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回収期間(Payback)法と会計上の収益率 その1

【回収期間(Payback)法と会計上の収益率】
回収期間(Payback)法と会計上の収益率とは何なのでしょうか?

 

まずは下記の例を見てみましょう。

 

 

≪例≫
自動車部品製造会社であるS社に勤めるMさんは、これまでファイナンスを学ぶためにキャッシュフローや現在価値、リスクとリターン、資本コスト、NPVなどについて学んできました。

 

そして事業の経済的価値を考えるには原則として会社が稼ぐことのできる現金、つまりキャッシュフローを基本に考えるということが大前提であると学びました。

 

しかしあるとき、営業部門の担当者と話をしているとき、営業部門担当者からこう言われました。

 

 

「ファイナンスがどういうものか私は知らない。
おそらくは難しい理論を使った確率的に信憑性の高い考え方なのだろう。
ただ、毎日客先に足を運んでいる我々が顧客に対してファイナンス理論を説明できるわけではないし、顧客がそれを理解してくれるわけでもない。
例えば顧客に「この部品は需要が伸びている真っただ中です。だから今組み込んで製品として販売すれば、需要の拡大と共にその投資費用は3年で元が取れて、かつその3年で市場シェアも拡大できることになります。」と説明したほうがわかりやすいんだ。
そこで「この部品は御社の資本コストを上回るキャッシュフローをあげてくれます。」などと言っても誰もわかりゃしない。
難しい理論もけっこうだが、わかりやすさというのもステークホルダーに対する会社の武器になるのではないのかと思うのだが、違うのだろうか?
投資家だって皆がファイナンス理論を理解しているわけではないだろう。
わかりやすさから当社の製品に興味を持つ人が現れるという可能性もあるのではないか?」

 

 

その営業担当者は何気なくMさんに話したようでした。

 

しかしMさんは「そうですね。」と答えただけで反論はできませんでした。

 

そして経済的価値をもう少しわかりやすく考える手法はないのだろうかと思いました。

 

調べてみると、実は比較的簡便な方法で経済的価値を計算できる方法もあるのだということがわかりました。

 

そこでMさんはそれらの手法ではどのように計算を行っているのかを調べてみることにしました。

 

 

【比較的簡単にできる経済的価値評価の指標】
上記でMさんが営業担当者から指摘されたとおり、ファイナンス理論は総じて複雑な考え方です。

 

「何もしなければ目に見えない数字」を導くことで経済的価値を算出し、定量化することがファイナンスの考え方だからです。

 

そして実際に行ってみるとその計算も膨大なものとなり、だからといって100%ファイナンス的に導いた結論が正しいとも限りません。

 

これは企業活動が様々な要素から成り立っていることを考えると、ある意味仕方のないことと言えます。

 

ファイナンスにも営業やマーケティングにも、「唯一の完全な正解」というのは存在しないのです。

 

よって実際には、一部の大企業などを除くと、例えば複雑なNPVなどの手法を常に自社で採用している会社は少数であるとも言われています。

 

ファイナンスは「手間がかかるから外部の専門家が行う」と考える会社も多いというのが実情なのです。

 

よって、当然ファイナンスという見地に立つとより正確性と確実性を求める必要があるのですが、場合によっては「感覚的にわかりやすい」指標が必要な場合も出てきます。

 

今回はそのような場合によく使われる回収期間(Payback)法と会計上の収益率について、その信憑性とともに考えてみたいと思います。

 

 

次のページ 「回収期間(Payback)法と会計上の収益率 その2」

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