経営を学ぶ-経営学・MBA・起業・ネットビジネス・リアルビジネスなど

経営を学ぶ~経営学・MBA・起業~

市場の効率性

今回は市場の効率性について説明していきます。

 

この文章を読むことで、「市場の効率性を測る指標」や「公平な市場、効率的な市場」について学ぶことができます。

 

市場の効率性をはかる指標

 

市場の効率性をはかるには総余剰について考える必要があります。

 

資源配分の影響を研究する厚生経済学にとって、消費者余剰と生産者余剰は重要なデータです。

 

前者は消費者にとっての利益となり、後者は生産者にとっての利益となります。

 

政策立案者はこの二つを分析指標として、両者の利益を最大にする施策を打ち出します。

 

その時、彼が考えるのは「自由市場における均衡点が果たして最善なのか」という問題です。

 

このように、市場に参加するすべての人の経済的福祉を最大にしようと考える政策立案者を「博愛的統治者」と呼びます。

 

この統治者は、消費者余剰と生産者余剰の合計である総余剰を指標として施策を講じます

 

総余剰の計測方法

 

総余剰は次の計算式で求められます。

 

1.消費者余剰=買い手にとっての価値−買い手が支払った金額

 

2.生産者余剰=売り手が受け取った金額−売り手の費用

 

3.総余剰=消費者余剰+生産者余剰

 

(1〜3より)

 

4.総余剰=(買い手にとっての価値−買い手が支払った金額)+(売り手が受け取った金額−売り手の費用)

 

この時「買い手が支払った金額」と「売り手が受け取った金額」は同じものなので、4は次のように示されます。

 

4.総余剰=買い手にとっての価値−売り手の費用

 

すなわち、総余剰は買い手にとっての価値が高いほど、そして売り手の費用が安いほど大きくなります。

 

なお、売り手の費用はこの場合「機会費用」と考えるべきであり、機会費用の中には材料費・設備費以外にも売り手の利益なども含まれます。

 

これは受取許容額と同義です。

 

効率的な市場

 

博愛的統治者は資源配分によって総余剰を最大化したいと考えます。

 

この状況を実現しているとき、その配分は効率的であるといいます。

 

効率的な状況が実現できていないということは、その配分の中にどこか無駄な要素が入り込んでいると考えられます。

 

具体的にどのような状況を効率的と呼び、どのような要素が入り込むと無駄が発生するのかを見ておきましょう。

 

【例題1】
ある町に2軒のカレー屋があります。

 

2軒のカレーは全く同じ価格と質、量ですが、カレー屋Aの機会費用は1杯200円、カレー屋Bの機会費用は1杯400円でした。価格はどちらとも600円とします。

 

ある日カレー屋Aの店主が「毎日毎日スパイスばっかり。もうカレーなんて作るのはうんざりだ」と言ってカレー屋を閉店し、パン屋をはじめます。

 

すると、その町のカレー屋はBだけになり、カレーを食べたい町民はカレー屋Bのカレーを食べるしかなくなりました。

 

<解説>
この町のカレー市場は効率的ではありません。

 

全く同じものを最も少ない費用で作れる人が、自分の得意な分野を捨てて別の分野に従事してしまっているためです。

 

「総余剰=買い手にとっての価値?売り手の費用」 の計算式に当てはめて考えてみましょう。

 

カレーの買い手にとっての価値は600円です。対して売り手の費用はAの場合は200円、Bの場合は400円です。

 

前者の資源配分の総余剰は400円、後者は200円。実に200円もの無駄が生じています。

 

博愛的統治者がこの町民の経済的福祉の最大化を図るのであれば、何とかしてカレー屋Aの店主にカレー屋を再開してもらうか、機会費用200円で作る方法をカレー屋Bの店主に教授してもらうかしなくてはいけません。

 

公平な市場

 

博愛的統治者は何も効率性だけを重視するわけではありません。

 

彼は政策立案時に「公平さ」も加味します。

 

