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貯蓄インセンティブ

今回は貯蓄インセンティブについて説明していきます。

 

この文章を読むことで、政策と貯蓄の関係について学ぶことができます。

 

政策と貯蓄の関係

 

経済学の十大原理の中には「一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している」とあります。

 

これから「生産性が生活水準に如何にダイレクトに関わってくるか」がわかると思います。

 

そして、この生産性は貯蓄と投資の数値に大きく左右されます。国が繁栄するためには貯蓄は非常に重要なファクターなのです。

 

であれば、政府としてはこの「貯蓄を増加させるための政策」を講じる必要が出てきます。

 

そこで利用したいのが、「人々はさまざまなインセンティブに反応する」という経済学の十大原理です。

 

つまり、貯蓄を増加させるためには、貯蓄したくなるようなインセンティブを国民に対して与えてやれば良いのです。

 

貯蓄を抑制してしまう場合

 

貯蓄したくなるようなインセンティブは「正のインセンティブ」ですが、逆の「負のインセンティブ」も存在します。

 

つまり、「貯蓄なんてやってられるか!」と思わせてしまうインセンティブです。

 

【例題】
Xさんは将来のためにと思って貯蓄をはじめました。

 

そこで、彼は年率9%の利子で30年満期の債券を100万円分購入します。

 

Xさんの国は利子所得や配当所得には税金がかからないので、30年後にこの100万円は1326.8万円にまで膨らみます。

 

<解説>
このままだとかなり割のいい投資ですが、もしXさんの国において利子・配当所得に対して33%の税率を適用された場合、どうなるかを考えてみましょう。

 

すると、利子の3分の1が税金として取られてしまうので、実質の利子率が6%にまで下がってしまいます。

 

利子率が6%の場合、Xさんの100万円は30年後に574.3万円で止まってしまいます。

 

最後に手元に残るのは、無税の場合の半分以下なのです。

 

 

このような政策を実施していると、Xさんのような人からすれば「貯蓄なんてやってられるか!」と思っても無理はありません。

 

しかし、実際にこういった負のインセンティブ政策を実施している国は少なくなく、アメリカはこれが原因の一つとなっているのか「貯蓄率が非常に低い国」として知られています。

 

【例題2】
貯蓄を増加させるには「正のインセンティブ」、すなわち「貯蓄奨励策」を講じる必要があります。

 

500万円までの利子・配当所得などには税金をかけないとか、500万円以上の預金高の人には特別に高い利子率を適用できるよう国から補助金を出すだとか、そういったものです。

 

では、実際にこの政策を実施した場合の市場の変化について座標平面で見ておきましょう。

 

<解説>

 

貯蓄インセンティブ1

 

政策を講じた時点でまず起きるのは、矢印1の現象です。

 

貯蓄量が増えるということは、単純に貸付資金の供給量が増えるということです。

 

そのため供給曲線は右方向にシフトします。

 

対して需要曲線には政策は直接的な影響を与えないため、この時点では需要には変化はありません。

 

次に起きるのが矢印2の現象です。

 

貸し手=供給量が増加したために利子率は低下します。

 

そして、矢印3では利子率の低下に伴って需要量が増加し、新たな均衡点に落ち着きます。

 

結果として貯蓄奨励策は貯蓄を増加させ、利子率を低下させ、その結果投資額を増加させることができるのです。

 

政策は有効なのか?

 

今見たように、「貯蓄奨励策が経済にとって良い効果を生む」という点は間違いありません。

 

しかし、経済学も「どのような施策を講じるべきか」まではまだ解答を出せずにいます。

 

というのも、施策の如何によっては公平性を損なう場合があるからです。

 

経済は社会全体の厚生を最大化するためにあるわけで、もし効率性を重視して公平性を損なうようなことがあれば、逆に経済厚生を縮小してしまうかもしれないからです。

 

よって、各国では利子所得や配当所得に課税をする状況となっているのです。

 

まとめ

 

政策によって貯蓄への正のインセンティブを与えれば生活水準は上がる。

 

利子・配当所得などに課税すると貯蓄への負のインセンティブとなる。

 

貯蓄奨励策を講じると貯蓄は増加し、利子率は低下し、その結果投資額を増加する。

 

貯蓄奨励策の有効性は認められているが、公平性の観点から運用するのは難しい。

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