ブルーオーシャン戦略の概要
今回はブルーオーシャン戦略について説明していきます。
この文章を読むことで、ブルーオーシャン戦略の概要と実行のポイントについて学ぶことができます。
ブルーオーシャン戦略とは
ブルーオーシャン戦略とは、W・チャン・キム(欧州経営大学院(INSEAD))とレネ・モボルニュ(同左)が提唱したのが始まりです。
競合企業がひしめき、飽和状態の市場をレッドオーシャンと呼び、新しい市場を開拓し、競合企業のいない市場をブルーオーシャンとしています。
そのため、レッドオーシャンを避けてブルーオーシャン市場でビジネスを進めることをブルーオーシャン戦略とし、低コスト化も実現させることを提唱しています。
革新的な新サービスと低コスト化が実現できれば、消費者にとっては非常に魅力的なサービスとなります。
これを「バリューイノベーション」と呼び、ブルーオーシャン戦略の軸とされている部分になります。
ブルー・オーシャン戦略を採用することのメリットは、低コスト、高単価でビジネスができるということです。
一方、デメリットは、そのような競合企業もいない新市場があるのならば、他社は模倣して参入してきます。
そのため、自社がブルーオーシャン市場を開拓したら安泰ということはなく、いかに参入障壁を高くするか、または次のブルーオーシャン市場を開拓するなどの動きが必要になってきます。
例:QBハウスによるブルーオーシャン戦略
サービス内容の工夫
QBハウスは平成8年創立の理髪店になります。
QBハウスは従来の理髪店とは異なり、全ての無駄を省いているところに工夫が見られます。
シャンプーや髭剃りと言ったサービスを行わず、カットのみをサービス内容としています。そのカットを10分1000 円という安価で提供しています。
カットを終えるとシャンプーは行わずに壁に備え付けてある吸引機で髪を取るだけと徹底した無駄の省略です。所要時間がわずか10分ということもあって時間のないビジネスマンから人気を集めています。
また、店内には電話が置いておらず、予約をすることはできません。従業員に対しても、時間に対する意識を高めるために、給与明細に1分あたりの給与「分給」を記載しています。
このようなサービス内容のため、店舗設計の際に洗面台を作る必要がないので低コストで済みます。
しかも、10分で1,000円ということは1時間あたり6,000円の売上になります。
通常の床屋が1時間で3,000〜4,000円と考えると、通常の床屋よりも時間当たりの単価は高くなります。
出店場所の工夫
QBハウスは人が多く集まるところに出店していますが、特に力を入れているのは駅や地下街、ショッピングセンターのトイレの脇です。
通常トイレの脇は奥まっていて目立たない、清潔感とは対極にあるので出店するのは避ける店舗が多いのですが、家賃が安いという理由であえて選択しています。
もう一つの理由は、トイレに行くと必ずと言っていいほど鏡を見ます。
その際、「少し髪が伸びた」と感じた時に10分で済む理髪店があったから行ってみようと思う人が出てくる可能性もあります。
期待値のコントロール
雑誌切り抜きを持参して美容院に行って髪を切ってもらった場合でも、1時間後には自分の理想とはかけ離れた姿になっているという経験をした人も多いと思います。
この場合、散髪代を損した気分になりますが、これは散髪への期待値が高いために発生します。
一方、QBハウスはその期待値をあえて下げています。
来店するお客さんは10分の散髪で自分の理想とする髪形になるとは思っておらず、髪が伸びたからスッキリさせたいと思って来店している顧客が多いのです。
5つの差別化要素
つまりQBハウスは他の理髪店とは異なる5つの要素を備えています。
それらは、?低価格、?短時間、?高利便性、?ヘアカットのみのサービス、?予約不要です。
これら5つの手軽さをサービス内容に盛り込むことで成功しています。
まとめ
ブルーオーシャン戦略のポイントは、以下の3点になります。
(1)ブルーオーシャン戦略は、「差別化」と「低コスト化」を同時に実現すべき点が重要になります。
「差別化」のみで新規市場の開拓を狙っても、コスト優位性がなければ、後発企業に当該市場を乗っ取られるためです。
(2)ブルーオーシャンの市場は、一度創造すればそれで終わりではありません。
市場創造後も確固たる地位を築きあげるための努力を継続させなければなりません。必ず、模倣企業が現れるためです。
(3)ブルーオーシャン戦略は、新市場の開拓にのみ絞り込んだ戦略になります。
そのため、競合企業の新規参入を防いだり、自社の優位性を維持するためには、別のマーケティング戦略が必要になります。
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