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仮説・検証の3つの効果 その3

自身の経験と社員からのヒアリングによって分析した、成果をあげている社員とそうでない社員の違いは次のとおりです。

 

<成果をあげている社員>
・お客さまのニーズを重視する
・お客さまからのヒアリングに時間をかける
・物件の紹介をスピーディに行う
・少ない情報からの洞察力がある
・説得力がある(情報や資料の使い方。クロージング)
・マニュアルに頼らない柔軟思考、幅広い提案

 

<成果が芳しくない社員>
・物件の価格(仲介手数料によって自社が得られる利益)を重視する
・お客さまに記入してもらう「ヒアリングシート」をそのまま活用する
・物件の紹介が遅い
・少ない情報から勝手に判断してしまう
・説得力が弱い(情報や資料を効果的に活用できていない)
・マニュアル通りの対応、責任を負わないように上司に随時確認をとっている

 

これらの結果を参考にし、Y社長が採用したA社のルールは、個々人で判断するための「仮説・検証思考」でした。

 

仮説と検証のプロセスを行うことによって、直属の上司や社長の意向を考慮せずに、それぞれの担当者が物事を判断する下地を設定したのです。

 

もちろん、最終的な判断は社長が行いますが、仮説と検証による思考プロセスが明確なために、より論理的な説明が可能となりました。

 

実際に、仮説・検証思考を取り入れることによって、徐々に効果があらわれます。

 

会議の時間が短縮され、課題に対する深掘りができるようになり、成績の悪かった社員のクロージングに説得力が増したのです。

 

また、企画段階においても、一般常識にとらわれず、斬新な発想により幅広い視点から新しい企画が生まれるようになりました。

 

これらはまさに、社員が成長したことを示しています。

 

<解説>
今回の事例では、各社員の営業成績の相違から、それぞれの思考過程が異なっている点に着目したことに端を発した「ルール作り」がポイントとなっています。

 

会社の事業が軌道に乗ってくれば、そこで安易にスタッフの役割分担をしてしまうことは多いですが、それぞれの行動規範をルールとして定めておくことにより、すべての人員が難しい判断に迫られても対応できるようになるのです。

 

とくに、社員間の成績の相違は、それぞれの社員の努力量や実力、あるいはスキル、才能などによって評価されてしまうことが多いもの。

 

しかし、そうした非建設的なくくり方をしていては、少数精鋭で勝ち残っていくことはできません。

 

また、新たな人員を雇い入れるフェーズではない以上、現行のスタッフを鍛える以外に方法はないのです。

 

その点において、まず役割分担をしてしまうのではなく、社内のルール作りに着手したY社長の判断は正しかったと言えるでしょう。

 

ルールが明確になることにより、会社を繁栄させるという当初の目的を共有することにもつながります。

 

とかく、営業パーソンにありがちな競争意識から生じる情報の出し惜しみなども減るかもしれません。

 

Y社長の分析結果からも明らかなとおり、成績優秀な社員とそうでない社員との違いは、根本的な考え方にあります。

 

会社の収益と個人のインセンティブを考慮すれば、より仲介手数料が高くとれる物件を優先してしまう気持ちは分かりますが、最終的に契約につながらなければ意味がありません。

 

また、自分が顧客だった場合にどう対応してほしいかという顧客目線も欠かせませんね。

 

なかでも、「スピード感」「洞察力と説得力」「柔軟・幅広い提案」は、目まぐるしく変わる社会情勢に対応しなければならないビジネス向け顧客にとって、重要な要素となるでしょう。

 

それがそのまま契約数に反映されていると判断しても良さそうです。

 

そして、そのために必要だとY社長が考えたのが「仮説・検証思考」でした。

 

すべての情報を収集してからではなく、仮説思考による提案型の営業。

 

そこで培われた洞察力、および検証過程で増す説得力。

 

さらに、仮説と検証をくり返すことで可能となる柔軟な発想は、幅広い提案を可能とします。

 

今後は、社内で仮説・検証思考をルールとして定着させることで、スタッフのスキルを底上げし、マンパワーを最大限に活用できる会社へと成長していくことでしょう。

 

 

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