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価格規制(政府の政策)

価格規制(政府の政策)

今回は価格規制について説明していきます。

 

この文章を読むことで、価格規制が市場にもたらす影響について学ぶことができます。

 

政策のジレンマ

 

政策は市場に対してよりよい結果をもたらすこともあれば、逆の効果を示す時もあります。

 

経済は政府と企業、そして家計によって成立しています。

 

「経済学の父」アダム・スミスは、この3つのうち企業と家計が「見えざる手」によって市場をより良い方向に導くといい、政府は両者の活動が円滑になるように努めるだけで良いと言いました。

 

しかし、現在の政府はそのような慎ましやかな活動に収まってはいません。

 

徴税はもちろん、価格規制などをはじめとした経済政策は、近代国家においては必ずと言っていいほど行われてきた政策です。

 

ですが、その結果は必ずしも良かったわけではありません。むしろ悪化させてきた側面もあります。

 

以下では政府の政策のうち、価格規制について見ることで、この政策が市場にもたらす影響と評価について考えていきましょう。

 

価格規制のメソッド

 

まずは価格規制の根本的な2つのメソッドについて見ていきましょう。

 

それは「最高限度の設定」と「最低限度の設定」です。

 

市場は需要と供給によって成立しています。

 

買う側の人間がいて、そして売る側の人間がいて、両者が影響し合うことで市場は最適な解(価格や取引量)を決定するのです。

 

しかし、経済の前提として「個人は自らの利益をのみ追求する」という条件があるので、この両者は常に「自分が儲かるためにはどうすればいいのか」を考えています。

 

すると、買い手は「政府に価格規制をしてもらってより安く買えるようにしよう」と考え、最高限度を設けさせようとします。

 

この最高限度を「価格の上限」と呼びます。

 

対して売り手は「より高く売れるようにしよう」として最低限度を設けるよう働きかけます。

 

この最低限度を「価格の下限」と呼びます。

 

この2つの方法を使って政府は市場をより良くしようとするのです。

 

ではそれぞれ具体例を見ていきましょう。

 

【例題1】
ある国の「豆腐を世界に広める会」というロビイスト団体が、「より美味しい豆腐をより世界に広めるためには今の豆腐の価格200円は高すぎる」として、政府に猛抗議しました。

 

「もっと下げるために価格の上限をただちに設けなさい」と主張します。

 

すると、自分も豆腐が大好きな経産省の長官は、二つ返事で価格規制を行いました。

 

価格規制(政府の政策)1

 

<解説>
グラフ1のように政府が豆腐の価格の上限を300円に設定した場合ですが、現在の需要と供給が示す均衡価格はこれよりも低いので、価格の上限がその拘束力を発揮しません。

 

よってこの政策は市場に対してなんら影響を及ぼさないのです。

 

しかし、グラフ2のように価格の上限を100円にすると、現在の均衡価格200円は価格の上限を上回ることになります。

 

価格規制によって価格の上昇は押さえ込まれ、価格の上限が拘束力を発揮します。

 

するとどうなるかというと、需要に対して供給が不足してしまうのです。この場合需要量300万丁に対し、供給量は200万丁にとどまっています。

 

実に100万丁が不足するという事態が発生するのです。

 

価格規制が生む問題1

 

これは価格規制が生む問題の一つ目に繋がります。

 

それは価格規制によって生まれたこの需要と供給の不一致がもたらすものです。

 

通常の市場であれば、需給のバランスが崩れれば調整機能が働いて、価格を上昇させることで供給量が増加し、最適な取引量が維持されます。

 

しかし、価格の上限によってそれがかなわなくなると、欲しいと思っている買い手が売り手から豆腐を買えなくなります。

 

この例の価格規制は、本来買い手を優遇するために行ったものにもかかわらず、買い手は自己の需要を満たせなくなっているのです。

 

これでは完全に本末転倒です。

 

では、消費者目線に立った価格規制とは別に、生産者目線に立った価格規制政策の市場への影響を見ていきましょう。

 

【例題2】
別のある国では「世界の豆腐文化を守る会」という生産者のロビイスト団体が活動しています。

 

