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総需要曲線

総需要曲線

今回は総需要曲線について説明していきます。

 

この文章を読むことで、「総需要曲線の概要」と「総需要曲線をシフトさせる要因」について学ぶことができます。

 

総需要曲線のカタチ

 

総需要曲線は右下がりの曲線です。

 

総需要と総供給のモデルでは、縦軸に物価水準、横軸に産出量をとっているので、物価水準が上昇すると総需要における産出量は減少します。

 

対して物価水準が低下すると、その産出量は増加します。こうして総需要曲線は右下がりになっています。

 

なぜ総需要曲線は右下がりなのか

 

では、なぜ総需要曲線は右下がりになるのでしょうか。

 

このような問いを立てると、「だって需要なんだから当たり前だろう」という人がいるかもしれません。

 

確かにミクロ経済学における特定の市場の需要曲線も、価格が低下すれば取引量を増加させ、価格が上昇すれば取引量を減少させていました。

 

しかし、総需要曲線はあくまで「総」、つまりマクロ経済学の分析対象です。そのため、ミクロ経済学の理論をそのまま当てはめるわけにはいきません。

 

ここで産出量、すなわち実質GDPの計算式を思い出しましょう。

 

Y=C+I+G+NX

 

YがGDPを示し、Cは消費、Iは投資を、Gは政府支出、そしてNXは純輸出を示しています。

 

これらはどれも総需要曲線の産出量に深く関わっており、どの数値が変動してもYの値は変動します。

 

では、縦軸の値、物価水準はこれらの数値にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

 

これが理解できれば総需要曲線における名目変数と実質変数の関わりが見えてくるはずです。

 

物価水準と消費の関係

 

まずは物価水準とC=消費の関係について考えてみましょう。

 

結論から言うと、物価水準が低くなると貨幣の実質価値が増加し、それに伴って消費者の購買力が上昇、結果支出が増えて財・サービスの需要量が増加します。

 

これだけでは何となくなら理解できるかもしれませんが、まだ明確にイメージはしづらいでしょう。

 

以下で例を挙げて解説しておきます。

 

【例題1】
Aさんの財布の中には1000円札が1枚あります。

 

今、Aさんはコンビニの冷蔵庫の前に立ち、ビールのバラ3本1000円を買うか否かで迷っています。

 

すると、迷っている間に店内のラジオでこんなニュースが流れます。

 

「ただいまより、全国のビールを一律半額にする法律が施行されます」

 

Aさんは歓喜のあまりその場で大声をあげそうになるのを必死でこらえ、ビールの6缶1ケースを手にレジに並びました。

 

<解説>
この時、Aさんの財布の中にある1000円札は、法律の施行前も施行後も同じ「1000円」の価値を持っています。

 

これは貨幣の名目価値が固定されていることを示します。

 

しかし、名目価値に対して実質価値は固定されていません。なぜなら1000円で買えるビールの本数が3本から6本に変わっているからです。

 

つまり法律施行後、ビール3本の価格が500円に低下(物価水準の低下)すると1000円(貨幣)の実質価値は上昇し、それに伴ってAさんはビールを6缶買えるようになり(購買力の上昇)、結果支出が増加することで財・サービスの需要量が大きくなっているのです。

 

物価水準と投資の関係

 

続いてI=投資と物価水準の関係について見ておきましょう。

 

この二つの関係は、消費と物価水準の関係よりも若干複雑なので図で解説しておきましょう。

 

総需要曲線1

 

この図は大体次のようなことを示しています。

 

物価水準の下落が起きると、人々が財・サービスを購入するのに必要な貨幣は少なくなっていきます。

 

すると、貨幣が余った人々はそれを貯蓄に回したり、国債や社債・株式などを買うお金に充てはじめます。

 

貯蓄の増加は貨幣供給量の増加を招き、結果として利子率を低下させます。

 

利子率が低下すると企業がお金を借りやすくなるので、経済全体の投資財への支出が増えます。

 

結果として「財・サービスへの需要量が増加する」というわけです。

 

もちろんこのとき人々は消費も増やすでしょうから、前述のように消費方面からも財・サービスへの需要量は増加します。

 

物価水準と純輸出の関係

 

さらに複雑になるのが、NX=純輸出と物価水準の関係です。

 

ここでは、具体例を挙げながら図も用いて解説しておきましょう。

 

【例題2】
日本在住の日本人投資家Aさんは、ある日の新聞を見て「この流れで行くとじきに日本の物価水準が下落するな」と読みました。

 

