景気後退と不況
今回は景気後退と不況について説明していきます。
この文章を読むことで、「より早い景気後退・不況の脱却のために必要なこと」について学ぶことができます。
これまでの日本、最近の日本
日本は敗戦後、世界が目をみはるスピードで経済成長を遂げ、高度経済成長期(1954年から1973年の19年間)を経て、世界第2位の経済大国となりました。
しかしその後、バブル崩壊をきっかけに経済成長率は急落、現在では第2位の座を中国に奪われてしまっています。
とはいえ、昨今では少しずつ経済成長率を取り戻し、求人有効倍率や大卒就職率なども上昇の兆しにあります。
この間、日本は景気後退・景気回復、不況・好況を繰り返しています。
景気後退とは所得減少・失業増加が比較的小さい状況を指し、不況はそれが深刻になった時のことを言います。
大きな目で見てみると
日本の経済を語るとき、多くの場合戦後(1945年以降)を対象にすることが多いと思います。
しかし、もちろん「経済」はその前から存在していました。
確かにデータとしては不完全かもしれませんが、平安時代や戦国時代、江戸時代にも日本人は経済活動を行っていたのです。
例えば、財政安定のために実施された享保の改革や、緊縮財政を実施した寛政の改革、重農主義を実施した天保の改革などは、江戸期における景気後退・不況から脱却するための公共政策と位置づけることができます。
日本の景気後退と不況
1980年の日本の失業率は2.20%でした。
しかし、1991年にバブルが崩壊したことをきっかけに、1995年には3%を超え、2001年には5%を超えています。
これらの時期に新聞の紙面をにぎわせていたのは「不況」の文字。小学生でも意味がわからないまま「最近は不況だから」なんて言葉使いをしていました。
このような状況を、政府は指をくわえて見ていたわけではありません。
数多くの人が経済状況を改善しようと様々な政策を取り入れていきました。
非正規雇用に関する法令などもそのうちの一つです。
この法令が雇用環境に与えた影響は計り知れないとはいえ、少なくとも日本の経済を立て直す一端となったことは否めません。
江戸時代でも現代でも、政治家たちは絶えず経済を良くしようと知恵を絞っているのです。
経済学と政策
しかし、すべての政策が百発百中、効果てきめんというわけにはいきません。
投下した資金の割には効果が出なかったり、逆効果になったりする場合ももちろんあります。
そういった「失敗」をなくすための理論を用意するのが、経済学の役割の一つです。
国民の所得の減少や失業率の増加、あるいは経済成長率の低迷などの問題を、できるだけ確実に解決する方法を提示するための理論。
それを日々追い求めて、経済学者たちは研究に励んでいます。
そうして生み出された概念がGDPであったり、物価水準であったり、貯蓄と投資の関係といったマクロ経済学の言葉たちなのです。
しかし、これらの概念に足りないものがあります。それは「時間」という要素です。
時間という要素
もちろん、GDPや物価水準、貯蓄と投資などにも時間の概念は組み込まれています。
しかし、これはあくまで長期的な視点です。ここには短期的な視点が欠けているのです。
例えば、中央銀行が市場に対して大量の貨幣注入を行なった場合を考えてみましょう。
長期的にはいずれ貨幣の需給バランスは安定し、何事もなかったかのように経済は通常運転を続けます。
しかし、短期的には貨幣の超過供給が起こり、人々は狂ったように浪費することでしょう。
物価水準が貨幣の供給量についてこないうちは、まるで自分が本当にお金持ちになったかのように感じるからです。
この時の人々の狂乱は「世代」「時代」といった長期のデータには出てきません。
せいぜい小さな折れ線グラフの山ができる程度です。
しかし、これを短期のデータ、つまり1年1年でみていくと、折れ線グラフは人々の狂乱に従って激しく上下するはずです。
この短期の時間軸における経済の動きを予想できれば、政治家は景気後退や不況からより早く抜け出す政策を提示できます。
経済学者はそのために「総需要と総供給のモデル」を活用します。
まとめ
景気後退→所得減少・失業増加が比較的小さい状況
不況→所得減少・失業増加が深刻になった状況
より早い景気後退・不況の脱却のためには短期(1〜2年)の視点で経済動向を予測する必要がある。
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