中央銀行とは
今回は中央銀行について説明していきます。
この文章を読むことで、「なぜ中央銀行が必要か」「中央銀行の役割」について学ぶことができます。
なぜ中央銀行が必要か
日本には日本銀行、アメリカには連邦準備制度、イギリスにはイングランド銀行など、世界各国には「中央銀行」と呼ばれる銀行が存在します。
この銀行には様々な特権が与えられており、経済を左右する施策を任されています。
このような中央銀行はなぜ必要なのでしょうか?
それは「市場が不換紙幣を用いているから」です。
不換紙幣とは、1万円札や500円玉のような紙幣や硬貨などの本源的価値のない貨幣を指します。
この不換紙幣が貨幣として通用しているのは、政府の命令や宣言があるからです。つまり、不換紙幣とは権力あってのものなのです。
例えば、昔のヨーロッパのように数多くの王国が乱立していた時代には、それぞれの国で独自の不換紙幣を作っていたために非常に非効率な経済になっていました。
これに比べると、現在のユーロ体制は無駄の少ないものと言えます。
このシステムの規制を担当するのが「中央銀行」なのです。
日本の紙幣には「日本銀行券」と印字されていますが、これは日本銀行が日本の貨幣にかかわるすべてを管理している印でもあるのです。
中央銀行の役割
では、この中央銀行が具体的にどのような役割を担っているのかを見ておきましょう。
一つ目が銀行システムの健全性保持、二つ目が貨幣供給の調節です。
銀行システムの健全性保持
日本の中央銀行「日本銀行」の役割としてよく言われるのが、「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」です。
これらのうち、「銀行の銀行」がこの銀行システムの健全性保持を支える考え方です。
中央銀行は民間の銀行やその他の金融機関が預金をし、かつ融資を受けることができる唯一の機関です。
日本の金融機関同士の金融取引決済も、日本銀行の預金の振替によって行われています。
これは中央がすべて統括してやっているのではなく、全国にある32の支店が各地で分担して行っています。
支店群は、他にも地域経済の調査や地域金融機関の経営状態を把握することで、銀行システムの健全性を保持する仕事を担っています。
貨幣供給の調節
「発券銀行」「政府の銀行」としての役割が、貨幣供給の調節という中央銀行の最も重要な役割と密接に関わっています。
発券銀行とは「国内で唯一紙幣や硬貨を製造することができる銀行である」という意味です。
また、政府の預金口座の管理・税金や年金の受払、国債に関する事務までを取り扱っているため、政府の銀行と呼ばれています。
このような性質から、中央銀行のトップはその国の政策に直接かかわっていることが多くなっています。
日本銀行の場合は国会の同意を得て、内閣によって任命される「政策委員会」なるものが設けられており、金融政策の運営方針等を決定しています。
日本銀行が行う金融政策の中で、最もメジャーなものが「公開市場操作(オペレーション)」です。
「買いオペレーション(買いオペ)」「売りオペレーション(売りオペ)などと呼ばれています。
前者では日本銀行がお金を印刷し、そのお金で民間の国債を購入することにより、市場に貨幣を供給します。
これによって貨幣供給量を増加させ、貨幣価値の高騰を防止できます。
後者の場合は逆で、日本銀行の持つ国債を民間に対して売却し、市場から貨幣を吸い上げます。
これにより、市場の貨幣供給量を縮小し、貨幣価値の下落を防止するのです。
このオペレーションについては、下図を見てイメージで理解するようにしましょう。
中央銀行とは
世界各国に存在する「中央銀行」は、政府の信託が必要な不換紙幣システムには必要不可欠なものです。
中央銀行は「発券銀行」「銀行の銀行」「政府の銀行」などの言葉に現れるように、銀行システムの健全性の保持と、貨幣供給の調節という重要な役割を担っています。
民間金融機関の経営状態の把握、金融政策の決定や貨幣価値のコントロールなど、不換紙幣経済にとってなくてはならない役割を果たすのが中央銀行なのです。
まとめ
中央銀行が必要な理由→不換紙幣システムのコントロールが必要なため
中央銀行の役割→銀行システムの健全性保持・貨幣供給の調節
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