すると、これと同じ新聞を読んだ日本全国の投資家も同じ予想をしました。

 

日本の投資家がこのような判断をすると、一体どのようなことが起こるでしょうか。

 

<解説>

 

総需要曲線1

 

1.まず日本の物価水準が下がると、先ほど【物価水準と投資の関係】で見たように利子率が低下します。

 

2.利子率が低下するということは、投資家からすれば投資の儲けが少なくなるということを意味します。

 

3.しかし、日本全体の利子率が下がっているので、どこに投資をしても以前より儲けは少なくなってしまいます。

 

そこで投資家たちは例えば「そうだ中国に投資だ!」という風に、海外への投資をし始めます。

 

4.日本人が中国の企業などに投資を行おうとすると、円のままでは投資できません。そこで、投資家はまず円を使って人民元を購入します。

 

するとこれにより、外国為替市場において円が市場へと手放され、人民元が投資家の手元に移動することになります。

 

すると、市場における円の供給量が増えるので、円の人民元に対する相対的な市場価値が低下します。

 

5.1円で買える他の通貨の量が減少するので、外国財の価格は国内財の価格よりも割高になります。

 

これは、例えば中国が輸出しているキャベツ1玉が150円で買えていたものが200円必要になる一方で、日本国内のキャベツ1玉が300円から250円へと安くなっている、というような状況です。

 

6.外国財と国内財の相対的な価格が変動すると何が起きるのでしょうか。日本国内では「中国のキャベツを買うよりも、日本のキャベツを買う方が以前と比べて割安だな」と感じるはずです。

 

すると、中国キャベツへの需要が低下し、日本キャベツへの需要が増加します。つまり、外国財よりも国内財への需要が高まるのです。

 

7.対して中国からしても、自国のものより安全で美味しい日本のキャベツが人民元に対して安くなったということで、日本キャベツへの需要を高めます。

 

つまり、日本から見れば輸入が減少し、輸出が増加するのです。

 

8.ここで純輸出=輸出?輸入なので、結果日本の純輸出は増加します。すると、最終的に財・サービスの需要量が増加します。

 

消費と投資と純輸出と産出量

 

ここまでCとIとNX、それぞれと物価水準の関係を見てきましたが、改めて整理しておきましょう。

 

<消費>

 

物価水準低下→貨幣の実質価値増加

 

→消費者の購買力上昇→支出の増加→財・サービス需要量増加

 

<投資>

 

物価水準低下→貨幣の実質価値増加→消費者の購買力上昇

 

→貯蓄の増加→貨幣供給量の増加→利子率の低下

 

→経済全体の投資財支出の増加→財・サービス需要量増加

 

<純輸出>

 

物価水準低下→貨幣の実質価値増加→消費者の購買力上昇

 

→貯蓄の増加→貨幣供給量の増加→利子率の低下

 

→国内投資の低下→対外投資の増加

 

→外国為替市場における国内貨幣の価値が低下

 

→外国財の国内財に対する相対価値が上昇

 

→国内での国内財への需要増&海外での国内財への需要増

 

→純輸出の増加→財・サービス需要量増加

 

 

このようにして「物価水準が引き起こす消費者の購買力の上昇」は、最終的には財・サービス需要量増加へと繋がるようになっています。

 

しかし、私たちがここで注意すべきことは、今述べたことについて「物価水準」と「財・サービスの産出量」というたった二つの変数だけに着目した結果という点です。

 

つまり、「第三の変数」を捨象した結果なのです。

 

縦軸に物価水準をとり、横軸に産出量をとった座標平面上においては、この二つの変数以外の数字が変動すれば、そこにあるグラフは大小の差はあるにせよ、左右どちらかにシフトします。

 

最後に財・サービスの産出量Yを構成する、CとIとGとNXそれぞれについてどういった「第三の変数」があるのか、そしてそれらがどのようにYに影響するのかを見ておきましょう。

 

総需要曲線がシフトするとき

 

総需要曲線を構成する物価水準と財・サービスの産出量の二つの変数以外の変数が変化した場合に、総需要曲線はシフトします。

 

前述したこの「第三の変数」は、消費・投資・政府支出・純輸出、どの要素においてもそれぞれ無数にあります。

 

以下では、それぞれの要素において影響する変数のうちの幾つかを紹介しておきます。

 

消費の変化

 

