戦略評価のための指標(KPI)の設定とBSCの活用
今回は、戦略評価のためのKPIとBSCの活用について説明しています。
この文章を読むことで、指標を通じた戦略の進捗と評価の重要性について学ぶことができます。
KPIとは
戦略を計画に落とし込んでいく際には、ゴールとなる「あるべき姿」に対して、その時々で自社の実行がどこまで進んでいるのか、その進度は順調なのか遅れているのかを見極められなければなりません。
そのために、指標を設定します。
指標を設定する際に大切なポイントは3つあります。
?比較することが可能、?指標の数値は取得が容易、?客観的に測定可能という点です。
戦略や計画を評価するためには指標は必要不可欠なものとなっています。
しかし、あまりにも多くの指標尾を設定することは望ましくありません。
理由は、指標を測定するためには人手がかかるなどコストがかかる為です。
自社(自分たち)にとって本当に重要な指標を探すことが重要となります。
そのため、指標はKPI(Key Performance Indicator)とよばれています。
BSC(Balanced Scorecard)とは
BSC(Balanced Scorecard:バランス・スコアカード)とは、経営のためのマネジメントシステムです。
バランス・スコアカードはビジョンと戦略を明確にすることで、財務数値に表される業績だけではなく、財務以外の経営状況や経営品質などから経営の状態を評価し、バランスのとれた業績の評価を行うための手法となっています。
BSCの考え方は、財務的な指標の他に、顧客視点や業務プロセスの指標、学習や成長(社員能力、教育、研修など)の指標を取り入れています。
BSCを導入することで、企業ビジョンの実現・目標の達成を目指し、財務視点、顧客視点、業務プロセス視点、学習と成長の視点の4つの視点から戦略を立てていきます。
BSCの導入方法は、戦略の内容から重要な成功要因を導き出します。
そしてそれらの業績評価指標を決定し、アクションプランと現場の業務に反映させます。
その結果、従業員は日々の業務がどのように目標達成に影響していくのかを認識することができ、日々の業務改善を意識するようになります。
?戦略目標の設定
設定したビジョンと戦略を達成するための戦略目標を設定します。
次の重要成功要因の分析・作成と合わせて戦略目標を設定することで、抽象的に表されているビジョンと戦略を業績評価指標に置き換えやすくします。
?重要な成功要因の設定
設定したビジョンと戦略または戦略目標を達成するために必要な具体的要因を考えます。
バランス・スコアカードの手法で成功に導くためには、経営トップから従業員1人1人にまで設定したビジョンと戦略を浸透させることが肝要です。
?KPIの設定
KPIとは設定した戦略目標・重要成功要因をどのようにして評価するのかを決めます。
設定した重要成功要因の評価を行なうために具体的な業績評価指標を設定します。
バランススコアカードにおける業績評価指標=財務的業績評価指標だけではなく、ビジョンと戦略を実現するために重要な非財務的業績評価指標(財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、成長と学習の視点における業績評価指標)についても設定します。
?数値の設定
設定した業績評価指標(KPI)を受けて、実際の数値目標を決めるターゲットの設定を行います。
?アクションプランの策定
業績評価指標を達成するための戦略プログラムもしくはアクションプランを策定します。
【事例】
ある自動車メーカーの販売代理店をA社とする。A社では総資本利益率を増加させることが課題となっていました。
そこでBSCを活用して様々な目標指標を設定しました。
?財務の視点:総資本利益率の向上と収益性向上、生産性向上
?顧客の視点:顧客満足度向上、自動車生産会社との相互満足
?業務プロセスの視点:フランチャイズの組織化、顧客価値の創造、卓越した自動車販売業界の分析業務
?学習と成長の視点:前向きな組織風土、従業員のコンピタンス、技術の基盤
といった具合です。
まとめ
重要なKPIを設定し、その指標の達成状況を把握しながら、戦略の実行を進めます。
指標の設定によって、人や組織はその指標を意識して動くようになります。
つまり、指標を通じた戦略の進捗と実行と評価は、戦略を動かし、必要に応じて閃絡を修正することを可能としています。
関連ページ
- M&Aとアライアンス
- 総合環境分析(3C分析とSWOT分析)
- 4世代のイノベーションモデル
- 企業の経営成果を測る5つの財務指標
- アンゾフの成長ベクトル(製品×市場マトリックス)とアーカーのマトリックス
- BCGのアドバンテージ・マトリックス
- ITを活用した経営戦略
- 意図的戦略と創発的戦略のバランス
- 日本企業が目指すべき経営戦略とは
- コトラーの競争地位別の戦略類型
- マッキンゼーの「7つのS」
- OEMとは
- PDCAサイクルを回す
- ポーターvsミンツバーグ
- ポーターの3つの基本戦略
- 業界を俯瞰し、分析の全体像をつかむ
- ブルーオーシャン戦略の概要
- ドメイン(事業領域)の設定
- 事業戦略(基本戦略)と機能別戦略(個別戦略)
- 経営資源配分の優先順位
- 自社分析(競争ベンチマークと定量分析)
- 企業変革の条件
- コアコンピタンスとは
- コーポレート・デベロップメント
- コーポレート・ガバナンス
- 全社戦略策定の基本プロセス
- 戦略策定に必要なクリティカルシンキング
- 顧客分析
- フレームワークのカスタマイズと定量ファクト
- 意思決定の2つの方式(トップダウンとボトムアップ)
- BCGのデコンストラクションの概要
- 事業を定義する(事業スキームとバリューチェーン)
- デザイン思考の概要
- 多角化戦略
- 施策・プロセスへの落とし込みと実行
- 創発的戦略とは
- 市場分析
- 顧客分析
- 外部環境分析(PEST分析と5Forces分析)
- フィジビリティスタディ
- 経営戦略策定の3ポイントと3ステップ
- 戦略方向性の策定(戦略方向性マップ)
- フリー戦略の概要
- ゼネラル・マネージャーの役割
- グローバリゼーションと事業戦略
- 業界分析
- イノベーション戦略
- イノベーター理論とキャズムの概要
- 内部環境分析(バリューチェーン分析とVRIO分析)
- ランチェスター戦略の概要
- 学習する組織とは
- 企業価値のマネジメント
- 経営理念・ビジョンと戦略の関係
- 市場分析
- マーケット・ライフサイクルと規模の効果
- マーケットセグメンテーションとポジショニングの重要性
- 経営戦略を動かす仕組み(6W2Hでゴール設定と細分化)
- ベインのネットプロモーター経営(NPS)の概要
- オムニチャネル戦略の概要
- 経営戦略の全体最適と個別最適(全社戦略と事業戦略)
- 戦略実行のための組織形態を考える
- 意図的に計画された戦略論
- プラットフォーム戦略の概要
- ポートフォリオ改善の仕組みづくりと機能最適化の3つの考え方
- プロダクト・ライフサイクルとBCGダイヤモンド
- BCGのプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)とGEのビジネス・スクリーン
- 現状成り行き予測
- 競争力の源泉
- 戦略評価のための指標(KPI)の設定とBSCの活用
- ストラテジック・プランニング
- 戦略策定とフレームワークによる環境分析
- 事業戦略策定の5ステップ
- 事業戦略の目的(ゴール)と定量目標の設定
- ストラテジー(経営戦略)とは
- SWOT分析
- 暗黙知と形式知(SECIモデル)の概要
- 孫子の兵法の概要