株主に報いるためには、事業の定量的な管理と定性的な管理を両立させ、しっかり行うことが必要であるということです。

 

 

≪主たるビジネス以外≫
主たるビジネス以外で株主に報いる方法は、まず最適資本構成の見直しを挙げることができます。

 

最適資本構成に絶対的な基準はありませんが、例えば負債が多くて今後の資金繰りなどが懸念されるような場合には、利益を負債の返済に充てることで会社の財務は安定し、株主に安心感を与えることができます。

 

逆に負債が少なく、かつ事業が安定している場合などは、逆に負債を増やしてその資金で自社株買いを行うことで、財務レバレッジが働いて節税効果が生まれ、企業価値は高まることになります。

 

自社株買い自体は企業価値に影響を与えませんが、負債を使って行うという手段を採用することで、結果的に株主に報いるということになるのです。

 

そして上述した「経験のない事業に無謀な投資を行う」ことを避けるための方策の一つとして、投資資金を株主に配当や自社株買いなどの形で還元することを挙げることができます。

 

成熟した事業を持つ会社は、その安定性が評価されることが多いため、可能性の低い投資を行うのであれば投資家に利益還元という形でシグナルを送るほうが、好感を持たれることが多くなります。

 

また、非事業資産の見直しや有効活用なども、効率性という観点から見た株主に報いるための一つの方法です。

 

現在の会社の市場でのポジションや成熟性などによって、株主に報いるための手段は異なってきます。

 

「会社の状況にあった経営」を行うことが何より大切であると認識しておきましょう。

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