フレームワークのカスタマイズと定量ファクト
今回は、フレームワークのカスタマイズと定量ファクトについて説明していきます。
この文章を読むことで、戦略を生み出すための事実情報の扱い方について学ぶことができます。
戦略策定のためのフレームワーク
戦略策定を行う上でフレームワークの活用は重要なポイントとなります。
しかし、巷に溢れているフレームワークを使えば必ず良くなるかというとそうでもありません。やみくもにフレームワークを使っても有効な戦略を策定することはできません。
各フレームワークの有効性や限界を知り、必要に応じてカスタマイズすることが重要です。
フレームワークを用いて事実情報を整理したとしても、全ての情報が定性的であれば事実情報としての信頼性は絶対ではありません。
やはり、定量的に数値で事実情報を説明する方が説得力があり、納得感も高まります。
数値は出所がハッキリしている限り、否定することのできない事実情報となります。
例えば、定性的に「A社はB社に比べて、冷蔵庫の生産能力が高い」と言った場合でもA者の方が良いということは伝わりますが、「主観的な判断ではないか?」と疑われてしまう場合があります。
一方、定量情報を織り交ぜながら同じことを伝えてみます。
「A社の冷蔵庫の生産能力は4,000台/日でロス率は5%程度であり、B社は3,500台/日でロス率は10%程度となっており、A社の方が生産能力が高いと言える」と説明すると、説得力や納得感が高まります。
ここからも言えることですが、可能であれば定量的な情報を使うことが肝要です。
フレームワークのカスタマイズの必要性
5Forces分析を例にとって、フレームワークのカスタマイズの必要性を説明したいと思います。
5Forces分析は下図のようなフレームワークになります。
鉄加工を生業としているA社があるとします。A社の顧客は鉄鋼メーカーになります。
鉄鋼メーカーの更に先には自動車業界や電機業界、建設業界などが考えられ、それらの業界の影響を大きく受けることになります。
このような場合、フレームワークの構成要素を取捨選択したり、新たに要素を追加するなど工夫することが重要となります。
鉄加工メーカー業界内の競争環境は当然分析対象となり、代替の脅威は例えばプラスチック製品など、鉄を取り扱っていた製品がプラスチックに置き換わることを警戒する必要があります。
また、鉄加工メーカーの上流に当る原材料メーカー、販売先に当る鉄鋼メーカーは分析対象となります。
一方、新規参入業者について、鉄加工を行うための設備投資は大型設備で有り、コストも高いために今後、新規参入業者が増えることは考えにくいと言えます(仮定の話)。
そして、鉄鋼メーカーの更に先の販売先業界の経営環境の影響を強く受けるために分析対象としたほうが良いと考えられます。
その結果、5Forces分析の要素を取捨選択・追加を行うと、下図のようになりました。
下図のようにすることで鉄加工メーカーの環境分析を行う上で重要な要素を踏まえた適切なフレームワークとなりそうです。
このように5Forces分析といっても、いつも同じ要素で分析するのが良いとは限りません。
時と場合によって柔軟に構成要素を組み替えていく思考が大切となります。
まとめ
カスタマイズしたフレームワークや定量的な事実情報はとても重要です。
これらの情報を巧みに活用し、論理展開することで説得力をさらに持たせます。
事実情報とフレームワークからロジック展開し、そこから論理的にいえることを導き出します。
つまり、事実情報にロジックを掛け合わせることで、新たに事実情報を生み出すことになります。
これを繰り返していくことで、単なるいくつかの事象であった事実情報から戦略へと精錬されていくのです。
それは、まるで一つの物語を作るかのような作業となります。
その物語の聞き手が理解できないようなストーリーになるということは論理的な飛躍があり、もう少し事実情報を見直すことや論理展開を細かくすることが必要になります。
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