OEMとは
今回はOEMについて説明していきます。
この文章を読むことで、OEM生産とODM生産、OEMのメリットとデメリットについて学ぶことができます。
OEM(Original Equipment Manufacturer)について
OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、契約先のブランドによる製造のことを指します。
通常、販売力はあるが生産能力がない場合や生産能力が不足している企業と生産力はあるものの販売力が弱い企業間で相互補完的に行われる取引でした。
昨今では、委託者が製品の詳細設計から製作や組み立て図面までを受託者へ支給し、場合によっては技術指導も行います。
技術提携や販売提携と並んで企業の経営効率を高める目的でOEM取引が行われています。
ODM生産について
ODMとは、Original Design Manufacturingの略語で、委託者のブランドで製品を設計、生産することをいいます。
ODM生産は、主として台湾や中国などの企業に多く見られます。
製品の設計から生産までを受託者が行います。パソコン業界や携帯電話業界で幅広く採用されています。
受託者の中には、マーケティングまで行い、さらに物流や販売まで複数のブランドの製品を一貫して提供する企業もあります。
これは、OEMが生産のみを行うのに対してバリューチェーンの上流(設計)まで含めて受託する形態となります。
委託者にとっては、生産コスト削減のために製品またはその部品を他の国内企業や海外企業などに委託することを選択し、販売に必要な数量だけの製品の供給を受ける点で大きなメリットと言えます。
OEM生産のメリットとデメリット
委託者のメリット
委託者のメリットは、その製品の市場導入期において、ブランドの知名度向上に役立ち、市場成長期では生産能力不足をカバーし、市場成熟期や衰退期は製品構成を維持しつつ、次世代製品の開発に集中することができるなどが挙げられます。
また、生産のための設備投資が最少または不要となるため、資金的負担が少ないというメリットもあります。
受託者のメリット
一方、受託者のメリットは、生産余力の活用、また市場導入期においては自社技術水準の向上が見込まれ、市場成長期では量産効果の享受、市場成熟期や衰退期ではある程度の量産維持などが挙げられます。
委託者のデメリット
委託者にとっては生産を外部委託するため、生産活動から得られるメリットを享受できないというデメリットが発生します。
現実問題として、受託者が支給された製造技術や品質管理、生産ノウハウを吸収、習得していくことで、将来委託者の競合企業となる可能性も秘めています。
OEM生産の事例
自動車業界における軽自動車は、OEM生産が盛んに行われています。
ダイハツとトヨタ間でもOEM取引が行われています。
実際、ダイハツのブランドで販売するよりもトヨタブランドの方が良いと捉える消費者も多くいます。
トヨタ自体は軽自動車の生産を行っておらず、生産ラインを持っていません。
そのため、トヨタファンのためにOEM車を販売しています。スズキから日産自動車へのOEM供給も同様です。
一昔前の事例になりますが、パソコンや通信分野に強みを持っていたNEC(日本電気)は、主力ではなかった白物家電(冷蔵庫、エアコンなど)は三洋電機(現パナソニック)からOEM供給を受けていました。
まとめ
家電業界、化粧品業界、自動車業界など様々な業界でOEM取引は行われています。
ブランド力を保持している企業が生産していると思いきや、別の企業が生産しているということも多く、販売するためにブランド力を行使しているとも言えます。
しかし、OEM形態は、効率的な生産であり、委託企業は企画や販売に経営資源を割き、受託企業は生産ボリュームを確保してコスト削減を行って低コストでの納品を可能とするなど、それぞれの強みを活かしたメリットを享受しており、消費者によりより良いものを届けようとする仕組みがOEMと言えます。
関連ページ
- M&Aとアライアンス
- 総合環境分析(3C分析とSWOT分析)
- 4世代のイノベーションモデル
- 企業の経営成果を測る5つの財務指標
- アンゾフの成長ベクトル(製品×市場マトリックス)とアーカーのマトリックス
- BCGのアドバンテージ・マトリックス
- ITを活用した経営戦略
- 意図的戦略と創発的戦略のバランス
- 日本企業が目指すべき経営戦略とは
- コトラーの競争地位別の戦略類型
- マッキンゼーの「7つのS」
- OEMとは
- PDCAサイクルを回す
- ポーターvsミンツバーグ
- ポーターの3つの基本戦略
- 業界を俯瞰し、分析の全体像をつかむ
- ブルーオーシャン戦略の概要
- ドメイン(事業領域)の設定
- 事業戦略(基本戦略)と機能別戦略(個別戦略)
- 経営資源配分の優先順位
- 自社分析(競争ベンチマークと定量分析)
- 企業変革の条件
- コアコンピタンスとは
- コーポレート・デベロップメント
- コーポレート・ガバナンス
- 全社戦略策定の基本プロセス
- 戦略策定に必要なクリティカルシンキング
- 顧客分析
- フレームワークのカスタマイズと定量ファクト
- 意思決定の2つの方式(トップダウンとボトムアップ)
- BCGのデコンストラクションの概要
- 事業を定義する(事業スキームとバリューチェーン)
- デザイン思考の概要
- 多角化戦略
- 施策・プロセスへの落とし込みと実行
- 創発的戦略とは
- 市場分析
- 顧客分析
- 外部環境分析(PEST分析と5Forces分析)
- フィジビリティスタディ
- 経営戦略策定の3ポイントと3ステップ
- 戦略方向性の策定(戦略方向性マップ)
- フリー戦略の概要
- ゼネラル・マネージャーの役割
- グローバリゼーションと事業戦略
- 業界分析
- イノベーション戦略
- イノベーター理論とキャズムの概要
- 内部環境分析(バリューチェーン分析とVRIO分析)
- ランチェスター戦略の概要
- 学習する組織とは
- 企業価値のマネジメント
- 経営理念・ビジョンと戦略の関係
- 市場分析
- マーケット・ライフサイクルと規模の効果
- マーケットセグメンテーションとポジショニングの重要性
- 経営戦略を動かす仕組み(6W2Hでゴール設定と細分化)
- ベインのネットプロモーター経営(NPS)の概要
- オムニチャネル戦略の概要
- 経営戦略の全体最適と個別最適(全社戦略と事業戦略)
- 戦略実行のための組織形態を考える
- 意図的に計画された戦略論
- プラットフォーム戦略の概要
- ポートフォリオ改善の仕組みづくりと機能最適化の3つの考え方
- プロダクト・ライフサイクルとBCGダイヤモンド
- BCGのプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とGEのビジネス・スクリーン
- 現状成り行き予測
- 競争力の源泉
- 戦略評価のための指標(KPI)の設定とBSCの活用
- ストラテジック・プランニング
- 戦略策定とフレームワークによる環境分析
- 事業戦略策定の5ステップ
- 事業戦略の目的(ゴール)と定量目標の設定
- ストラテジー(経営戦略)とは
- SWOT分析
- 暗黙知と形式知(SECIモデル)の概要
- 孫子の兵法の概要