彼らの主張はこうです。「豆腐文化を守り、よりよい豆腐を後世に残すためには今の200円という価格は安すぎて、後継者が育つ素地を作れない。価格をもっと上げるために価格の下限を設けなさい」。

 

こう言われた某国の豆腐文化に造詣の深い経産省大臣は、二つ返事で価格規制を行います。

 

価格規制(政府の政策)2

 

<解説>
政府がグラフ3のように価格の下限を設けた場合、下限の100円は現在の均衡価格よりも低いので、政策は市場になんの影響も与えません。

 

このとき需要と供給のバランスは自由市場としては最適で、経済学的に見れば買い手と売り手の中には不満は存在しません。

 

しかし、グラフ4のように下限を300円に設定すると事態は一変し、価格規制は市場に対して拘束力を発揮します。

 

価格を均衡点から規制によって100円押し上げたときの市場の供給量は250万丁です。

 

対して需要量は100万丁になっています。150万丁もの豆腐が余ってしまう事態になるのです。

 

価格規制が生む問題2

 

これが価格の下限を設けた時の問題に繋がります。

 

本来は200円、200万丁で落ち着いていた市場が、価格規制によって均衡を崩されます。

 

すると、買い手のために行ったはずの価格規制が逆効果をもたらし、売り手が売りたいのに売れないという状況を作り上げてしまうのです。

 

経済学者から見た価格規制政策

 

こうして考えてみると、経済学から見た価格規制というのは、市場のバランスを崩す要因でしかありません。

 

これは、経済学の十代原則のうちの一つ「通常、市場は経済活動を組織する良作である」に基づきます。

 

つまり「放っておけば市場は経済を最適化してくれるのに価格規制なんて余計なことをするな」というわけです。

 

しかし、もちろん「政府が市場のもたらす成果を改善できる場合もある」(第7原理)。

 

つまり、価格規制以外の政策を行えば、あるいは市場によりよい効果をもたらせる可能性があるのです。

 

このような政策の具体例を見ておきましょう。

 

【例題3】
【例題1】の某国は買い手のために価格の上限を設けたにもかかわらず、逆に買い手(=豆腐を世界に広める会)の不利益ももたらしてしまったことを受けて、新たな政策を提示しました。

 

それは豆腐の生産者に対しての「豆腐製造における産業活性化補助金プログラム」です。

 

技術革新のための設備投資になら助成金を支出する、という方針を打ち出したのです。

 

結果1丁あたりの生産コストが格段に改善され、価格は100円のまま、味もそのままの、「安くて美味しい豆腐」の生産に成功しました。

 

よって溢れていた豆腐の買い手は豆腐が食べられるようになり、市場は再び均衡状態に戻ります。

 

<解説>
価格規制を行えば前述のように、供給を減らしてしまいかねません。

 

であれば、生産コストという座標上にない第三の変数に働きかけることで、状況を打破するという政策が「補助金制度」なのです。

 

生産コストが減少した供給曲線は右側にシフトし、同じ供給量でもより安価な豆腐を作れるようになったのです。

 

ところが、一見完全に思えるこの政策も、やはり政府から見れば支出の増加には違いありません。

 

支出を増加させるには収入を増やすしかなく、政府の収入を増やすとなれば、税金を引き上げざるを得ません。

 

それは回り回って市場に対してさらなる規制をかけることになります。

 

このように政策立案は非常にデリケートな問題で、1+1=2というような単純な問題ではないのです。

 

価格規制(政府の政策)

 

価格規制は「価格の上限」と「価格の下限」という二つの方法を持つ政策の一つです。

 

しかし、この政策は市場に対して拘束力を発揮した途端、市場の均衡を崩す元凶となりうるものでした。

 

市場の調整機能が働かなくなれば、本来の目的を達成するどころか、逆の結果を招くことすらあります。

 

このような視点から、経済学は価格規制に否定的な見解を持っています。

 

有効な政策を立案するためにはより多角的な視点で経済を見る必要があるのです。

 

まとめ

 

価格規制の方法=価格の上限・価格の下限

 

価格規制は市場の均衡を崩す可能性が高い

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