均衡とは
今回は「均衡」について説明していきます。
この文章を読むことで、市場が価格を均衡させるメカニズムを学ぶことができます。
市場は価格を均衡させる
市場は需要と供給、つまり「買いたい」という気持ちと「売りたい」という気持ちによって成立しています。
この二つの気持ちが出会ったときに生まれるのが取引であり、市場はこの取引によってより豊かになっていきます。
この需要量と供給量を同じ座標平面上に曲線として描くとき、二つが交差する時があります。
この交差している点を均衡点と呼びます。
そして、この均衡点のxの値の価格を均衡価格と呼び、yの値を均衡取引量と呼びます。
均衡点において市場では需要と供給が一致しており、売り手は売りたいだけ売り、買い手は買いたいだけ買っているという状況が成立しています。
つまり誰一人損をせず、満足している状況です。
全ての市場参加者が不満を残さず(クリアされている)市場が成立している点から、均衡価格を「市場清算価格(マーケット・クリアリング・プライス)と呼ぶこともあります。
では上図を見ながら具体的な例を考えておきましょう。
【例題】
Aさんはバナナが大好きです。バナナが1本50円の時は毎月バナナを30本買います。
バナナがもし1本20円になったら、毎朝毎晩食べるので100本買います。
しかし、Aさんは生活費が厳しいので1本100円になると3日に1本しか食べられなくなるので月にすると10本しか買えなくなります。
対してBさんは、いつもAさんにだけバナナを売っている、Aさん専用バナナ屋さんです。
バナナが50円の時、Bさんはバナナを30本売ります。
ただし、1本が20円になると採算が取れず、20本しか売りません。
対して100円になれば利益が大きくなるので、100本は売りたいと思っています。
<解説>
まずは二人の需要表・供給表を作りましょう。
それに基づいて二つのグラフを同一座標平面上に置くと前図のようになります。
この時均衡点は(50.30)で、均衡価格は50円、均衡取引量は30本となります。
超過供給と超過需要
しかし、価格が100円の時は需要と供給は均衡していません。
100本は売りたいと思っているBさんに対し、Aさんにとってはその価格は高すぎるので10本しか買いたくないと思っているからです。
このように市場の需要に対して供給が多すぎる状態を過剰供給と呼びます(点X.点Y)。
逆に、価格が20円の時、Aさんは嬉々として100本のバナナを買いたいと思っていますが、Bさんはそれでは儲けが出ないので20本しか売ろうとしません。
すると今度は供給を需要が上回ります。この状態を超過需要と言います(点P.点Q)。
超過供給にある場合、Bさんのバナナは売れません。そのままではバナナが腐ってしまうので、Bさんは価格を下げます。
例えばその価格が50円なら、Aさんは30本購入してくれるでしょう。
対して、超過需要にある場合Aさんは欲しいだけ購入できないので購入量を減少させざるを得ません。
その量が30本の場合Bさんは50円で売ってくれるでしょう。
このようにして、点はより均衡点へと調整されるのです。
この市場の価格調整機能を「需要と供給の法則」と呼びます。
価格調整のスピードは市場によって異なりますが、ほとんどすべての自由市場においては、価格は常に均衡価格へと調整されるようになっています。
でなければ買い手あるいは売り手に不満が生じるからです。
市場が決定する価格
需要と供給は、市場において相互に深く関係しています。
この二つの総量とその時の価格が一致する点を均衡点と呼び、その時の価格を均衡価格、取引量を均衡取引量と呼びます。
均衡点よりも需要ないし供給が多い場合、市場はより適切な価格(均衡価格)と適切な取引量(均衡取引量)へと調整をします。
この現象を「需要と供給の法則」と呼びます。ほとんどすべての自由市場がこの法則の通りに変動します。
まとめ
市場が均衡価格(市場清算価格)を決定する。
市場の価格調整機能を「需要と供給の法則」と呼ぶ。
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