たとえ総余剰がいくら最大化されていても、消費者ばかりが得をしていて生産者はそれほど得をしていないような場合、博愛的統治者はその状況を良しとしないことがあります。

 

先ほどのカレーの例で言えば、無理やりカレー屋Aの店主をカレー屋に戻すと確かに消費者にとっては利益が大きくなります。

 

しかし、Aの店主にとってはパン屋を辞めるという大きな機会費用を支払っています。

 

このやり方では消費者は幸せになれても、店主は幸せにはなれません。

 

公平かどうかの判断は実証的分析(科学的視点)ではなく規範的分析(価値判断)なので、とても複雑な問題です。

 

しかし、政策立案者が効率性の他に公平性を加味しているという点には注意しておきましょう。

 

市場の効率性1

 

市場の効率性

 

市場の効率性は総余剰によって測定します。

 

博愛的統治者はこの総余剰(買い手にとっての価値-売り手の費用)を最大化しようと政策を立てます。

 

しかし、政策立案者が効率性ばかり重視すると公平性が損なわれてしまいます。

 

政策は効率と公平のバランスを常に考えて立てられます。

 

まとめ

 

市場の効率性は、総余剰が最大化されているかどうかで判断する。

 

総余剰=買い手にとっての価値ー売り手の費用

 

政策立案は効率性の他に公平性も考慮に入れて行われる。

関連ページ

経済学の十大原理
経済変動の重要な3事実
金融資源の国際的フロー
財の国際的フロー
国際的フローの貯蓄と投資の関係
日本は貿易すべきか
均衡変化の分析
財政赤字と財政黒字
中央銀行とは
古典派の二分法と貨幣の中立性
閉鎖経済と開放経済
会社の形態
GDPの構成要素
消費者物価指数とは
消費者余剰
総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響
需要とは
経済モデル
インフレ影響に対する経済変数補正
経済成長と公共政策
経済の所得と支出(マクロ経済学)
経済学の重要な恒等式
経済学とは
経済学者の意見が一致しない理由
効率と公平のトレードオフ
弾力性と税の帰着
弾力性とは
実証的分析と規範的分析
ITを活用した経営戦略(コピー)
失業の測定方法
株式市場と債券市場
経済学の重要な恒等式
総需要曲線
短期の総供給曲線が右上がりの理由
均衡とは
市場均衡の評価
外部性に対する公共政策
外部性とは(厚生経済学)
金融仲介機関とは
金融システムとは
摩擦的失業と構造的失業
GDPデフレーターとは
GDPは経済厚生の尺度として妥当か
GDP(国内総生産)とは
GDPデフレーターと消費者物価指数
総需要曲線
投資インセンティブ
職探しと失業保険
貸付資金市場
市場と競争(ミクロ経済学)
市場の効率性
生計費測定の3つの問題
失業の測定方法
ミクロ経済とマクロ経済
総需要と総供給のモデル
貨幣価値と物価水準
貨幣の流通速度と数量方程式
貨幣とは
貨幣市場の均衡
貨幣数量説と調整過程の概略
純輸出と純資本流出の均等
戦後の日本経済の歩み
価格規制(政府の政策)
価格と資源配分
生産者余剰
生産可能性と比較優位、および特化・交易
生産性とは
購買力平価(PPP)とは
実質為替相場と名目為替相場(円高と円安)
実質GDPと名目GDP
実質利子率と名目利子率
景気後退と不況
貯蓄インセンティブ
貯蓄と投資
科学的な経済学
短期の経済変動
株式市場と債券市場
株価指数とは(日経平均、TOPIX、ダウ平均、FTSE)
供給とは
税と公平性
税金とは
税と効率性
経済学の主要学説
短期の総供給曲線が右上がりの理由
短期の総供給曲線がシフトする理由
総供給曲線
失業とは
グラフの用法
経済の波
世界各国の経済成長

HOME
HOME メルマガ登録 プロフィール お問い合わせ