業界分析
今回は業界分析について説明しています。
この文章を読むことで、業界に影響を及ぼす可能性のある要因を抽出することができ、事業戦略の組み立てに役立ちます。
当該業界の状況を分析
業界を分析する際には5Forces分析やPEST分析を用いることが多く、当該業界に影響を与える要因として、?業界のプレイヤー構造、?サプライ動向、?新規参入業者の動向、?代替品の動向、?その他業界の動向(技術、法規制など)、?顧客の動向 (こちらは顧客分析で詳細を記載しています)が挙げられます。
?業界のプレイヤー構造の把握
自社が属する業界内にどのようなプレイヤーが存在するのかを知っておくことが重要となります。
プレイヤーを洗い出す際に製品セグメントやプレイヤーの売上規模別に整理しておくと後々の分析で役に立ちます。
参考例として、化粧品業界を見ます。低価格帯製品には大企業から小規模な企業まで多数のプレイヤーがしのぎを削っています。
これは、参入障壁が低く、規制緩和などの影響や市場に魅力があったために相次いで新規参入プレイヤーが発生した可能性があります。
一方、高価格帯製品は大企業のみが存在し、中堅〜小規模企業はいません。
これは、参入障壁が高いことや高価格帯製品を販売するためにはブランド力が必要となり、それを持ち合わせている大企業のみが存在していると言えます。
?サプライ動向の把握
業界への原材料の提供の動向(化粧品業界から見ると、原材料の仕入れ価格に反映する)についても考える必要があります。
調達価格や安定調達の可否が市場や業界に影響を及ぼします。
そのため、「(1)原材料の調達価格実績」や「(2)サプライヤーとの関係性」を調査することになります。
(1)は化粧品業界にとって利益に直結するため、これまでの価格推移や今後の価格の予測(高騰するのか否かなど)を調査します。
(2)については、サプライヤー側の売上に占める当該業界(化粧品業界)の割合を調査します。
これは、化粧品業界の割合が低ければ、価格交渉で立場が弱くなる可能性があります。
?新規参入業者の動向の把握
新規参入業者を調査する際は、「(1)近年新規参入した企業」、「(2)新規参入を検討している企業」、「?新規参入に関して未知数の企業」の3つに分類して考えます。
(1)(2)は競合企業として考えられるため、別記事「自社分析(競争ベンチマークと定量分析)」で紹介します。
(3)の企業に関しては調査することが困難です。
しかし、市場の魅力があるのか否か、参入障壁が高いのか低いのかといった視点から検討します。
例えば、化粧品業界の低価格市場は技術やノウハウといった側面は必要性が低く、設備投資も軽微となるため、参入障壁は低くなります。
しかし、製品単価が下落傾向にあるため、利益率は低く、市場の魅力は低いと言えます。
ということは、新規参入してくる企業の可能性として、これまでに行ってきた事業とのシナジーが働く企業が多いと考えられます。
そのため、垂直統合として参入してくる企業をチェックすることが基本となります。
?代替品の動向を把握
代替品については、直接的な代替品や間接的な代替品をピックアップします。
その後、業界内の製品と共に製品内容やサービス内容を分析することになります。
こちらも、当該業界では考えてもみなかった製品が取って代わることもありますので要注意です。
例えば、FAXは電子メールの急伸により市場自体が急激に衰退しています。
また、ブランド志向の消費者をターゲットとしている高級バッグ市場は高級アクセサリーにパイを取られる可能性があります。
?その他業界の動向(技術、法規制など)の把握
こちらはPEST分析を行うのと同様となります。
PEST分析の注意点は、全ての項目を調査するのではなく、当該業界に必要な項目を取捨選択した上で調査することです。
PEST分析を行う際は、当該業界には一体どの項目が影響を及ぼすのかを考えた上で分析項目を洗い出します。
まとめ
業界分析を行う際は、5Forces分析やPEST分析を駆使して行います。
業界に影響を及ぼすであろう主要因となる要素を抽出し、調査・分析します。
ここでも抜け漏れダブりなく、MECEに分析しておくことは、自社が事業戦略を立案する上で注意すべき内容をあぶりだすのに役立ちますし、他社との差別化を図る上でも重要となります。
関連ページ
- M&Aとアライアンス
- 総合環境分析(3C分析とSWOT分析)
- 4世代のイノベーションモデル
- 企業の経営成果を測る5つの財務指標
- アンゾフの成長ベクトル(製品×市場マトリックス)とアーカーのマトリックス
- BCGのアドバンテージ・マトリックス
- ITを活用した経営戦略
- 意図的戦略と創発的戦略のバランス
- 日本企業が目指すべき経営戦略とは
- コトラーの競争地位別の戦略類型
- マッキンゼーの「7つのS」
- OEMとは
- PDCAサイクルを回す
- ポーターvsミンツバーグ
- ポーターの3つの基本戦略
- 業界を俯瞰し、分析の全体像をつかむ
- ブルーオーシャン戦略の概要
- ドメイン(事業領域)の設定
- 事業戦略(基本戦略)と機能別戦略(個別戦略)
- 経営資源配分の優先順位
- 自社分析(競争ベンチマークと定量分析)
- 企業変革の条件
- コアコンピタンスとは
- コーポレート・デベロップメント
- コーポレート・ガバナンス
- 全社戦略策定の基本プロセス
- 戦略策定に必要なクリティカルシンキング
- 顧客分析
- フレームワークのカスタマイズと定量ファクト
- 意思決定の2つの方式(トップダウンとボトムアップ)
- BCGのデコンストラクションの概要
- 事業を定義する(事業スキームとバリューチェーン)
- デザイン思考の概要
- 多角化戦略
- 施策・プロセスへの落とし込みと実行
- 創発的戦略とは
- 市場分析
- 顧客分析
- 外部環境分析(PEST分析と5Forces分析)
- フィジビリティスタディ
- 経営戦略策定の3ポイントと3ステップ
- 戦略方向性の策定(戦略方向性マップ)
- フリー戦略の概要
- ゼネラル・マネージャーの役割
- グローバリゼーションと事業戦略
- 業界分析
- イノベーション戦略
- イノベーター理論とキャズムの概要
- 内部環境分析(バリューチェーン分析とVRIO分析)
- ランチェスター戦略の概要
- 学習する組織とは
- 企業価値のマネジメント
- 経営理念・ビジョンと戦略の関係
- 市場分析
- マーケット・ライフサイクルと規模の効果
- マーケットセグメンテーションとポジショニングの重要性
- 経営戦略を動かす仕組み(6W2Hでゴール設定と細分化)
- ベインのネットプロモーター経営(NPS)の概要
- オムニチャネル戦略の概要
- 経営戦略の全体最適と個別最適(全社戦略と事業戦略)
- 戦略実行のための組織形態を考える
- 意図的に計画された戦略論
- プラットフォーム戦略の概要
- ポートフォリオ改善の仕組みづくりと機能最適化の3つの考え方
- プロダクト・ライフサイクルとBCGダイヤモンド
- BCGのプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とGEのビジネス・スクリーン
- 現状成り行き予測
- 競争力の源泉
- 戦略評価のための指標(KPI)の設定とBSCの活用
- ストラテジック・プランニング
- 戦略策定とフレームワークによる環境分析
- 事業戦略策定の5ステップ
- 事業戦略の目的(ゴール)と定量目標の設定
- ストラテジー(経営戦略)とは
- SWOT分析
- 暗黙知と形式知(SECIモデル)の概要
- 孫子の兵法の概要