供給とは
今回は供給について説明していきます。
この文章を読むことで、「供給と価格の関係」や「供給に影響を与える変数」について学ぶことができます。
供給と価格は連動している
供給量とは売り手が売りたいと思い、かつ売ることのできる量を言います。
この供給量を決定する要素は実にたくさんあります。
しかし、需要量の時と同様に、最も大きな要素は「価格」です。
価格が高くなるほど売り手の儲けは大きくなり、低くなるほど儲けは小さくなるからです。
これを供給法則と呼びます。
供給量と供給表
ある特定の経済主体の供給量を一覧にしたものを「供給表」と呼びます。
価格がいくらの時に供給量はいくらなのか、あるいは供給量がいくらの時には価格がいくらになるのかを一見してわかるようにしています。
これを座標にとり、グラフにしたものを「供給曲線」と呼びます。
需要曲線が右下がり(価格が上がるほど需要量は下がるであるのに対し、供給曲線は右上がり(価格が上がるほど供給量は増える)であるのが異なる点です。
市場の供給は個人の供給が構成している
ある財の市場は、各業者の供給量の合計によって成立しています。
30の業者があった場合は、そのすべての供給を足し合わせなければその市場の供給量は明らかになりません。
では、ここまで見た供給についての要素を確認するために具体例を見ておきましょう。
【例題】
Aさんはお好み焼き屋を経営しています。Aさんの地域のお好み焼きは250円でした。
この時Aさんの店は、一ヶ月で2000枚のお好み焼きを販売しました。
ところが、先月にお好み焼きの値段が300円に値上がりしました。
売れば売るほど前の値段よりも儲かるので、Aさんは今では毎月3000枚のお好み焼きを販売しています。
ところで、Aさんの店の両隣には、お好み焼き屋があります。
B店は価格が250円の時には4000枚、300円の時には6000枚を売り上げる名店です。
対してC店は250円の時は1000枚、300円になっても1500枚程度で落ち着いている不振店です。
3店は今日も自分の腕を磨いてしのぎを削っています。
<解説>
お好み焼きの価格値上がりによって各店が供給量を増加させているのが「供給法則」です。
そして、各店の供給量とこの界隈のお好み焼きの総供給量を供給表にしたうえで、曲線にすると以下のようになります。
供給曲線がシフトするとき
先ほど見たお好み焼き市場のように、他の要素が固定され、価格だけが変動する場合は、同じ曲線上を点が移動します。
しかし、価格以外の固定された要素=変数が変化すると、それに伴って供給曲線はシフトします。
右方向にシフトする際は供給量が増加しており、左方向にシフトする際は供給量の減少を示します。
このシフトの要因は実に多種多様ですが、主要なものを紹介しておきましょう。
かけるコストによって変わる
仮に、お好み焼き1枚当たりのコストが安くなれば何が起きるでしょうか。
同じ価格で提供しても儲けは大きくなるので、供給量は増えるはずです。
この時曲線は右にシフトします。
このコストを投入価格と呼び、材料費(キャベツ、長芋、小麦粉、かつおぶしなど)や人件費、土地の賃貸料などが含まれます。
逆に言えば、これらのうち一つでも上昇すれば供給量は減少し、曲線は左にシフトします。
技術革新によって変わる
あるいは何か技術的な革新が起きて、お好み焼きを作るのに小麦粉がいらない世界がやってきたとします。
この技術革新は、結果として投入価格を減少させます。
であれば供給量が増加し、曲線は右にシフトするでしょう。
期待や不安・売り手の数によって変わる
現時点での期待や不安といった予想が持つ未来の供給量への影響力も無視できません。
短いスパンで見れば「明日は雨だから客足が遠のく」と思えば、あらかじめ仕入れ量を調整するので、必然的に供給量は減少するでしょう。
