ドメイン(事業領域)の設定
今回はドメイン(事業領域)の設定について説明していきます。
この文章を読むことで、事業戦略の策定に必要な事業ドメインの設定や注意点について学ぶことが出来ます。
事業ドメインの設定
事業ドメインを設定するということは、「自社のビジネスがどの事業領域を対象としているのか?」に関わる意思決定を行うことです。
企業経営を継続させていくためには企業としての成長は不可欠です。
しかし、事業ドメインを定義しておかなければ経営資源の投資対象は自然に拡散していきます。
ここで求められることは、事業の選択と集中です。
選択した事業領域において、競争優位を構築していくことが重要となります。
消費者の趣味趣向が多様化した現代においては、全ての領域で顧客を満足させる商品・サービスを提供することは不可能です。
事業ドメインの設定は、既存事業だけではなく、将来的な事業展開も考慮しながら行わなければなりません。
つまり、良い事業ドメインとは、「適度な広がりを持ち、狭すぎないドメイン設定となっていること」、「将来の事業展開の方向を考慮していること」となります。
次に事業ドメインを定義する上で、最も代表的な拡張軸は3つあり、その3つの軸によって他社との差別化や事業展開の方向性を定義することが一般的となっています。
(1)市場軸
ターゲットとする市場や顧客を定義します。
例えば、金融サービスを提供している企業において、「年収が2,000万円以上の富裕層をターゲットとした金融サービスを推進する」というような定義になります。
(2)技術軸
自社が保有する技術・ノウハウによって定義します。
製薬会社において、「バイオテクノロジーを有効活用した新薬を開発する」という定義になります。
(3)機能軸
自社が提供する機能を定義します。例えば、OA機器メーカーにおいて、「コスト削減に貢献し、且つ快適なオフィス環境を提供する」という定義になります。
【例題】
それでは、例題を通して、「事業ドメインの設定」についての理解を深めていきます。
事業ドメインの設定、その点に注意しながら読み進めてみてください。
<例>
改めて、事業ドメインとは事業活動を行う領域のことであり、事業を推進する分野を定義しておいて無謀な多角化を抑制しつつ、適切な方向に事業展開していくことを目的としています。
NEC(日本電気株式会社)は1970年代前半まで、電話交換機などの通信事業やコンピュータ事業を行っていました。
1970年代後半にコンピュータと通信の融合をうたった「C&C(コンピュータ&コミュニケ−ション)」を事業ドメインとしたことで、従来の通信事業とコンピュータ事業を個別に行うのではなく、コミュニケーションを活発化させるための事業として両者を事業推進し、半導体事業にも進出して成功してきました。
【解説】
NECの事例において、コンピューターとコミュニケーションの融合を事業ドメインとして定義したことで、その後のPC-9800シリーズによる国内PCシェアトップの奪取、1980年代後半には、半導体生産で世界一位となるなど、日本を代表するエレクトロニクス企業へと成長することができました。
この事例からもドメインの設定が事業成長に大きく寄与していることが見て取れます。
NECにおいては、総合電機メーカーとして事業を行っていた時期もありますが、現在はC&Cコンセプトに立ち戻り、コンピュータシステム、および通信を中心とした電機メーカーとして企業経営を続けています。
ドメイン設定の注意点
ドメイン設定における注意点は、設定領域は広すぎても狭すぎてもいけないということです。
企業の成長維持のためには、事業の多角化は必須となります。
しかし、事業ドメインが定義されていない無謀な多角化は回避するべきです。
一方、ドメインを狭く設定すると事業展開を行う際の制約事項となってしまい、既存事業そのものの失敗を招くリスクがあります。
まとめ
事業ドメインの設定に必要な「顧客」、「技術」、「機能」は具体的な戦略策定に密接に関係しています。
厳しいビジネス環境の中で生き残っていくには選択と集中が重要であり、そのための事業戦略を策定する上で事業ドメインの設定は欠かすことができません。
アンゾフの戦略マトリックスは現状の顧客、機能、技術をベースとして新規事業の方向性を考える理論となっています。
詳しくは別の記事で説明していきます。
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