経営理念・ビジョンと戦略の関係
今回は経営理念、ビジョンと戦略の関係について説明していきます。
この文章を読むことによって、企業経営に関する経営理念とビジョン、戦略の関係性について学ぶことが出来ます。
企業経営に関するピラミッド階層
企業経営において、「経営理念」、「ビジョン」、「経営戦略」、「戦術」はピラミッドを形成しています。
各関係性は、経営理念を達成するための打ち手がビジョンであり、ビジョンという目標を達成するための打ち手が経営戦略、経営戦略を達成するための打ち手が戦術となります。
このピラミッドは上位ほど、”中長期的な視点”や”抽象的”であるのに対して、下位にいくほど”短期的な視点”や”具体的”な内容となっています。
これらの4階層の内容は密接に関連しており、上位から下位の整合性を図ることが重要となります。
経営理念とビジョン
経営理念は、企業のトップには企業の進むべき方向性を示すという大切な役割があります。
そのために、重要なことは、時代の流れを超えてどのような経営の姿勢を貫くのかという企業としてのスタンスを示したものが経営理念となっています。
そして、経営理念をもとに従業員や顧客、そして世間に対して具体化して表現したものがビジョンとなります。
経営理念やビジョンは、自社の存在意義や果たすべきミッションを普遍的な形で表現した基本的価値観の宣言と言えます。
これらは経営戦略の上位概念として成り立っており、ここには企業として中長期的に成し遂げていたい市場におけるポジショニングを示しています。
<例>
パナソニックの経営理念は、”私たちの使命は、生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与すること”とされています。
パナソニックのビジョンは、”お客様のくらしに寄り添う「家電のDNA」を活動の中核に置き、これを継承しながら、お客様にとっての「いいくらし」をあらゆる空間に拡げていくことです。
家の中から、オフィス、店舗、自動車、航空機、さらに街まで、 お客様が活動する様々な空間において、ハードウェア単品だけでなく、 ソフト、サービスを含めたトータルソリューションを提供し、 お客様一人ひとりにとってのより良いくらし、より良い世界 〜「A Better Life, A Better World」を追求します。”
全社戦略、事業戦略、職能分野別の戦略の関係性
経営戦略は経営理念やビジョンををより具体化するための手段や道筋となり、他社と比較した時の競争優位性を確立するための枠組みを示します。
経営戦略を詳細にみると、戦略の中にも”全社戦略”、”事業戦略”、”職能分野別の戦略”の3つの階層があります。
全社戦略は、多角化企業全体に関わる戦略となっており、多くの事業体を抱える本社が策定する戦略となります。一方、事業戦略は個別の事業体ごとの戦略を指します。
多角化企業にとって特定市場の競争優位性を確立させるための戦略となります。
また、事業戦略の下には、生産・販売・開発・営業などと言った組織の部門別に分解した職能分野別の戦略があります。
<例>
パナソニックは日本を代表する多角化事業体であり、創業者である松下幸之助が掲げた経営理念のもとで時代背景や自社の経営環境を鑑みてビジョンを見直し、そして中長期視点や1年毎の視点で経営戦略(全社戦略、事業戦略、職能部門別戦略)を本社(経営企画部門)が取り纏めて策定し、コントロールしています。
パナソニックには、”家電”、”住宅”、”車載”、”BtoBソリューション”、”デバイス”の5つの事業領域があります。これらの事業領域それぞれに戦略があり、それらは事業戦略となります。
例えば、デバイス事業部の事業戦略は、”家電・住宅・車載・B to Bソリューションの各事業の競争力の源泉となるコアデバイスの創出を行うとともに、市場の変化に対応し、グループの収益源として進化し続けます。”となっています。
まとめ
企業経営・ビジョンと戦略の関係は、経営理念が企業経営の羅針盤の位置づけにあり、羅針盤をしっかりと持った企業は環境変化にも強く、ブレない経営活動を行えます。
そして、羅針盤に従って、「3年から5年後の展望」を描くことがビジョンとなり、そのビジョンを達成するための方向性を定めたものが戦略となっています。
これらを不整合なく、成り立たせていくことが企業経営にとって重要となります。
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