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総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響

総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響

今回は、総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響について説明していきます。

 

この文章を読むことで、総需要曲線と総供給曲線、それぞれのシフトの影響とそれに対して政府ができることについて学ぶことができます。

 

考察の前提

 

総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響について考える前に、理解しやすいよう「考察のための前提」を決めておきましょう。

 

総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響1

 

この図は、「総需要曲線」と「長期・短期の総供給曲線」を、座標平面上に描いたものです。

 

経済は最初、長期の均衡点=Xにあるとします。

 

今、この点で3つの曲線が交わっているということは、たとえ短期総供給曲線の変動が起きても「時間が経てば長期総供給曲線と同じ点に落ち着く」ということを示します。

 

また、3つの曲線が1点で交わるということは、「期待物価水準と実際の物価水準の一致」を意味します。

 

<前提>

 

・経済は最初、長期均衡点にある。

 

・短期総供給曲線は時間が経てば長期総供給曲線と同じ点を取る。

 

・3つの曲線が交わる時、期待物価水準と実際の物価水準は一致している。

 

では、これらを元に、まずは「総需要曲線のシフトの影響」を見ておきましょう。

 

総需要曲線のシフトの影響を見る方法

 

シフトの影響を見るには、「ミクロ経済における均衡変化の分析」に使った3段階アプローチが有効です。

 

1.ある出来事が需要曲線・供給曲線どちらをシフトさせるのか

 

2.そのシフトはどちらの方向に起きるのか

 

3.曲線のシフトはどのような均衡変化を起こしたのか

 

しかし、これだけでは長期と短期の違いがわからないため、4つ目の段階を付け加えます。

 

4.短期から長期の均衡への変化はどのように起きるのか

 

ではこの4段階のアプローチを使って、総需要曲線がどのような影響を与えるのかを概観してみましょう。

 

総需要曲線のシフトの影響

 

「この国はこのまま行くと確実に50年後財政破綻を起こします」という信頼できる予想がニュースで報道されたとします。国内は一気に暗いムードになります。

 

さて、このニュースは経済にどのような影響を及ぼすでしょうか。

 

第1段階:ニュースは支出に影響し、総需要曲線に影響を及ぼす。

 

@企業や家計の支出が抑制される

 

初めに起きるのが、企業や家計の支出の抑制です。

 

これから経済が縮小するということがわかれば、誰もが不安になりお金を使わなくなります。

 

家計は貯蓄を増やし、利子率も低下するかもしれませんが、企業も投資を行おうとは思いません。

 

A総需要が低下する

 

企業や家計の支出が抑制されるということは、そのまま経済全体の需要が低下するということです。

 

総需要の減少は、総需要曲線を左方へシフトさせはじめます。

 

第2段階:どんな物価水準であろうと需用量が減少するため、総需要曲線は左方へシフトする。

 

B総需要曲線が左方へシフトする

 

総需要曲線が左方へシフトすると、短期における均衡点がXからYへと移動します。(下記画像)

 

第3段階:XからYへの移行が起き、物価水準と産出量を下落させる。

 

C短期における総供給量と経済全体の産出量が減少する

 

この時短期の均衡点Yでは、ニュースの発表がある前よりも産出量を減少させ、物価水準をも低下させています。

 

短期的な目で見たとき、経済的に悲観的な状況は経済を縮小させます。

 

このとき、人々は経済の急激な変化に対し順応できていない状態です。

 

D失業者が増え、所得が減少する

 

経済が縮小するということは、仕事が減り、失業者が増えるということです。

 

また、失職をしなくても労働者の所得は減少し、ただでさえ落ち込む状況に拍車をかけます。

 

第4段階:物価水準は低下したが、産出量は変化しなかった。

 

E短期均衡から長期均衡への移行が起きる

 

しかしニュース発表から時間が経つと、徐々に期待物価水準と実際の物価水準との間にギャップがなくなってくるため、均衡点の移動がはじまります。

 

それがYからZへの移動です。このとき、物価水準はXと比べて低下しているものの、産出量は同じ数値になっています。

 

この頃になると家計も企業も物価の下落に順応し、名目所得は減少しているものの、実質所得は依然と変わらない値に落ち着いています。

 

つまるところ、総需要のシフトを長期的な目で見れば、名目変数である「物価水準」を変化させるだけで、実質変数である「産出量」には変化を及ぼさないというわけです。

 

総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響1

 

政策立案者は何ができるのか@

 

ここまでは市場はその参加者のみで動かされていましたが、ここで「政府」という第三者を想定するとどうなるでしょうか。

 

第3段階のXからYの移行がはじまり、経済が景気後退へ向かうタイミングで、総需要刺激策を政府が講じるとしましょう。

 

Y=C+I+G+NY(産出量=消費+投資+政府支出+純輸出)なので、Gが増加し貨幣供給量が大きくなると財・サービスの需要量が増加します。

 

すると、総需要曲線は右方へとシフトするため、Bのシフトをなかったことにできるのです。

 

これはDの失業者や給与が減る人たちの苦しみを軽減できます。

 

総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響3

 

総供給曲線のシフトの影響

 

次に、総供給曲線がシフトした場合の経済への影響を考えましょう。

 

ある日、突然アラブの石油王が声をそろえて「もう石油の輸出を止める」と言ったとしましょう。

 

全世界の大部分の石油資源が流通を止め、石油の値段は爆発的に跳ね上がります。

 

この時、別のある国の経済はどのように変化するでしょうか。

 

