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消費者余剰

消費者余剰

今回は消費者余剰について説明しています。

 

この文章を読むことで、「消費者余剰がどのような場面で用いられるか」や「消費者余剰の計測方法」について学ぶことができます。

 

厚生経済学の問題

 

私たちは自分が消費者になった時、その財が「もっと安くなればいいのに」と思います。

 

対して自分が生産者になると、「もっと高く売れればいいのに」と思います。

 

経済学の前提は、このような利己的な市場参加者が自分の欲求に従った結果、市場は最善の方向へ向かうというものです。

 

しかし、これは事実なのでしょうか。

 

つまり、市場が決定した需要量と供給量、そして価格は本当に適切なもので、多すぎたり少なすぎたり、あるいは高すぎたり安すぎたりはしないのでしょうか。

 

このような疑問を考える分野を「厚生経済学」と言います。

 

資源配分が経済的福祉に与える影響を研究する分野です。

 

これを考えることで、単なる「事象の観察」で終わりかねない実証的分析を、より規範的分析へとシフトさせることができます。

 

消費者余剰を考える

 

これを考える素地となるのが「消費者余剰」です。

 

消費者余剰は、「買い手が買ってもいいと思っている値段から実際に購入できた値段を差し引いた際に残る金額」を意味します。

 

この概念を理解するためのキーワードが「支払許容額」です。

 

これは「買ってもいいと思っている値段」を指します。

 

私たちは買い物をするとき、この支払許容額よりも実際の値段が低ければ購入しようとし、高ければ買いません。

 

支払許容額と同じ値段だった場合は、買うか買わないかを迷います。

 

どうして迷うのかを経済学では「買って財を得るのと、買わずにお金を残すのとは同じ価値だから」と説明します。

 

以下で具体的に見ておきましょう。

 

【例題1】
ジミヘンドリックスの使用したモデルのギター(ストラトキャスター)が1本あります。

 

それを欲しいと思う人が、AさんとBさんとCさんとDさんの4人います。

 

Aさんは5万円までなら払えると考えており、Bさんは4万円までなら払えると考えています。Cさんは2万円まで、Dさんは15000円までと決めています。

 

4人同時に店主に値段を聞いた所、彼は「5000円からスタートでオークションをしよう」と言いました。

 

<解説>
この時の支払許容額は以下の通りです。

 

A:5万円 B:4万円 C:2万円 D:15000円

 

5000円でスタートすると、全員がまだ支払許容額に余裕がある上、買い手間での競争があるので価格は釣り上がっていきます。

 

しかし、Aさんが4万円を提示した瞬間、残りの3人は購入できなくなります。

 

すると、必然的にギターはAさんのものになるので、Aさんは支払許容額よりも1万円やすくストラトキャスターを手に入れられます。

 

この状況を「Aさんは1万円の消費者余剰を得た」といいます。

 

では、これをより大きな規模で見てみることにしましょう。

 

【例題2】
オークションが始まる段になって、店主は「ちょっと待ってくれ。確かこのギター、同じのがもう1本あるんだ」と店の奥から全く同じ状態の、全く同じギターを取り出してきました。

 

「さあ、これも含めてオークションをしよう」店主はそう言いました。

 

<解説>
事態の複雑化を避けるために、「2本とも欲しい」というコレクトマニアはこの4人の中にはいないこととします。

 

であれば、このオークションはAさんかBさんのどちらかが2万円を提示した時点で終了します。

 

このときBさんは2万円の消費者余剰を得、Aさんは3万円の消費者余剰を得ます。

 

これを個人レベルではなく市場規模で見ると、「市場の総消費者余剰は5万円である」と言えます。

 

仮にギターが3本あれば、ギターの価格は15000円で決定し、AさんとBさんとCさんがそれぞれ消費者余剰を得るので、総消費者余剰は65000円です。

 

もしギターが4本なのであれば買い手間の競争は起きず、誰も価格を釣り上げようとは思わないので、スタート価格の5000円でオークションは終了し、総消費者余剰は11万円となります。

 

消費者余剰1

 

消費者余剰の測定

 

今述べた数字を整理すると次の表のようになります。

消費者余剰4

これを需要曲線で表すと以下のようになります。

 

