ストラテジー(経営戦略)とは
今回はストラテジー(経営戦略)とはについて説明していきます。
この文章を読むことによって経営戦略の必要性や経営学における3つの基本戦略について学ぶことができます。
経営戦略とは
経営戦略とは、企業が競争環境を勝ち抜くために必要な企業としての指針となります。
「戦略」とは元来、軍事用語であり、「戦場で勝ち残るための謀(はかりごと)」を指しています。
経営学の中で「経営戦略」は>企業の目的を達成するために必要となる打ち手を示しています。
企業の目的とは、事業を継続させ、成長し、収益を獲得、拡大させていくことなどが挙げられます。
そして真の目的は顧客を創造することです。
昨今、顧客のニーズが多様化し、業界の垣根を超えて競合企業が乗り入れてくる経営環境となり、且つ、経営のグローバル化による地理的範囲の拡大に伴い、経営環境は不確実性が増していると言えます。
経営戦略の必要性
近年、経営環境の不確実性が増していることから、経営戦略の重要性が増していると言えます。
高度経済成長の時代、企業は大量生産・大量販売のビジネスモデルが成り立ち、「経営戦略」を意識せずとも利益を享受できる時代でした。
しかし、バブル崩壊後、経営環境が変化し個々の企業が戦略を持たなければならなくなりました。
企業は、目的に達成時期や達成レベルを付与して、目標を掲げます。
この目標は、企業としての最終目的を達するためのマイルストーンと言えます。
現状と目標のギャップを埋めるための打ち手こそが「経営戦略」であり、戦略を持たなければ勝ち残れない時代となったのです。
しかし、「経営戦略」を立案するにあたって、勘案すべき経営資源(人、モノ、金、情報)や戦略立案に充てられる時間には限りがあります。
このような制約を踏まえた上で定義した経営戦略こそが重要となってきます。
経営学における3つの基本戦略
企業が他社との競争において、競争優位を築くために3つの基本戦略をM.E.ポーターが提唱しています。
企業の戦略は自社を取り巻く競争環境に応じて変えることが必要になっており、唯一の正解はありません。
ポーターの3つの基本戦略とは、下記の3戦略です。
コスト・リーダーシップ戦略
これは、同程度の商品を消費者に提供するのであれば、安価に提供できる方が競争優位を取れるという戦略です。
差別化戦略
商品の価格が高くなってしまった場合でも、それ以上にデザイン、技術や品質面において、他社が模倣困難であり、消費者に高い付加価値を提供することが可能であれば競争優位を取れるという戦略です。
集中戦略
特定の顧客・商品・地域などにターゲットを絞り込んだ上で、そこに経営資源を集中させて競争優位を築く戦略です。
これらの競争戦略は、1つを選択することが肝要であり、複数を選択するとうまくいかないとポーターは主張しています。
【例題】
例題を通じてM.E.ポーターが提供した3つの基本戦略の意味、あるいは使い方についてさらに理解を深めていきます。
<例>
自動車会社A社にて経営企画部門の社員として働いているBさんは、ここ数年の販売台数の減少に頭を抱えていました。
A社では中型車、軽自動車の生産・販売を行っていました。
販売不振の背景は、他社が中型車の生産能力を上げ、多くのラインナップを取り揃えている中、A社は中型車の性能で他社に劣っていることが考えられます。
一方、軽自動車の販売は好調で、過去数年、販売台数は右肩上がりとなっています。
Bさんは、A社としてどの基本戦略を採用するべきか考案することを求められました。Bさんが3つの基本戦略の内、どの戦略を選ぶのかを見ていきます。
<解説>
自動車会社A社は、集中戦略を取ります。軽自動車、中型車両方に十分に投入できるほどの経営資源をA社は有していませんでした。
このまま中型車を生産していては、競合他社に負けてしまうため、軽自動車の生産に絞り込むことで、軽自動車を望む顧客のニーズに応えることのできるよう経営資源を集中投下することで競争優位を築きます。
まとめ
・近年、経営環境の不確実性が増しており、企業にとって経営戦略が重要となってきている
・経営戦略とは、企業が掲げた目標と現状のギャップを埋めるための打ち手である
・「経営戦略」には、3つの基本戦略が考えられる
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