第1段階:石油輸出停止は生産費用の増加を招き、総供給曲線に変化を与える。

 

1.企業の生産コスト増

 

石油は現在、世界各国の主要産業になくてはならないものです。

 

そのため、石油価格の高騰はダイレクトに企業の生産費用の増加を招きます。

 

費用が増加すれば儲けが少なくなるため、企業は生産量を縮小します。

 

第2段階:全ての物価水準で産出量が減少するため、左方へとシフトする。

 

2.総供給曲線が左方へシフトする

 

生産性は変化しないため、単純に1製品あたりの費用が上がります。

 

これはたとえ物価が極端に低くても極端に高くても同じなので、一律にその物価水準でも供給量は低下するので、左方へのシフトとなります。

 

第3段階:短期おいてはスタグフレーションを起こす。

 

3.産出量減少・物価高という状況が発生する

 

均衡点は短期においてXからYへの移動をします。

 

すると、生産量は減少しているにもかかわらず、物価が上昇するという状況が発生します。

 

生産量の縮小をスタグネーション、物価の上昇をインフレーションと呼ぶことから、この状況をスタグフレーションと言います。

 

「国は貧乏になるのに物価が上がる」という最悪の事態です。

 

第4段階:最終的に元の産出量・物価に落ち着く。

 

4.企業・家計が期待物価水準を上げ、名目賃金を引き上げる

 

これに対する最悪の選択肢の反応が、期待物価水準を引き上げることです。

 

前回説明したように、期待物価水準を引き上げると名目賃金が増加します。

 

これをもって企業や家計は物価の上昇に対応しようとしますが、これは状況を悪化させます。

 

5.企業の生産コスト増に拍車がかかる

 

名目賃金をあげれば、当然のごとく企業の生産コストはさらに増加します。

 

石油価格の高騰であえいでいる財務状況に追い打ちをかけるようなものです。

 

6.短期の総供給曲線がさらに左方へシフト

 

すると、石油価格高騰で左方へシフトしていた総供給曲線がさらに左方へとシフトします。

 

7.賃金・物価スパイラルが発生する

 

ここからは泥沼で、さらに上昇した物価に対応するためにさらに名目賃金を上げ、それに伴って総供給曲線はどんどん左へとシフトしていく…という「賃金・物価スパイラル」に陥ります。

 

8.失業率が高まり、名目賃金の上昇に歯止めがかかる

 

しかし、このスパイラルがいつまでも続くわけではありません。

 

失業者がどんどん増えて労働組合に交渉力がなくなり始めると、企業側が「これ以上は上げない」と突っぱねることができるようになります。

 

すると、賃金上昇がストップします。

 

9.名目賃金の低下・企業利益の増加

 

企業側が発言力を強めると、高くなりすぎた給料を引き下げる圧力をかけられます。

 

すると、コスト面の負担が軽減されるので、企業の利益が回復し始めます。

 

10.短期の総供給曲線が右方へシフト

 

企業利益が回復し始めると必然的に供給量が増加するので、総供給曲線は右方へとシフトを始めます。

 

11.物価が落ち着き始め、産出量が自然水準へ近づく

 

元の総供給曲線に近づくにつれて物価が元の水準にもどっていきます。

 

すると、産出量も元の長期の産出量に近くなっていきます。そして、最終的には物価・産出量ともにもとどおりになります。

 

つまるところ、長期における総需要曲線のシフトは、経済に対して何ら変化をもたらさないということになります。

 

政策立案者はなにができるのかA

 

しかし、ここでも政府が介入すると状況が変わります。

 

政府は総供給曲線が右方へシフトするのに合わせて総需要拡大政策を講じます。

 

すると、YからZへの均衡点シフトが起きるため、産出量は自然水準で落ち着きますが、その反面物価はさらに上昇してしまいます。

 

つまり、スタグフレーションの被害を最小最短で止めるためには、インフレーションを甘んじて受ける必要があるということです。

 

まとめ

 

<総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響を考察する際の前提>

 

・経済は最初長期均衡点にある。

 

・短期総供給曲線は時間が経てば長期総供給曲線と同じ点を取る。

 

・3つの曲線が交わる時、期待物価水準と実際の物価水準は一致している。

 

<総需要・総供給曲線のシフトの影響を分析するための4段階>

 

1.ある出来事が需要曲線・供給曲線どちらをシフトさせるのか

 

2.そのシフトはどちらの方向に起きるのか

 

3.曲線のシフトはどのような均衡変化を起こしたのか

 

4.短期から長期の均衡への変化はどのように起きるのか

 

<総需要曲線のシフトの影響>

 

第1段階:支出の抑制は総需要曲線に影響を及ぼす。

 

第2段階:どんな物価水準であろうと需用量が減少するため、総需要曲線は左方へシフトする。

 

第3段階:XからYへの移行が起き、物価水準と産出量を下落させる。

 

第4段階:物価水準は低下したが、産出量は変化しなかった。

 

<総供給曲線のシフトの影響>

 

第1段階:生産費用の増加は総供給曲線に変化を与える。

 

第2段階:全ての物価水準で産出量が減少するため、左方へとシフトする。

 

第3段階:短期においてはスタグフレーションを起こす。

 

第4段階:最終的に元の産出量・物価に落ち着く。

 

<政府ができること>

 

政府支出を増やして総需要の拡大を図る

 

→総需要曲線がシフトするときの効果:失業や所得低下の悪影響を軽減できる。

 

→総供給曲線がシフトするときの効果:インフレーションを発生させ、産出量への影響を小さくできる。

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