市場と競争(ミクロ経済学)
今回は市場と競争について説明していきます。
この文章を読むことで、理想的な競争状態や独占状態がもたらす影響について学ぶことができます。
市場・競争・競争市場
市場とは、それぞれの財をやりとりする買い手と売り手の集合体を意味します。
需要を作り出すのが買い手、供給を行うのが売り手です。
しかし、この需要と供給を考える上で忘れてはならないことがあります。
それは「競争」です。
これは市場に存在する売り手と買い手という市場参加者が、相互に影響し合うことで生産量や価格などを決定している状態を指します。
この競争が市場においてどのような状態であるかによって、市場の性質は大きく変わっていきます。
競争のある市場(競争市場)とは複数の売り手と買い手が存在しながら、1人の参加者によって需要や供給、あるいは価格が決定されない市場を言います。
供給を単独で左右できる力を持つ売り手が存在した場合、その市場は寡占市場あるいは独占市場と呼ばれ、正常な競争市場で機能する市場のシステムが不全を起こしてしまいます。
これをアダム・スミスは「市場の失敗」と呼びました。
理想的な競争状態とは
理想的な競争市場を実現するためには、次の2点が守られている必要があります。
1.販売されている財全ては完全に同一のものである
2.売り手・買い手ともに多数存在し、どの参加者についても単独で市場を左右するような力がない
1の条件が守られなければ、競争は生まれません。
例えば、フランス料理と焼きそばは同じ「食べ物」ですが、これを財として売るとなると客層や価格などがあまりにも違いすぎるため競争関係は生まれないのです。
2の条件が守られなければ前述の「市場の失敗」が発生し、正常な競争関係は築かれません。
市場はアダム・スミスの言うように「見えざる手」に導かれ、最適な需要量・供給量を決定し、価格を均衡させます。
したがって2の条件が守られている限り、市場参加者は一様に市場が決定した価格をただただ受け入れるしかありません。
このような市場参加者を「価格受容者(プライステイカー)」と呼びます。
ではここで、具体的にどのような市場が競争市場なのかを例を通じて見ておきましょう。
【例題】
たこ焼きの市場は組織化されていません。
各々が自分たちの都合にしたがって店を開け、たこ焼きを作り、それぞれの利益構造に応じて価格を決定しています。
これはもちろん買い手側にも同じことが言えます。たこ焼きを食べたい時にたこ焼き屋に行くのです。
このようにたこ焼きの売り手と買い手は誰に言われるわけでもなく、市場を形成しています。
<解説>
たこ焼き市場は理想的な競争市場に極めて近いと言えるでしょう。
とりわけ本場大阪では数多くのたこ焼き屋が散在し、それぞれが独自の、しかし似通った商品を販売しているからです。
つまり、前述の1の条件に適合するのです。また2の条件に関してもピッタリと当てはまります。
近年ではチェーン展開をするたこ焼き屋も増えてきましたが、どの売り手に関しても単独でたこ焼き業界を動かすような力は持っていません。
独占状態がもたらす影響
売り手の独占状態が発生すると、買い手にとっては非常に深刻な不利益が生じます。
例えば、ある町で「1つのお店でしか肉を購入できない」という肉の独占市場が成立してしまったとします。
すると、そのお店が価格・供給量、全ての決定権を持っているのに対し、買い手にはたとえその肉が劣悪な品質だとしても、その価格を受け入れるしか肉を買うすべがないのです。
これは逆の場合も言えることです。
仮に、この肉の90%を購入するAさんがいるとして、この人が「値段が高い。もう肉は買わない」と言えば売り手は事業が成り立ちませんから、Aさんの提示する価格が安すぎても価格を下げざるを得ないのです。
このように独占状態は、市場の正常な価格調整機能を働かなくしてしまいます。
私たちの市場
売り手と買い手が多数存在する集合体を市場と呼び、そこで相互が影響し合うことを競争と呼びます。
競争が正常に機能するには「商品の均一性」が確保され、かつ「独占・寡占状態にない」ことが必要です。
まとめ
需要=買い手
供給=売り手
需要+供給=市場
理想的な競争市場の条件→商品の均一性が確保され、独占寡占状態にない。
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