永続価値を理解する その2
【成長永続価値】
永続価値には、これが一定の割合で成長した場合の永続価値を求める成長永続価値という考え方もあります。
永続価値がキャッシュフローを一定と考えるのに対して、それが成長すると見込まれる場合の考え方です。
例えば1年後に200万円のキャッシュフローが発生し、それが毎年2%ずつ成長すると見込まれる事業の永続価値を考えてみます。(資本コストは10%です。)
この場合、それぞれの年に発生するキャッシュフローは以下のようになります。
1年後 200
2年後 200×1.02 = 204
3年後 200×1.022 = 208.08
4年後 200×1.023 = 212.2416
・
・
・
これを永続価値の計算に置き換えてみましょう。
PV = (200÷1.1)+((200×1.02)÷1.12)+((200×1.022)÷1.13)+((200×1.023)÷1.14)・・・・
そしてこれを一般化すると、以下のようになります。
なお、ここでは成長率をgとします。
(D式)
PV = (CF÷(1+r))+((CF×(1+g))÷(1+r)2)+((CF×(1+g)2)÷(1+r)3)+((CF×(1+g)3)÷(1+r)4)・・・・
この場合もこのままだと永遠に計算し続けなければいけないことになってしまいます。
そこでここでも式を簡単にしてみましょう。
ここでは、D式に「(1+r)÷(1+g)」をかけてみます。
(E式)
((1+r)÷(1+g))PV = ((1+r)÷(1+g)(CF÷(1+r))+((1+r)÷(1+g)((CF×(1+g))÷(1+r)2))+((1+r)÷(1+g)((CF×(1+g)2)÷(1+r)3))+((1+r)÷(1+g)((CF×(1+g)3)÷(1+r)4))・・・・
↓
((1+r)÷(1+g))PV = (CF÷(1+g))+(CF÷(1+r))+((CF×(1+g))÷(1+r)2)+((CF×(1+g)2)÷(1+r)3)・・・・
そしてE式からD式を引いてみます。
(E式−D式)
((1+r)÷(1+g))PV−PV = (CF÷(1+g))
↓
(((1+r)−(1+g))÷(1+g))×PV = (CF÷(1+g))
↓
((r−g)÷(1+g))×PV = (CF÷(1+g))
↓
(r−g)×PV = CF
↓
PV = CF÷(r−g)
これで計算式がすっきりとしました。
つまり、現在価値(成長永続価値)は、キャッシュフローを(割引率−成長率)で割ることで計算できます。
では実際に計算してみましょう。
ここでは、CF = 120、r = 0.1、g =0.02とします。
PV = 120÷(0.1−0.02) = 1500
1年後に120万円のキャッシュフローが発生し、それが毎年2%ずつ成長すると見込まれる事業の永続価値は、1500万円になります。
成長しない場合の永続価値は上で計算したように1200万円でしたので、その価値が成長する分大きくなっていることがわかります。
なお、成長率が4%、8%の場合は、その永続価値は以下になります。
≪成長率が4%≫
PV = 120÷(0.1−0.04) = 2000
≪成長率が8%≫
PV = 120÷(0.1−0.08) = 6000
成長率が高くなるほど、成長率以上に永続価値は大きくなることがわかります。
株式市場などで会社の成長性が重視されるのは、このことも一つの要因となっています。
永続価値は企業価値の算出などにも使われることのあるファイナンスの代表的な考え方です。
計算式を導く過程は複雑ですが、計算式を覚えてしまうと計算自体は非常に簡単なので、その意味合いとともに理解しておくようにしましょう
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