逆に、テレビで「お好み焼きを食べれば不死身になる!」というニュースが流れれば、しばらくは客足が急増することが予想できるので、仕入れ量を増やすでしょう。
結果、供給量は増加します。
また、単純にAさんたちが出店している界隈に新しくD店ができれば、この市場の供給量は増加します。
売り手の数が変われば供給量もその分増減するのです。
第3の変数の存在
第3の変数とは前述した「価格以外の固定された要素」のことです。
投入価格や技術革新、予想や売り手の数の変動は全てこの「第3の変数」です。
この変数が変化するとき、点は曲線上を移動するのではなく、曲線ごとシフトするのです。
「価格」か「それ以外の変数」か、このどちらが変化しているのかを読み取ることで、グラフに起きる変化を理解しやすくなります。
供給と供給曲線
供給量は価格に大きく影響されます。
とはいえ、供給量を決定するのは価格だけではなく、「第3の変数」を考慮する必要があります。
まとめ
供給法則→供給量は価格によって左右される。
市場の供給量は個人の供給量の総和である。
供給曲線のシフト要因→投入コスト・技術革新・予想・売り手の数の変化
供給曲線のシフトを考える際は、第3の変数を考慮する
関連ページ
- 経済学の十大原理
- 経済変動の重要な3事実
- 金融資源の国際的フロー
- 財の国際的フロー
- 国際的フローの貯蓄と投資の関係
- 日本は貿易すべきか
- 均衡変化の分析
- 財政赤字と財政黒字
- 中央銀行とは
- 古典派の二分法と貨幣の中立性
- 閉鎖経済と開放経済
- 会社の形態
- GDPの構成要素
- 消費者物価指数とは
- 消費者余剰
- 総需要曲線と総供給曲線のシフトの影響
- 需要とは
- 経済モデル
- インフレ影響に対する経済変数補正
- 経済成長と公共政策
- 経済の所得と支出(マクロ経済学)
- 経済学の重要な恒等式
- 経済学とは
- 経済学者の意見が一致しない理由
- 効率と公平のトレードオフ
- 弾力性と税の帰着
- 弾力性とは
- 実証的分析と規範的分析
- ITを活用した経営戦略(コピー)
- 失業の測定方法
- 株式市場と債券市場
- 経済学の重要な恒等式
- 総需要曲線
- 短期の総供給曲線が右上がりの理由
- 均衡とは
- 市場均衡の評価
- 外部性に対する公共政策
- 外部性とは(厚生経済学)
- 金融仲介機関とは
- 金融システムとは
- 摩擦的失業と構造的失業
- GDPデフレーターとは
- GDPは経済厚生の尺度として妥当か
- GDP(国内総生産)とは
- GDPデフレーターと消費者物価指数
- 総需要曲線
- 投資インセンティブ
- 職探しと失業保険
- 貸付資金市場
- 市場と競争(ミクロ経済学)
- 市場の効率性
- 生計費測定の3つの問題
- 失業の測定方法
- ミクロ経済とマクロ経済
- 総需要と総供給のモデル
- 貨幣価値と物価水準
- 貨幣の流通速度と数量方程式
- 貨幣とは
- 貨幣市場の均衡
- 貨幣数量説と調整過程の概略
- 純輸出と純資本流出の均等
- 戦後の日本経済の歩み
- 価格規制(政府の政策)
- 価格と資源配分
- 生産者余剰
- 生産可能性と比較優位、および特化・交易
- 生産性とは
- 購買力平価(PPP)とは
- 実質為替相場と名目為替相場(円高と円安)
- 実質GDPと名目GDP
- 実質利子率と名目利子率
- 景気後退と不況
- 貯蓄インセンティブ
- 貯蓄と投資
- 科学的な経済学
- 短期の経済変動
- 株式市場と債券市場
- 株価指数とは(日経平均、TOPIX、ダウ平均、FTSE)
- 供給とは
- 税と公平性
- 税金とは
- 税と効率性
- 経済学の主要学説
- 短期の総供給曲線が右上がりの理由
- 短期の総供給曲線がシフトする理由
- 総供給曲線
- 失業とは
- グラフの用法
- 経済の波
- 世界各国の経済成長