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リスクとリターン その2

【リスクとリターンの計算方法1(分散と標準偏差)】
では、実際のリスクとリターンはどのように計算したらよいかを考えてみましょう。

 

ここでは期待収益率をもとに、分散、そして標準偏差までを計算し、そのリスクを考えてみます。

 

まず、「リスクとポートフォリオ」の項で出てきた輸出関連企業であるO社と輸入関連企業であるP社を例に考えてみましょう。

 

今後の為替レート予想、及びO社とP社の各環境における収益率の変化と期待収益率は以下の通りです。

 

 

・今後の為替レート予想
今後円高になる確率:20%
今後円安になる確率:40%
今後不変である確率:40%

 

 

・O社の収益率の変化
円高:収益が10%ダウン
円安:収益が20%アップ
不変:収益に影響はない
期待収益率:6%

 

 

・P社の収益率の変化
円高:収益が15%アップ
円安:収益が10%ダウン
不変:収益が5%アップ
期待収益率:1%

 

 

まずO社とP社それぞれの偏差を計算してみましょう。

 

ここでは収益変化が3パターンあるため、それぞれの偏差を計算します。

 

 

≪偏差≫
・O社
円高:(−10)−6 = −16 
円安:20−6 = 14
不変:0−6 = −6

 

・P社
円高:15−1 = 14 
円安:(−10)−1 = −11
不変:5−1 = 4

 

 

次は分散です。

 

分散は、偏差の2乗の加重平均です。

 

 

≪分散≫
・O社
((−16)2×0.2)+(142×0.4)+((−6)2×0.4) = 144

 

・P社
(142×0.2)+((−112×0.4)+(42×0.4) = 94

 

 

最後に標準偏差です。

 

標準偏差は√分散です。

 

 

≪標準偏差≫
・O社
√144 = 12

 

・P社
√94 ≒ 9.7

 

 

これでO社とP社の期待収益率(リターン)、標準偏差(リスク)がわかりました。

 

・O社
期待収益率:6%
標準偏差:12%

 

・P社
期待収益率:1%
標準偏差:9.7%

 

 

ここで標準偏差の考え方を学びましょう。

 

標準偏差は「σ(シグマ)」とも呼ばれ、データのばらつきを見る指標です。

 

まず、原則として統計学的に考えた場合、確率に基づいたデータのばらつきは正規分布すると仮定されます。

 

正規分布とは、データが平均値を中心として釣鐘型に分布することを言います。

 

そして平均値を中心とした「±σ」の中に、全データの68.3%が、「±2σ」の中に全データの99.5%が入ることが知られています。

 

リスクとリターン

 

よって、例えばO社の場合は期待収益率が6%に対して標準偏差は12%なので、「収益率が−6%(6−12)から18%(6+12)の間になる可能性が68.3%であり、収益率が−18%(6−12×2)から30%(6+12×2)の間になる可能性が99.5%である」ということになります。

 

これに対して、P社は「収益率が−8.7%(1−9.7)から10.7%(1+9.7)の間になる可能性が68.3%であり、収益率が−18.4%(1−9.7×2)から20.4%(1+9.7×2)の間になる可能性が99.5%である」ということです。

 

リスクとリターン

 

 

 

リスクとリターン

 

P社のほうがややばらつきが小さく、より中心が高くなることがわかります。

 

そしてO社はばらつきが大きく、中心は低くなっています。

 

これがリスクです。

 

そして例えばこれが金利が2%の国債だとどうなるでしょうか?

 

期待収益率(金利) 2%
金利がつく確率 100%
金利がつかない確率 0%

 

です。

 

この偏差と分散、標準偏差は以下のようになります。

 

 

≪偏差≫
(2−2)×100 = 0
(0−2)×0 = 0

 

 

≪分散≫
(02×0.5)+(02×0.5) = 0

 

 

≪標準偏差≫
√0 = 0

 

 

すべて「0」です。

 

よって、この場合の正規分布は以下のようになります。

 

リスクとリターン

 

これがリスクフリー(リスクがない)と言われる金融商品です。

 

一切ばらつきはなく、どんな場合でもリターンは2%です。

 

「横の広がりが一切ない = リスクがない」ということです。

 

これが標準偏差という考え方です。

 

 

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