マーケットセグメンテーションとポジショニングの重要性
今回は、マーケットセグメンテーションとポジショニングの重要性について説明しています。
今回の文章を読むことで、どのようにターゲットとする市場を決めるか、その市場の中でのポジショニングの重要性について学ぶことができます。
マーケットセグメンテーションとは
マーケットセグメンテーションとは、市場をある切り口に従って切り分けて細分化することを言います。
その目的は、細分化したマーケットの一部をターゲットとして戦略的に投資することで、競合他社に対して優位性を築くことにあります。
例えば、ベンツやBMWのような海外高級車は自動車市場において市場全体をターゲットにするのではなく、「高所得者」をターゲットとした戦略を採用しています。
市場を切り分ける切り口は、購買者のニーズを探すこと、自社(提供側)の視点を組み合わせて考えることが重要となります。
例えば、メジャーな切り口は、人口動態変数(デモグラフィック変数)、心理変数(サイコグラフィック変数)、地理的変数などが使用されています。
そして、各メーカー間のマーケティングの考え方は2通りになります。
?マス・マーケティング
低コストモデルで大衆のニーズに応えるマーケティング方法です。
遡ると、20世紀にアメリカのフォード車が採用していた方法となります。
ただし、消費者の価値観が多様化している現代ではこの方法はマッチしません。
?セグメント・マーケティング
自動車業界で例えると、価格帯別に車を分けて、顧客のセグメント毎に求められるグレードの車を提供していく方法になります。
この方法はアメリカのGM(ゼネラルモーターズ)が採用していました。
こちらは規模の効果を損なわない程度のバリエーションを保ち、他社が参入できないくらいの製品をラインナップする方法となります。
また、定期的にモデルチェンジを行うことで消費者の購買意欲を喚起します。
<例題1>
マーケットセグメンテーションを考える上で、身近な例として自動車業界を取り上げます。
日本国内の各メーカー(トヨタ、日産、三菱、マツダ、ホンダ)がセグメント・マーケティングを行っている中でどのようなラインナップを準備してきたか現在に至るまでの流れを考えてみてください。
<解説1>
トヨタ、日産、三菱は昔からフルラインナップを提供するメーカーとなります。
一方でマツダやホンダは大型車を提供していませんでしたが、現在ではトヨタ、日産、三菱同様、フルラインナップを提供しています。
その結果、これらのメーカーはセダン以外にスポーツカー、3ドア、5ドア、RV車などを提供しており、フルラインナップを提供する競合同士で消耗戦を招く恐れを持っていると言えます。
ポジショニングの重要性
ポジショニングとは、ターゲット市場において自社が他社よりも優位に立てる位置づけを見出すことです。
自社が取ったポジショニングは市場に認知されて始めて意味を成します。
認知されるためにはマーケティングミックスが重要となります。
競合他社と同じセグメントに製品を投入した場合でも、実際に提供している製品は他社と差別化を図っていることが多いです。
しかし、トヨタと日産、ホンダのような国内自動車メーカー間では仮想敵を明確に想定している場合もあります。
例えば、ファミリー層の中級車という位置づけでトヨタのVOXY/ノア、日産のセレナ、ホンダのステップワゴンという関係があります。
これら以外のメーカーは下位企業となり、上記車種のラインナップの隙間を狙った製品を投入しています。
各業界の中で各社のポジショニングは市場が成熟していくと複雑化していくと考えられています。
この流れはマーケティングや研究開発力に優れるリーダー企業が優位となる一方で、ポジショニングが変化する場合はリーダー企業の不利になる場合もあります。
理由は、需要が変動し生産調整が入った場合に最も影響を受けるのがリーダー企業となるためです。
まとめ
いかにして自社が優位な立場を取るかをマーケティングでは重視しています。
セグメンテーションでは所得や年齢などの要素で市場を切り分け、その中でターゲットとする市場を決めます。
その市場に対してポジショニングを取っていく(自社がどのような製品をどのような価格で、どのような販売チャネルを活用してどのようなプロモーションで売っていくのか決める)ことが重要となります。
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