因果関係の把握 その4
【因果関係を把握する際の注意点】
因果関係は、ただ意識して把握すればいいというものではありません。
正しく理解するための方法論も大切ではありますが、もし自分が間違って活用していた場合に、軌道修正できるチェックポイントが必要です。
とくに、次の4つの点について注意してみてください。
<注意点1.直感や思い込み>
どんな人でも、その成長過程において教育や周囲の人の言動からさまざまな影響を受けています。
また、根拠のない勘を意思決定の判断材料にしている人もいるでしょう。
そういった背景を考慮すると、個々人がいだく「直感」や「思い込み」が、因果関係の把握にブレを生じさせる可能性があることは、想像に難くありません。
たとえば、学生時代に体育会系のスポーツを経験してきた人にとっては、上下関係こそが人と人とを結ぶコミュニティの絶対的な基礎となるかもしれません。
しかし実際のビジネスの現場では、上下関係よりも、実力重視の社会へと日本がシフトしていることは見逃せません。
つまり、年功序列の組織体系は古くなりつつあるのです。
もし上下関係を盲信し、上司の命令を絶対的なものだと考えてしまえば、原因としての「上司からの命令」と、結果としての「失敗」をつねに結びつけてしまうことになります。
そうなると、判断の責任が自分に向くことはありませんので、いつまで経っても一人前のビジネスパーソンにはなれません。
終身雇用がスタンダードではなくなってきている昨今。
「上司の命令どおりに動くだけ」という姿勢で仕事に臨んでいては、正しい因果関係を把握することはできません。
そればかりか、責任の所在に対してどこかあいまいなまま業務を遂行し続けることになり、主体性のない人材から脱皮することなく、キャリアを積むことになります。
上司の言うことに従うのは大切ですが、命令とそれによる結果を直結させてしまってはいけません。
あくまでも、最終的には自分の判断が「原因」となって「結果」を左右していると理解することによって、正しい因果関係を把握するための第一歩が踏み出せます。
直感や思い込みに頼るのではなく、冷静な検証作業を行うようにしましょう。
<注意点2.言い訳>
因果関係を正しく把握するためには、起こった事象に対して、客観的・俯瞰的に分析しなければなりません。
もしそこに、個人的な事情や特別な感情が加わってしまえば、関係者はもちろんのこと、関係者以外の人を説得するための材料としても、因果関係を利用することはできないでしょう。
たとえば、ある企業に就任したばかりの新社長のもとで、会社の不祥事が発覚したとします。
その原因は、かつて新社長が就任する前に働いていた社員によるものでした。
新社長の胸の内としては、「ことの発端は私が社長に就任する前にあるのだから、説明責任は限定的になるのが普通だろう」と考えるかもしれません。
しかし、それでは消費者が納得しません。
そもそも、社長の交代を含め、企業内部の動きに関しては、ユーザーはさほど気を揉んではいないものです(一部の株主を除いては)。
それよりも、「なぜ不祥事は起きたのか(原因)」「不祥事に対してどのような保証をしてくれるのか」「誠意ある対応をしてほしい」と思っている消費者が大半でしょう。
それなのに、新社長が個人的な事情にとらわれて態度を形成してしまえば、その不誠実な心証が顧客にも伝わってしまう可能性があります。
トラブル対応と責任をとることが社長の重要な仕事であることを考えると、不祥事が「原因」で顧客離れという「結果」を招くと考えるのではなく、社長の対応が「原因」となり、その後の「結果」を形成すると考える方が正しいですね。
内部の事情や個人的な感情にとらわれず、客観的な視点から冷静に因果関係を把握すること。
そして、できるかぎり誠実な対応をし、分析した因果関係を広く社会に公表することで、不祥事が逆に企業の評価をあげることもあるのです。
増え続ける言い訳に逃げてしまうのではなく、因果関係を正しく活用しましょう。
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