競争力の源泉
今回は競争力の源泉について説明していきます。
この文章を読むことで、自社の競争優位性を獲得するために必要な競争力の源泉について学ぶことができます。
競争力の源泉について
競争環境分析において、最も基本的かつ重要なことは、競争上で自社の優位性を見極めることにあります。
マイケル・E・ポーターは、本質的な競争の方向性としてコストと差別化に優位性を見出すことを掲げています。
ここでは、競争力の源泉を”コスト”、”時間”、”付加価値”の3つとして考えます。
競合企業に対して3つの観点から優位性を保つことが望ましいが、通常それは難しいです。
最低限、1つの軸で優位に立つことが競争環境を勝ち抜くために必要不可欠な条件となります。
ただし、どの軸で競争優位性を保つことが重要となるのかは、事業のライフサイクルがどのような状況にあるのかによって異なってきます。
例えば、腕時計事業は生産コストの低減が成功要因でしたが、近年ではファッション性やマーケティング力が成功要因となっています。
これらの事業環境の変化を捉えて自社の競争優位性を改善し続けることが必要となります。
<例題>
自動車業界全体としての生産性は、1975年前後に日米で逆転が起きています。
日米を代表するトヨタとGMの生産性を見ても、60年代、70年代を通じてGMの設備投資の不足が見られます。
アメリカが生産性を軽視する一方、日本が旺盛な投資を行ってキャッチアップしてきました。
日本のメーカーの優位性は複合的なものとなっています。
規模による生産コストが優位性を保っていた時代から製品の品質や生産システムなどの組織の能力、製品開発スピードへと競争力の源泉が変化し、それに合わせて競争力を測る基準も変化してきたと言えます。
市場セグメント:競争力の源泉を議論する以前にアメリカと日本の製品ラインの違いがあります。
アメリカの車は単価の高いフルサイズ、インターミディエイト、コンパクトカーでしたが、日本はサブ・コンパクトカーが主流であり、事実上製品ラインの競合は回避されています。
【コスト】
サブコンパクトカー市場において、日本企業は規模の効果を実現し、コスト面で優位に立っていました。
部員メーカーの相乗りを許したこと、また優れた生産システムもコストダウンの一因となっています。
【付加価値】
品質においては日本車の方がアメリカ車にうらべて不良品率がはるかに低かった。
【時間】
かんばん方式、リーンプロダクションをはじめとする日本メーカーの優れた生産システムは多品種への対応力や柔軟性、極めて早い開発期間を可能にする仕組み、高品質で生産性の高い生産システム、無駄のなさで世界中の注目を集めていました。
まとめ
競争力の源泉を見極め、他社と比べて競争優位性を獲得するためには、競争のメカニズムを理解することが欠かせません。
競争のメカニズムを理解するためには、自社が生存している業界を理解するための戦略理論や自社の内部を理解するための戦略理論を知っておく必要があります。
業界構造を理解するためにはポーターの5つの力(5Forces分析)が有名であり、自社内部を理解するためには、バリューチェーン分析などが用いられることが多いです。
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