消費を減少させる原因はいくらでもありますが、そのうちの一つに「老後への不安」があります。

 

例えば、ある国で国民年金の制度が破綻を迎えたとしましょう。

 

それまで「老後は年金でなんとか暮らしていけるから、今はそれほど節約しなくても大丈夫さ」と思っていた人々も、この事実を受けて老後への不安を感じ始めます。

 

すると、それまで海外旅行や車を買うのに充てていたお金を不動産投資に回したり、投資信託に回すなどし始めます。

 

こうなると、どの物価水準でも以前の年金制度が成立していた頃よりも消費が減るため、財・サービスの産出量も減少します。

 

また、国が新しい税金を施行したり増税を行った場合にも、人々は消費を低下させるため財・サービスの産出量にも影響が出ます。

 

投資の変化

 

投資が変化するのは、新技術が開発されたり、景気が良くなるなど人々の「期待」や「希望」が膨らんだときです。

 

例えば、所定の位置にモノをおけば、それが荷物でも人間でも「任意の場所に転送してくれる技術」が発明されたとします。

 

物流業界はもちろん、その他のビジネス業界にも激震が走るであろうこの技術に対して、各企業はこぞって投資をしようとします。

 

すると、物価水準の如何にかかわらず、企業の投資支出は増加するので、結果として財・サービスの産出量も増加します。

 

政府がこの投資に影響を及ぼすのは、投資に関する税制や貨幣供給の調整などによります。

 

 

例えば、「投資への支出額は全額控除対象とする」といった法律を整備すると、企業は利益として残しておくよりも「投資をする」という選択をします。

 

貨幣供給量を増加させると一時的に市場の貨幣価値が下がるため、利子率が低下します。

 

すると投資リスクが低くなるため、企業は投資支出を増やします。

 

政府支出の変化

 

税金の施行や増税、あるいは貨幣供給量の調整などは比較的間接的な方法ですが、政府が最も簡単に経済の総需要に影響を与える方法は、政府支出を変動させることです。

 

例えば、国が新しい高速道路を建てるために工事を開始すると、財・サービスの産出量はダイレクトに増えます(Y=C+I+G+NX)。

 

これは、逆に政府支出を減少させれば、Yは減少します。

 

それは例えば国営企業を民営化したり、公共事業をストップさせたりした場合に当てはまります。

 

純輸出の変化

 

いくら一国の経済が安定していても、その国が他の国との交易を行っている限りは、純輸出における「第三の変数」の存在は無視できません。

 

例えば、A国に多くの製品を輸出しているB国があったとします。あるときA国が他国から自国の経済を守るために、B国からの輸入品に重い関税をかけたとします。

 

すると、B国からA国への輸入は激減します。

 

仮にこの時B国内の消費、投資、政府支出が一定であっても、A国の輸入の法制が変わるだけで、B国の財・サービスの産出量は減少するのです。

 

逆に、たとえ消費も投資も政府支出も全てが減少傾向にあっても、それを上回る純輸出の増加(A国がB国の輸入関税を撤廃するなど)が起きれば全体としての財・サービスの産出量は増加します。

 

まとめ

 

総需要曲線は右下がりの曲線

 

総需要曲線の座標面は縦軸が物価水準、横軸は産出量

 

<物価水準と消費の関係>

 

物価水準低下→貨幣の実質価値増加

 

→消費者の購買力上昇→支出の増加→財・サービス需要量増加

 

<物価水準と投資の関係>

 

物価水準低下→貨幣の実質価値増加→消費者の購買力上昇

 

→貯蓄の増加→貨幣供給量の増加→利子率の低下

 

→経済全体の投資財支出の増加→財・サービス需要量増加

 

<物価水準と純輸出の関係>

 

物価水準低下→貨幣の実質価値増加→消費者の購買力上昇

 

→貯蓄の増加→貨幣供給量の増加→利子率の低下

 

→国内投資の低下→対外投資の増加

 

→外国為替市場における国内貨幣の価値が低下

 

→外国財の国内財に対する相対価値が上昇

 

→国内での国内財への需要増&海外での国内財への需要増

 

→純輸出の増加→財・サービス需要量増加

 

<総需要曲線をシフトさせる要因>

 

消費:老後への不安、増税、新税など

 

投資:新技術の発明、投資支出に対する税額控除、貨幣供給量の変動など

 

政府支出:公共事業の展開など

 

純輸出:取引国の財政不安、取引国の好況など

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