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株価の理論値を理解する その2

【株価の考え方(相対的指標で考える)】
上記の考え方は、会社が今後生み出すフリーキャッシュフローが比較的はっきりわかっている場合です。

 

そのような場合はその会社だけで絶対的に株価を考えることが可能です。

 

しかし実際には、今後会社がどのような動きをするかは流動的な場合が多いと言えます。

 

そのような場合は、株価は相対的な指標で考えられるケースもあります。

 

相対的な指標となる代表的なものには、PERがあります。

 

PERは、株価がEPS(1株当たり当期純利益:当期純利益÷発行済株式数)の何倍になっているかを指す指標です。

 

 

PER = 株価 ÷EPS(当期純利益÷発行済株式数)

 

 

株価が1株あたりの当期純利益に対して何倍になっているかを考え、PERが相場よりも高い場合は割高、小さい場合は割安と考えるということです。

 

そしてここでPERの目安となるのものはいくつかありますが、主に業種全体と対比するなどが考えられます。

 

特に個別の会社の情報がないという場合、属する業種全体のPERと比較し、割高か割安かを判断するということです。

 

これ以外にも相対的な指標には、PBR(株価純資産倍率:株価÷1株当たり純資産)や近年注目されているROE(自己資本利益率:当期純利益 ÷ 自己資本×100)などがあります。

 

ここでPER、PBR、ROEを使って、先ほどのA社の株式を相対的指標で考えてみましょう。

 

A社は発行済み株式数が1,000万株、株価は1,000円です。

 

負債は100億円、株主資本(自己資本)も100億円です。

 

そして今期の当期純利益が10億円だとしましょう。

 

また、A社の同業他社のPER、PBR、ROEの平均は以下の通りです。

 

・PERの平均値 12倍
・PBRの平均値 1.3倍
・ROEの平均値 8%

 

ここでA社のPER、PBR、ROEを計算してみます。

 

まずはPER(株価 ÷EPS)です。

 

PER = 1,000÷100 = 10倍

 

A社は株価が1,000円、EPS(10億÷1,000万 = 100)ですので、PERは10倍です。

 

次にPBR(株価÷1株当たり純資産)です。

 

PBR = 1,000÷1,000 = 1倍

 

A社は株価が1,000円、1株当たり純資産(100億÷1,000万 = 1,000)ですので、PBRは1倍です。

 

最後にROE(当期純利益 ÷ 自己資本×100)です。

 

ROE = 10億÷100億×100 = 10%

 

A社は当期純利益が10億円、自己資本が100億円ですので、ROEは10%です。

 

そしてPER、PBR、ROEには以下の特徴があります。

 

 

・PER:倍率が高いほど割高である。
・PBR:倍率が高いほど割高である。
・ROE:%が高いほど効率よく利益を上げている。

 

 

よってこれらを考えると、A社株は「相対的に見て割安である。」と判断できます。

 

そしてPERで見た場合は12倍である1,200円、PBRで見た場合は1.3倍である1,300円になる可能性があるということになります。

 

また、ROEで見た場合は一概には言えませんが、平均値が8%であるとうことを考えると、やはり上昇する可能性があると判断できます。

 

これらの相対的指標は、キャッシュフローで考えていない、単年度の当期純利益で考えているとなどの問題はありますが、株価の適正価格を知る上で比較的よく知られる方法です。

 

企業価値にはその視点によって様々な考え方があることを理解しておきましょう。

 

 

前のページ 「株価の理論値を理解する その1」

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