経営戦略とファイナンス その1
【経営戦略とファイナンス】
これまで、事業や企業価値の算出について、ファイナンスという定量的な視点から学んできました。
例えばNPVやリアルオプションなどについては、それぞれの特徴などについても考えてきました。
そして大前提として、それらの計算には将来のキャッシュフロー予測がありました。
それらのキャッシュフロー予測は、NPVであればプラスになれば事業に着手するという意思決定が行われ、リアルオプションであればプレミアムとの比較を行うことで、意思決定を行いました。
そのような意味では、リアルオプションはNPVの弱点を「未来を流動的に考える」ことで補完する考え方と言えます。
しかし、忘れてはいけないのは、これらの数字はあくまでも「予想である」ということです。
明日の株価が誰にもわからないのと同じように、事業でどれだけ稼げるかは誰にもわかりません。
そこで必要となってくるのが、その予想が「経営戦略」といかに関連付けて考えられているかということです。
経営戦略に基づいた未来予測は、定性的な観点からもその「根拠」を持つことになり、説得力が増すと考えられるのです。
そこでここでは、経営戦略とファイナンスのかかわりについて考えてみましょう。
【経営戦略とファイナンスとの関わり】
まず、ファイナンスの定量的数値を根拠あるものとするための具体的な方法を考えてみましょう。
≪フレームワーク≫
まず、最もその基礎となるのが、フレームワークを使った定性的な事業計画です。
フレームワークはマーケティングを考える際になくてはならないものですが、その中でも自社の基本的なポジションを確認するための3C分析やSWOT分析、マーケティングミックスなどと呼ばれる4Pや4Cなどはファイナンスでの定量的な数字を考える際の根拠になりえるものです。
まず3C分析ではCompany(自社)、Customer(顧客)、Competitor(競合他者)を分析します。
そしてSWOT分析は、自社のStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)を分析します。
そして手法は様々ですが、一般的にはこれらの分析結果から、4P、4Cによる具体的な戦略を検討していきます。
4Pとは、会社から見たProducts(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)を指します。
そして4Cとは、4Pを消費者目線からとらえたもので、Customer value(顧客が得られる価値)、Cost(顧客にかかるコスト)、Convenience(顧客の利便性)、Communication(顧客とのコミュニケーション)を指します。
現在は競争の激化や消費者志向変化の高速化などにより、会社が「売れるだろう」と考えるものを作るのではなく、消費者目線で事業を行っていくことが重視されているため、特に4Cの考え方が重要視されています。
フレームワークの詳しい解説は当サイトの「マーケティング」や「ストラテジー(経営戦略)」で詳しく解説しておりますので、ここでは省略しますが、このように定性的な分析はファイナンスの数値を導くための大きな根拠となり得るものです。
≪オプション≫
次に、オプションの考え方を採用することも一つの方法です。
例えば上述したリアルオプションで流動的に捉えた計画を状況により様々な手法で活用することで、計画はいくつもの選択肢を持つことになります。
・撤退
投資を行ってもそれがうまくいかない場合に、撤退の際の段取りをあらかじめ決めておくというオプションです。
ただ撤退するということではなく、その具体的対応策を決めておくことで実際に撤退するとなった時の行動をスムーズにすることが可能になります。
・延期
事業の進捗状況、あるいは不確実性の高い事業を、「延期」するというオプションです。
不確実性がある程度解消されてきた段階で、事業参入の意思決定を行うというものです。
・拡張
まずは投資の規模を限定し、ある程度の勝算が見込めるようになった段階で、投資を拡張するオプションです。
この手法は初期投資を抑えられることから、非常に好まれやすいオプションの手法と言えます。
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