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摩擦的失業と構造的失業

今回は摩擦的失業と構造的失業について説明していきます。

 

この文章では、失業を説明する際に知っておくべき概念として「摩擦的失業」と「構造的失業」について学ぶことができます。

 

理想と現実のギャップ

 

自然失業率」という経済学上の概念は、「失業は本来的になくならない」ということを意味しています。

 

しかし、経済学は同時に経済が達成する多くの経済的合理性も説いています。

 

それは、「市場が適切な需要と供給を調整し、無駄のない資源配分を達成する」という原則に基づいています。

 

この原則が労働力に関しても適用されるのならば、経済が最適化された時に失業は完全になくなるはずなのです。

 

しかし、現実はこのようにはいきません。どんなにその経済が活性化していようとも、一定の失業率は残ります。

 

この「自然失業率」を理解するためには「摩擦的失業」と「構造的失業」という二つの概念を知っておく必要があります。

 

摩擦的失業とは

 

摩擦的失業とは長期的失業の中でも比較的短い継続期間の失業を説明する際に用いられる言葉です。

 

これは、労働者がそれぞれの好みや適性、スキルなどに応じて、自分にぴったりの仕事を見つけるまでに経験する失業を意味します。

 

「労働者と仕事との摩擦によって生じる失業」というわけです。

 

【例題1】
有名大学に所属するXさんは就職活動を早く終わらせて、卒業論文に集中したいと考えました。しかし、大企業はなかなか選考が始まらずXさんはイライラしてしまいます。

 

すると、地元の中小企業が求人を出しており、どうやら3年生の間に合否が決まりそうだということがわかります。

 

そこで、Xさんはその企業に就職活動をし見事採用となります。

 

しかしその1年後、Xさんはその企業を退職してしまいます。あまりに企業のレベルが低く、「自分はこんなところよりももっと活躍できる場があるんだ」と考えたからです。

 

ところが、冷静になって仕事を探してみるとなかなか自分にとってぴったりの仕事が見つかりません。

 

「何が自分に向いているのだろう」と模索しているうちに1年が経っていました。

 

<解説>
このような場合が典型的な摩擦的失業です。

 

この概念は有効需要などの考え方を提出したケインズが最初に説いたものです。

 

構造的失業とは

 

構造的失業は長期の継続期間の失業を説明することができます。

 

市場の構造上どうしても起きてしまう失業という意味ですが、これはその構造を解決することによってなくすことができる失業です。

 

これを具体的に説明すると、次のような状態を指します。

 

【例題2】
ある国の寂しがり屋の王様が、「毎日一回自分に会いに来れば月に30万円の給料を与える」というお触れを出しました。こんなに楽な仕事はないと、国民はこぞって毎日国王に会いに来ます。

 

しかし、金庫番の財務大臣は「このままではみんなが働かなくなって国王に会いに来るだけの国になってしまう」と気づきます。

 

そこで、この仕事に就ける人数を10人に限りました。1人だけにしようとすると「それではワシが寂しい」と国王が言うので、財務大臣はしぶしぶ10人にしたのです。

 

しかし、当然この仕事を生業にしていた人は10人どころではなく、多くの人が失業者となりました。

 

<解説>
これが典型的な構造的失業です。

 

つまりは「労働力の供給が需要を上回った状態」を指す言葉なのです。

 

これは言い換えれば、「その仕事の均衡価格(適正な給料)よりも市場価格が高くなった時」ということができます。

 

摩擦的失業と構造的失業1

 

この例で言えば、国王に毎日会いに行くだけの仕事の給料を月1万円にするなどして、労働力の供給を調整する必要があるのです。

 

そうすれば、失業者となった人たちもこの仕事以外の働き口を探すようになるでしょう。

 

摩擦的失業と構造的失業

 

失業とは本来的になくならないものです。

 

それを説明する際に知っておくべき概念が、摩擦的失業と構造的失業です。

 

前者は、労働者が自分に適した仕事を見つけるまでに経験する失業を言います。比較的短期の継続期間の失業の説明をする概念です。

 

対して後者は、比較的長期の失業を説明する概念で、労働力の需要を供給が上回る、もしくは労働力の均衡価格を市場価格が上回った場合に起こる失業です。

 

まとめ

 

<摩擦的失業>

 

労働者が自分に合った仕事を見つけるまでに経験する失業。比較的短期の失業の説明ができる。

 

<構造的失業>

 

労働市場の構造上起きてしまう失業。比較的長期の失業の説明ができる。

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