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創発的戦略とは

今回は創発的戦略について説明していきます。

 

この文章では、創発的戦略の概略と学習する組織で成功したホンダの事例を紹介しています。

 

創発的戦略の概要

 

創発的戦略とは、時間の経過とともに「出現、発現」してくるか、もしくは当初実行に移されたときの戦略とは原型をとどめないほどに変容した競争優位獲得のための戦略や打ち手のことを指します。

 

これは、事前に入念に検討されて作成された戦略を保持していたとしても、市場で戦略実行に移されると当初考えていたものとは大きく異なり、適宜修正を行うものです。

 

時間の経過にしたがって学習するプロセスとなっているため、ここでの戦略(創発的戦略)は学習を重要視しています。

 

具体的には、組織のなかで、時間をかけてトライ・アンドエラーのプロセスを進めます。

 

創発的戦略とは1

 

このような「創発的戦略におけるリーダーの役割」は、あらかじめ計画的な戦略を作り上げることではなく、新しい戦略が出現するように、学習する組織としてのプロセスをマネジメントすることにあります。

 

プロセスの内容は、経営層と現場メンバーが対話を重ねながらダイナミックに戦略を創造していくものとなります。

 

複雑で事業環境の変化が激しい昨今、環境にフィットして実行される戦略は創発戦略をおいて他にありません

 

実際、経営層や経営企画部門が策定した計画的な戦略は、その実行段階において、必ず現実とのズレが発生してしまいます。

 

そのような状況下で計画的な戦略が硬直化してしまうと、企業活動が有効に機能しなくなってしまいます。

 

一方、計画的な戦略が必要ないというわけでもありません。

 

経営層が明確な経営戦略を打ち出さすことなく、戦略の立案や意思決定を現場任せにしていては、大局を見誤る危険性が多くあります。

 

創発戦略は、まず経営トップが自分自身の思いや未来に対する洞察を込めた戦略を力強く打ち出すことからスタートします。

 

経営層が打ち出す戦略は、仮説となります。そして、現場において戦略を実行することは、仮説の検証となります。

 

その際、仮説検証した結果とのギャップから新たな戦略を生み出していきます。

 

現場が自律的であればあるほど、経営層が打ち出した戦略は、実行段階において現実にフィットする形に変化されたり、実行段階で生み出された新たな戦略が付け加えられたりしていきます。

 

その内容が現場から経営層にフィードバックされ、企業組織全体としての学習が進むことになります。

 

創発的戦略とは2

 

学習する組織で成功した事例企業:ホンダ

 

ホンダは1958年にオートバイの海外進出先として米国市場に狙いを定めました。売上高の目標は米国市場の約1%に相当する6,000台/年としました。

 

当時のホンダは大型バイク(250cc以上)に強みを持っており、当時の米国市場での主流だった大型バイク市場に挑戦していきました。徐々に大型バイクは売れていきましたが、想定外のことも多く発生していました。

 

米国人は日本人に比べてバイクを高速かつ長距離運転するため、オイル漏れやクラッチの摩耗などが想定よりも早く進み、故障の原因となっていました。

 

当時、現地スタッフの移動手段は50ccのスーパーカブを使っていました。それが現地で注目を集めることになったのです。大型バイク販売が難航していた際にスーパーカブの販売に踏み切ります。

 

スーパーカブの売上は急増します。

 

当時の米国市場において、燃費が良く、壊れにくい小型バイクが売れるとは誰にも想像ができていませんでした。

 

このスーパーカブのヒットにより、米国市場でのホンダの信頼性が高まり、大型バイクにおいても米国製のシェアを逆転するに至っています。

 

【解説】
このホンダの成功について考えてみます。

 

ホンダは米国市場への進出の際に明確な戦略を練っていたわけではありません。目標台数として6,000台/年といった数字の設定はしていましたが、それらを達成するために、いつ、どのような施策を打つのか、といったことまでは考えられていなかったようです。

 

それなのにホンダが米国市場で成功することができたのはなぜか?それはホンダの現地メンバーが「学習する組織」として動くことができていたからだと考えられています。

 

現地メンバーが当時まだ製品として売り出していなかったスーパーカブに米国人が注目していることを肌身で感じ取り、現地のバイヤーも注目していることを情報として掴んでいたことになります。

 

その結果、現地で学んだことをベースに戦略を見直し、販売予定のなかったスーパーカブを販売する決断をします。

 

このような市場の声を感じ取り、そこからニーズを学び取り、柔軟に施策を打てる組織であったと言えます。

 

当時のホンダのように目標は立てていたものの、現地での現状を正確に把握できていない状況からすると、戦略策定は難しく、このように現地で学習しながら柔軟に対応していく方法が成功の要因だったと言えます。

 

まとめ

 

事例企業のホンダは予期せぬ機会から利益を生み出しました。

 

このように意図的戦略とは異なり、予期せぬ機会から生まれた戦略を創発的戦略といい、これも企業が成功を納めるためには非常に重要な要素となります。

 

創発的戦略で成果が出せるのであれば、それを意図的戦略に変えていけばよく、柔軟に対応できる心構えや組織作りが重要となります。

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