MVA(Market Value Added:市場付加価値)
【MVAを理解する】
EVA(Economic Value Added:経済的付加価値)は、NPV、FCFと関連が深いものであるということを学びました。
そして同じようにEVAと関連の深い指標として、MVA(Market Value Added:市場付加価値)というものがあります。
今回はMVAとは何かについて、NPVとEVAそれぞれとの関係から考えてみましょう。
【MVA(Market Value Added:市場付加価値)とは】
MVAとは、EVAと同様スターン・スチュワート社が開発し、同社が商標登録を行っている指標です。
そしてMVAは、一般に以下の式で計算されます。
MVA = (株式の時価総額+負債の時価総額)−(株主資本(簿価)+負債(簿価))
簡単に言うとMVAは、「会社の時価が簿価をどの程度上回っているか」を表す指標です。
時価、特に株式の時価総額は、株価という形で日々市場で取引されて決まるものです。
よって、MVAがプラスの場合は投資家から、「会社には何らかのプレミアムがある」と判断されているということになります。
ではこのプレミアムとは何でしょうか?
【MVAとNPVとの関係】
ここでMVAのプレミアムを理解するために、NPVとの関係について考えてみます。
まず、MVAの計算式は、違う側面から見ると以下になると考えられます。
MVA = (株式の時価総額+負債の時価総額)−(株主資本(簿価)+負債(簿価))
↓
MVA = 企業価値−投下資本
まず、「株式の時価総額+負債の時価総額」はまさに現在市場から評価されている企業の価値を表しています。
市場が効率的(株式市場には、放置された割安な株や極端な高値をつけている株はない)と考えられるならば、原則として企業価値は株式が売買されることで、その価値は常に正確に決まっていると考えられるためです。
そして「株主資本(簿価)+負債(簿価)」は、実際に会社が使っている(投下している)資本のことです。
投下資本は厳密な意味では様々な解釈がありますが、ここでは「株主資本(簿価)+負債(簿価)」を投下資本と考えます。
そして上記はさらに以下のように考えることもできます。
MVA = 市場が決める企業価値−投下資本
↓
MVA = 投資家が会社が今後稼ぎ出すと考えるFCFの現在価値−投下資本
MVAを考えた際の企業価値は、原則として投資家が決めているということです。
ここで、一般的な事業で考えたNPVの計算式は以下です。
NPV = 今後生み出すFCFの現在価値−投資費用の現在価値
これを上記のMVAの計算式と比較すると、企業全体でみるか事業で見るかの違いだけになります。
つまり、MVAは「投資家から見た会社全体のNPV(企業価値)」であるということになり、「MVA = NPV」が成り立つのです。
そして上記のプレミアムとは、会社のNPVであるということになります。
MVAがプラスの場合は、会社が資本コスト(WACC)以上のCFを稼ぐと判断されているということです。
【MVAとEVAとの関係】
次にMVAとEVAの関係について考えてみます。
EVAの計算式は以下です。
EVA = NOPAT−(有利子負債+株主資本)×WACC
ここで、「有利子負債+株主資本」についても、実質的な投資資本と考えることができます。
よって、EVAは以下のように考えることができます。
EVA = NOPAT−投下資本×WACC
そして再度MVAの計算式を考えてみます。
MVA = 投資家が会社が今後稼ぎ出すと考えるFCFの現在価値−投下資本
ここで、この中のFCFについて考えてみましょう。
FCFの計算式は以下です。
FCF = NOPAT+減価償却費+運転資本増減(増加はマイナス、減少はプラス)−投資費用
そして会社が今後事業を安定的に行うと仮定し、現金支出のない減価償却費をすべて次の設備更新に充て、運転資本の増減もないとすると、設備費用は減価償却費と相殺され、FCFは以下のようになります。
FCF = NOPAT
すると、MVAは以下のようになります。
MVA = 投資家が会社が今後稼ぎ出すと考えるNOPATの現在価値−投下資本
そしてNOPATの現在価値は永続価値計算によって以下のように計算できます。
NOPATの現在価値 = NOPAT÷資本コスト(WACC)
よってMVAは以下になります。
MVA
= NOPAT÷資本コスト(WACC)−投下資本
= (NOPAT−投下資本×WACC)÷WACC
= EVA÷WACC
つまり、MVAはEVAの永続価値、つまり各年度のEVAの現在価値の総和(永続価値)であるということです。
これがMVA(市場付加価値)の考え方と計算方法です。
ここではMVAは投資家(市場)から見た会社のNPVであること、EVAの永続価値がMVAになるということを理解しておきましょう。
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