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経済モデル

今回は経済モデルについて説明していきます。

 

この文章を読むことで、経済モデルの概要と「フロー循環図」「生産可能性フロンティア」について学ぶことができます。

 

経済モデルの役割

 

経済モデルは図や式で出来ている「経済を簡略化したもの」を指します。

 

経済的事象を簡単に理解するためには、現実はあまりに複雑で余計な情報が多すぎます。そうして理解が妨げられるのを回避するべく、経済学は経済モデルを提出するのです。

 

これは生物学が人体模型を使ったり、骨だけの図像、筋肉だけの図像、臓器だけの図像を使ったりするのと同じです。

 

本来人間の体は毛細血管をはじめとする微細な器官で覆われていますが、それでは骨の動きや筋肉の動きを理解するには余計な情報がありすぎます。

 

そこで骨の動きを理解するためには骨だけを、臓器の動きを理解するために臓器だけを取り出し、あとのものを捨象するのです。

 

これと同じことを経済学は経済モデルで行うのです。

 

第1のモデル:フロー循環図

 

最初に説明するのは「フロー循環図」と呼ばれる経済モデルです。

 

このモデルは家計と企業だけにおける経済的取引を網羅的に理解するために、その他の情報を全て切り落としたものです。

 

企業は、生産要素と引きかえに労働力に対する賃金や土地の賃貸料、投資に対する利潤などを提供します。

 

対して家計は、企業で働くことで労働力を提供したり、土地を貸したり投資をしたりして、生産要素を企業に売ります。それと引きかえに給料や賃貸料という形で所得を得るのです。

 

そうして得た所得を基に、家計は財やサービスを購入します。

 

この財やサービスは、企業が生産要素を基に生産したもので、企業はこれを販売することで収入を得ています。

 

こうしてぐるぐると企業と家計の間のお金と財やサービスが流れている様子を理解しやすくしたものがフロー循環図です。

 

経済モデル1

 

※生産要素⇒企業が財やサービスの生産に使う「労働」・「土地」・「資本」。生産要素市場では売り手は家計に、買い手は企業になる。

 

※財・サービス市場⇒家計が買い手、企業が売り手の市場。日常的な市場のイメージ。

 

【例題1】
小学校3年生のAくんが駄菓子屋で100円のカップ麺を買った時の経済の動きをフロー循環図を使って説明してみましょう。

 

<解説>
Aくん(=家計)は100円のお金(=支出)と引きかえに駄菓子屋(=財・サービス市場)からカップ麺(=財)を手に入れました。

 

この100円は駄菓子屋=企業の収入となります。

 

駄菓子屋はこの100円をアルバイトの女子高生に賃金として支払ったり、土地を借りている大家さんへの賃貸料として支払ったりするでしょう。

 

これは生産要素市場での「労働」・「土地」・「資本」購入なので、女子高生や大家さんの所得となります。

 

Aくんの100円はこのあと女子高生のランチに使われるかもしれませんし、大家さんの晩酌の代金になるかもしれません。

 

そして、そこでもまた企業と家計間のフロー循環図が描くことができます。

 

フロー循環図が切り捨てているもの

 

フロー循環図においては自国や他国、企業間の取引、複数企業と家計の取引といったものは無視されています

 

仮に前掲の女子高生がファストフード店でランチを購入した場合、そこには消費税(国と企業の取引)が含まれ、あるいはアメリカの麦農家からの小麦粉の仕入れ代金が含まれます(企業間の取引)。

 

これらの情報は、フロー循環図の目的とする交易関係の基本構造の理解には不要なため、切り捨てられているのです。

 

フロー循環図は何を語るか

 

経済モデルは特定の経済事象を理解するために、必要な情報だけを抽出して作られた図や式です。

 

このうち最も単純なものの一つが「フロー循環図」です。

 

企業と家計だけに絞り、そこで行われる交易関係を図示したもので、経済の最も基本的な仕組みを理解するのに役立つモデルです。

 

複雑な経済構造を考える際にも、このフロー循環図はその基礎となります。

 

第2のモデル:生産可能性フロンティア

 

第2の経済モデルとして紹介するのは「生産可能性フロンティア」と呼ばれるモデルです。

 

