価格と資源配分
今回は価格と資源配分について説明していきます。
この文章を読むことで、価格の持つ「資源配分の問題に解を出すための機能」と「財の生産者、生産量を決定する機能」について学ぶことができます。
価格の決定が資源配分を行う
経済において資源の希少性は常に大きな課題です。
5人の友人グループの目の前に1つのケーキがあったとして、いくら食べても無くならないのであれば5人が平等にそのケーキを食べられますが、現実にはそうはいきません。
給料日前で買い足せないとか、外が吹雪だから買いに出られないとか、いろいろな理由でケーキを無限に食べられる状況は実現できないのです。
であれば、この1つのケーキ(資源)を誰がどれだけ食べるのか、そしてそれはどのように決定されるのか(配分)という問題を考えざるを得ません。
この問題を考えるにあたって、「価格」は非常に有効な手段の一つです。
価格は、「需要と供給という市場の大原理から導かれる科学的な価値の指標」となりえるからです。
ではこれについて、具体例を見ておきましょう。
【例題1】
六本木ヒルズにあるマンションの最上階の部屋(資源)の配分を考えてみましょう。
部屋数は1つしかなく、価格は12億円です。
今この部屋に住みたいという人が3人いたとします。
Aさんはその部屋に12億円出すと言っています。対してBさんは1億円なら出せると言っており、Cさんはできるならタダで住みたいと言います。
<解説>
世界にこの3人しか当該の部屋に住みたいと思わず、そしてその状態が未来永劫変わらないとするのであれば、この場合の資源配分はAさんに行われるのが市場の原則です。
六本木ヒルズに住んでいるというステータスを得るためにいくら出せるのか、それを需要と供給の原則に従って調整すると、この例では12億円という均衡価格が決定されるのです。
このように、価格は経済の直面している資源配分の問題に解を出すための機能を持っています。
個人の意思決定は価格に依存する
また、価格はある財の生産者、生産量を決定する機能も持っています。
例えば、5人の友人グループの目の前に小麦粉と砂糖、牛乳と卵、バターがあったとして、誰がどれだけのケーキを作るのか、あるいは誰がどの工程を担当するのかは決めにくい問題です。
しかし、誰かがケーキを作らなければ、当然ケーキは食べられません。
では、誰がこの問題を解決してくれるのでしょうか。
その答えの一つが「価格」なのです。
【例題2】
パンが主食の村で、唯一のパン屋の主人が亡くなりました。村人はどうしてもパンが食べたいのですが、パン職人になりたがる人がいません。
それは、パン屋がその村でも最も収入の低い仕事だったからです。
しかし、パンが食べられないのは辛い。村長は頭を抱えます。
<解説>
この状況を需要と供給、そして価格から説明すると次のようになります。
これは「パン屋」という職業を財として、賃金を価格、なりたい人を取引量として考えます。つまりパン屋になっても賃金が低いため、なりたい人が少ないのです。
これを解決するためには、村長が補助金などを出して賃金(価格)を上げ、なりたい人を増やす必要があります。
これは、個人の意思決定が価格(賃金)によって左右されていることを示します。
村人の中には「他の仕事に就いているけれども生活が苦しい人」もいるでしょう。
その人に対して「今の給料よりも高い賃金でパン屋をやってくれ」と言って頼めばいいのです。
彼は今の仕事の賃金とパン屋の賃金を比較して、自分の労働力がより高く売れる方に転職するでしょう。
資源配分のプロセス
現在の経済学において、資源の希少性からくる配分の問題は価格が決定しています。
また、同時に「財の生産量」や、「財の生産のための労働力」も価格が決定していると考えられます。
これらは総じて価格=財の価値という考えに基づいています。
モノ(マンション、労働力)を手に入れるにはその価値に見合ったカネ(代金、賃金)が必要ということです。
まとめ
資源の希少性が資源配分の問題を喚起する。
資源配分は価格が決定する。
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