論理展開のパターン その1
【論理展開のパターン】
社会人は、日常会話でもそうですが、とくにビジネスの現場で論理的なコミュニケーションが求められます。
もし会社内で、感情論や個人の好き嫌いをベースとした意思決定が頻発したらどうなるでしょうか。
事業の進行に支障をきたすだけでなく、企業の究極的な目的である「反復継続的な商い」や「未来への発展と成長」、さらには会社そのものの存亡すら危うくなってしまうでしょう。
もっとも、個人的なコミュニケーションの場合には被害は限定的ですし、何より自分が困るだけです。
損をしながら学習するのも良いでしょう。
しかし、企業や団体の中でそういった非論理的な議論、あるいは非論理的な議論に基づく意思決定がなされると、その影響は組織全体にまで浸透してしまうのです。
また、取引先の立場から考えても弊害があります。
「あの会社は社長の機嫌次第で判断が右往左往するらしい」「長期安定的に付き合える企業ではない」「信用出来ないから取引しないようにしよう」と、評価されてしまうかもしれません。
実態はともかくとしても、風評の恐ろしさは推して知るべしです。
必ずしも数字だけで判断されるのがビジネスの実情ではないからこそ、論理的な思考によって世間から信頼を勝ち取る必要があるのです。
そもそも、論理的な思考とはどのような形式で成り立っているのでしょうか?
その問いに対して明確な答えを持っていない方は要注意です。
論理的思考に必要な要素は次の3つです。
1.結論
2.根拠
3.前提
論理的な思考において結論と根拠が必要なことは明白です。
一方、前提が必要な理由は、もし前提の共有がなければ思考がどこまでも拡散してしまうからです。
たとえば、「空を飛ぶにはどうすれば良いか?」という議題に対し、「地球で」という前提がなければ、飛行機が最適なのか、それとも宇宙へ行くための宇宙船が最適なのかが判断できません。
同様にビジネスにおいては前提となる制約が必ず存在します。
「営業力をあげるには?」という命題に対し、資金の制約(前提)がなければ「100億円を広告に投資すればいい」「1万人の営業マンを雇えばいい」となってしまうのです。
上記を踏まえたうえで、論理的思考に必要な3つの要素を検討してみましょう。
たとえば新規事業への参加の是非を検討しているとします。
そこで提示すべき方針としては、
1.結論として、我が社はA事業に参入すべきである
2.その根拠は、A事業が近年急成長しているから
3.前提にある、新規事業参入約定にも反していない
のような形式となります。
この場合、その判断が正しいかどうかは問題ではありません。
社内で議論をすることを前提に、まずは意見を筋道立てて共有すること。
そしてその後の話し合いによって発展的に結論を導き出すことが大切です。
ただ、結論に至るまでの過程で「根拠が充分でない」、あるいは「前提を把握できていない」と判断されれば、結論とともに主張の論理性は失われてしまいます。
担当者が垂直的に深く思考すれば解決できる問題は、事前にクリアされておくべきなのです。
そうならないために活用すべきなのが「論理展開のパターン」です。
論理展開のパターンを理解しておけば、上司への報告、社内外でのプレゼンテーション、会議での発言、交渉やセールスなど、ありとあらゆる場面で論理的思考が可能になります。
かつて数学の授業で習った方もいるかもしれませんが、代表的な論理展開のパターンには次の2つがあります。
詳しくは別の項で説明するとして、ここで概要だけ簡単に解説しておきましょう。
1.『演繹法的論理展開』
一般論やルールといった法則に照らし合わせて、ある事象についての結論を導く方法。
<ex.>人間はいつか死ぬ(一般論)→ソクラテスは人間である(事象)→ソクラテスはいつか死ぬ(結論)
2.『帰納法的論理展開』
複数のさまざまな事象や結果から、一般論を導き出す方法。(演繹法の逆)
<ex.>へびが死んだ、うさぎが死んだ、Aさんが死んだ(事象)→生きとし生けるものはいつか死ぬ(一般論)
基本的にこの2つのパターンさえ把握しておけば、どんな場面でも論理的に思考することができるようになります。
まさに論理思考の“基本のキ”と言えるでしょう。
ただし、実際にはいずれかの手法を選択的に用いるのではなく、相互に関連させながら複合的に使用するのが一般的です。
詳しい活用方法は別の項に譲るとして、今はそれぞれの基本的な考え方(とくに思考の矢印の向き)を理解するようにして下さい。
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