これは数学を基にして作成されたモデルの中でも最も単純なモデルで、特定の経済が生産できる財の組み合わせについて考える際に使うものです。

 

生産可能性フロンティアは、トレードオフ、機会費用、効率性、希少性、経済成長という5つの経済の基本的な考え方を学ぶのに最適のモデルです。

 

もちろんこれをそのままビジネスに役立てることはできませんが、このモデルによって経済の基本的な構造を理解していれば、より複雑なモデルや事象に行き当たった際に比較的スピーディにアクションにつなげられるでしょう。

 

生産可能性フロンティアを理解する

 

例えば、ここにおにぎりとたこ焼きを生産する経済があったとします。

 

経済モデル2

 

おにぎりだけに全ての生産要素と生産技術を注ぎ込んだ場合、この経済は3000個のおにぎりを生産できます。

 

対してたこ焼きだけにすべてを注ぎ込んだ場合、5000個のたこ焼きを生産できます。

 

生産可能性フロンティアの両端は、この状況を示しています。

 

対してA点ではおにぎりを2000個、たこ焼きを3500個生産できています。

 

あるいはA点よりも生産要素や技術をおにぎりサイドに移譲すれば、おにぎりが2300個生産できるようになる代わりに、たこ焼きの数は3300個に減少してしまいます。

 

またこのグラフの線上に生産数がある時、その生産状況は「効率的である」と言えます。

 

この経済が持ちうる力を最大限発揮した場合の組み合わせがグラフの点だからです。

 

逆に言えば点Cのような生産状況にあった場合、それはなんらかの障害のせいで、非効率な生産体制に陥っていると言えるのです。

 

このモデルからは「経済学の十大原理」のうち、第1原理である「トレードオフ」の考え方と、第2原理である「機会費用」の考え方を学ぶことができます。

 

先に見たおにぎりの生産数を300個増やす代わりにたこ焼きの数を200個を減らすのかどうかという判断は、トレードオフの考え方と同じです。

 

またこの時のたこ焼き200個は、おにぎり300個に対する機会費用と言えます。

 

【例題2】
前掲のおにぎりとたこ焼きを生産する経済において、点Dのような生産を行うことは不可能でしょうか?可能でしょうか?

 

不可能な理由、可能な理由をそれぞれ考えてみましょう。

 

<解説>
不可能な理由:点Dのようなグラフの外側の点は、この経済は現時点では生み出せません。

 

それは生産要素には限りがあるからです(希少性)。

 

生産可能性フロンティア=グラフは、その経済が現時点で最も効率的に生産を行った場合の結果を示しています。

 

生産できる組み合わせは、フロンティアの内側にだけ存在できます。

 

可能な理由:グラフが上方にシフトした場合は点Dのような生産が可能になります。

 

例えばおにぎり自動製造マシンが開発されて、それまで手で握っていたおにぎりを全て機械生産できるようになったような場合(技術革新)、このグラフは赤のグラフのように上方にシフトします。

 

すると、従来の生産要素や技術では実現できなかった生産体制が実現できるのです(経済成長)。

 

経済モデル3

 

生産可能性フロンティアは何を語るか

 

生産可能性フロンティアはトレードオフ、機会費用、効率性、希少性、経済成長の5つの経済学の基本的な概念を説明しています。

 

どの生産を増やし、どの生産を減らすのか。そしてそれにどれだけの犠牲を払うのか。

 

経済が最も適正に機能した場合、どれだけの生産能力があるのか。

 

どれだけ適正化を施しても不可能な生産量とは何か。それを実現するために必要な要素は何か。

 

生産可能性フロンティアは経済全体のみならず、企業の中や、個人の仕事にも応用できるモデルの1つです。

 

しっかりと理解しておきましょう。

 

経済モデルは何を語るか

 

経済モデルは必要な情報だけを抽出して、数式や図にしたものです。

 

フロー循環図では経済の基本構造を理解するために、生産可能性フロンティアでは前述した5つの経済学の基本概念を理解するために、それぞれ単純化して視覚化しています。

 

まとめ

 

経済モデルは経済を単純化し、理解しやすくする。

 

代表的な経済モデルには「フロー循環図」と「生産可能性フロンティア」がある

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