経済の所得と支出(マクロ経済学)
今回は経済の所得と支出について説明していきます。
この文章を読むことで、「マクロ経済学の概要」と「経済における所得と支出の関係」について学ぶことができます。
ミクロ経済学とマクロ経済学
私たちの日々の消費生活は、何も三軒隣までの家計によって決定付けられているわけではありません。
消費税が決定されるのは政府の議決によりますし、それを受けてどんな価格に設定するのかは企業の裁量によります。
それらの意思決定は大きな渦となり、経済全体を動かしていき、一周まわって私たちの消費につながるのです。
この「経済全体」の動きを考えるのが「マクロ経済学」です。
マクロ経済学は次のようなキーワードで語られます。
マクロ経済学のキーワード
国内総生産・GDP
ニュースでもよく耳にするこの言葉は、特定の経済の構成員全ての人の総所得を指します。
各国が独自に計算して発表しており、その国の経済力を示す主な指標となっています。
日本の2013年度のGDPは483.1兆円です。
物価上昇率
インフレーションとかデフレーションといった言葉で語られるのが、物価上昇率あるいは下落率です。
インフレが好況、デフレが不況の指標とも言われますが、どちらも行きすぎると問題が起きます。
失業率
言葉の通り、働く力を持っているのに職を持っていない人の比率を示す数字です。
この数字が大きくなるほど国の生産状況は非効率的になっていきます。
小売販売高
商店などでの総支出額を測定したものです。
消費の動向を考える際に用います。
貿易赤字
特定の国とそれ以外の国との貿易の不均衡を示すのが貿易赤字です。
貿易の取引全体は貿易収支と呼びます。
規模が大きすぎて家計には無関係のように見えますが、非常に密接に関係してくる数字です。
ここでは一部のキーワードを紹介しましたが、もちろんこれら以外にも重要な概念や数値はたくさんあります。
どれも貿易赤字のように日頃考えもしない規模の経済的な活動を扱うのがマクロ経済学です。
マクロ経済学の問い
「なぜ日本の平均所得が多く、アフリカ諸国の平均所得が少なくなるのでしょうか。」
あるいは「物価が安定している時期と、バブル期などのように物価が乱高下する時期があるのはなぜなのでしょうか。」
「これらの問いに対して政府や家計、企業ができることとはなんなのでしょうか。」
マクロ経済学はこのような一見途方も無い質問を繰り返し行い、その答えを導いていきます。
もちろん冒頭で述べたように、ミクロ経済とマクロ経済は密接に結びついているため、これらの答えに対してミクロ経済の要素を完全に排除することはできません。
しかし、「経済全体」というダイナミックな視点を用意すると、ミクロ経済では見えない答えが出てくるのもまた確かなのです。
経済における所得と支出の関係
マクロ経済学の重要な指標の一つ、「GDP」について考えてみましょう。
GDPは家計で言えば「所得」です。
たくさん儲けていれば羽振りが良くなったりするように、国もGDPが増えると豊かになっていきます。
GDPは総所得と総支出、両方を測定します。
これは経済全体において、「所得と支出は同値である」という前提に基づいています。
これについて具体例を見ておきましょう。
【例題】
Aさんがラーメン屋に行って、特製つけ麺特盛全部載せを1300円で注文します。
この時の経済事象を所得と支出の関係から考えましょう。
<解説>
この場合Aさんからすれば1300円の支出ですが、ラーメン店からすれば1300円の所得となります。
これと同じ状況が企業と家計、政府といった経済の参加者間で絶えず起こっているのです。
もちろん実際は下図のような単純なフローではありませんが、経済全体で見れば先ほどの「所得と支出は同値である」という結論になります。
経済の所得と支出(マクロ経済学)
経済全体の動きを考えるマクロ経済学では、GDPや物価上昇率・下落率といった大きな規模の事象を示す数値を扱います。
これらを考えることで、ミクロ経済だけでは見いだせないダイナミックな視点を提供します。
その中でも重要なGDPは、国全体の総所得を示す数値で、これは同時に総支出を示す数値でもあります。
経済全体でみると「所得と支出は同値」なのです。
まとめ
マクロ経済学はミクロ経済学では見ることのできないダイナミックな視点を提供する。
経済全体でみると所得と支出は同値。
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