消費者余剰2

 

この需要曲線上の点は、どの点においても全て各人の支払い許容額と同額になっています。

 

例えば、価格が50000円のときはAさんの支払い許容額の価格と同額であり、価格が40000円のときはBさんの支払い許容額になっています。

 

この時のAさん、あるいはBさんを「限界的な買い手」と呼びます。

 

価格がそれ以上になった場合に、買い手ではなくなる人をこのように言います。

 

では、このグラフで消費者余剰はどの部分を指すのでしょうか。

 

仮にギターの価格が40000円のとき、消費者余剰を得るのはAさんだけでした。

 

グラフの四角Xの部分を見てみると、ギターの本数×(Aさんの支払い許容額−商品価格)=1万円となっています。

 

あるいは、価格が20000円のとき、消費者余剰を得るのはAさんとBさんです。

 

このときの消費者余剰はX+Yとなります。

 

先ほどの計算方法を行うと、1+{2×(40000-20000)}=5万円となります。

 

これは先ほど見た市場の総消費者余剰と同じ数字です。

 

つまり、需要曲線において価格のラインよりも上で、かつ需要曲線よりも下の部分は消費者余剰の合計であると言えます。

 

価格の下落と余剰の増加

 

では、次はより一般的な市場を想定してみましょう。普通、何かの財に関して買い手が数人しかいない状況というのは考えにくいです。

 

そこにはほぼ無数の買い手がいるはずで、前掲の例のように階段状の需要曲線にはなりません。

 

正確には細かな階段があるのですが、あまりにもそれが小刻みなため、下図のような滑らかな線になります。

 

消費者余剰3

 

図1から図2のように価格が変動すると、消費者余剰もPからP+Q+Rに増加します。

 

このうちPとQは図1の時の消費者の消費者余剰です。対して図2の価格になって初めて支払い許容額を下回った人々の消費者余剰がRとなります。

 

経済システムと余剰

 

この消費者余剰は、私たちが初めに見たような厚生経済学にどのようなヒントを与えてくれるのでしょうか。

 

それは次の二つの見解を提示してくれます。

 

消費者余剰は経済システムの良し悪しを決定する要因となり得る

 

消費者余剰は経済システムの良し悪しとは無関係である

 

消費者余剰とは、買い手にとっては好ましいものに違いありません。

 

したがって、政策立案者が買い手の便益を尊重するのであれば、前者の見解が成立します。

 

対して、前者の見解が成立しない場合もあり得ます。これは政策立案者が消費者の便益を考慮しない場合です。

 

例えば、脱法ハーブの値段を行政的配慮によって下げれば、現在よりも脱法ハーブは売れるでしょう。

 

確かに、ここには脱法ハーブ常用者の消費者余剰増が起こります。しかし、この消費者余剰は全くもって経済的な福祉の向上には繋がっていません。

 

したがって、政策立案者は脱法ハーブの買い手の消費者余剰に関しての考慮を持ちません。

 

消費者余剰が肯定されるわけ

 

とはいえ、脱法ハーブのようなケースは稀です。多くの場合、消費者余剰の増加は経済的福祉の向上につながっています。

 

これは経済学の大前提と深く関係しています。

 

それは「人々は経済的に合理的である」というものです。

 

「合理的な人々が利益になると判断する消費者余剰」は、合理的に正しいと考えるわけです。

 

消費者余剰とは

 

厚生経済学の視点から需要と供給の問題を考える時、消費者余剰が一つのトピックになります。

 

消費者余剰とは、消費者の支払い許容額から実際の価格を差し引いた金額で、買い手はこの金額を基準に購入を検討します。

 

経済学の前提に基づくと買い手は合理的なので、消費者余剰が増加することは経済的福祉の向上につながります(厚生経済学的に正しい)。

 

まとめ

 

厚生経済学→資源配分が経済的福祉に与える影響を研究する。

 

消費者余剰=支払い許容額−市場価格

 

消費者余剰の計測方法→座標上において市場価格よりも上かつ需要曲線より下の面積

 

原則的に消費者余剰の増加は経済的福祉の向上につながる。

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